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noise
quest
しおりを挟む「迷子にならないように気を付けてね。怪しい人にはついていかないこと。無駄遣いはしちゃだめだよ?それと……」
「…あーもういい。総司ウザイ。ちゃんと気を付けるし」
「だって君、自分のことになるとバカみたいになるから」
「それ言うなー!もう行ってくるよ!じゃあね!」
照れながら平助たちのもとへ走っていく。
「…楽しんできなよ」
小さく呟いた総司の声は
「え?」
「…行ってらっしゃい!」
届いていないが、雫は笑顔で手を振った。
「…なんかあれだね」
一方、その二人を少し離れたところで見ていた三人、特に平助は、雫と仲良さげに話している総司に嫉妬していた。
「…まぁ、あいつが助けてやったらしいし、他の誰よりも親しくて当たり前なんじゃないか?」
「…そうなのか?」
「…あ、俺もそれ聞いた」
自分だけ知らない事実に、平助は再び嫉妬していた。
「…お待たせしました。それで、どちらに行かれるんですか?」
少し走ってきた雫は、照れた様子ではにかんだ。
「目的なしの行動だよ。雫、行ってみたいとこあるか?」
嫉妬したままの平助ではなく、雫の身長にあわせて屈んだ原田からの問いかけだった。
「…あの、自分は高いところが好きなんですが、京を見下ろせる場所とかってありますか?」
「…それなら北山が一番いいぜ!」
雫の意外な発言に、平助はすぐに答えを出した。
そして手を引く。
雫は照れながらも、笑顔でついていった。
「…すごいです。京の都ってこんな風になっているんですね」
「…あそこらへんが屯所で、あそこが市場って感じかな?野菜とかいろいろ売ってる」
一つ一つ指差しながら説明をする。
何も知らないと思っていたが、何年か住んでいると無意識に覚えているものだ。
一つ一つに反応してくる雫を見ていると、誇らしく感じていた。
「…ここに来れて良かったかも……」
ふと彼は呟いた。
それは儚げで、いつもとは明らかに違っていた。
「……今度はあの場所に行きたいのですがいいですか?」
さっきまでの雰囲気を軽く投げ捨てて、雫は元気よくたずねた。
ちなみに原田と永倉は少し離れたところで二人を眺めていた。
「…なんか、雫が素直だ……」
「初めて外に出て気分が高揚してんじゃないのか?」
「…まぁ、平助は嬉しいかもな。はしゃいでいる雫は俺も珍しいし、なんかかわいいしな」
原田の爆弾発言に、永倉は一瞬振り返って
「………」
なかったことにした。
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