暁の刻

煉獄薙

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「晋作、また寝てるの?」
「…うっせー。俺は瞑想してんだよ」
「迷走してるんじゃないの?」
「…ちげーよ!」

黒、というより灰色に近い髪色をした青年と、畳に寝っ転がっている青年は小さい時から一緒だった。

前者が吉田稔麿。後者が高杉晋作。

彼らはこの京で、倒幕のための布石を打っていた。
その準備をしていた。

「…んで、今回は誰と密会するつもりなんだ?新撰組に潜入しているやつか?」

「…当たらずも遠からずってとこかなぁー」

吉田はニヤリと笑った。

「…新撰組の新入隊員を誘拐してみようかなと」
「な゛……何を言ってるんだお前は…」

「…聞けばまだ幼い少年らしいし、こっちの誘いに乗ってくれるかもしれないじゃん?もしダメならすぐ殺せばいいんだし」

吉田は殺戮的な思考をするときがある。

まだ長州にいたころ、大切な吉田松陰先生を無惨に殺された。

そのときの恨みから思い詰めることもあり、高杉はそれをずっと警戒している。

「…お前の考えは極端過ぎる。そのガキが簡単にこっちに流れるか判断したのか?」

「少し前は隊士とギスギスしていたらしよ。今は分かんないけど……後は所在不明。急に現れて一番隊のやつに拾われたっていう噂だよ」
「……急に?」

出自が謎だと感じた。

そんな人間を取り込もうとすること自体大丈夫なのだろうか。

それに……

「…簡単に決めるのは危ない気がする。とりあえず見極めて……」

「じゃあ、話をしてみようか」

吉田はササッと外に出ていった。

慌てて起き上がって追いかけるが、その姿はもうない。

「くそっ!やっぱりまだ子供じゃねーか!」

それほど年も変わらない高杉が言うのもどうかと思うが、とりあえず彼は消えたバカを追いかけて宿を飛び出した。

独特な気配の吉田は、落ち着けば簡単に見つけられる。


深く呼吸して、右に向かって走り始めた。

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