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noise
piece
しおりを挟む昼下がり、暖かくなった日差しの元で、平助はとある作戦を考えていた。
「…暁月を外に連れ出す?」
「そうだよ佐之さん!あいついっつも屯所にいるだろ?聞いたら外に出る必要がないからって」
つい先日、平助は雫が一日中屯所で働いていることを知った。
というのも、自分が稽古や見廻りで外にいるときなど、知らないときに休んで外に遊びに行っていると思っていたのだ。
そしてそれを知ったとき、平助は外に出たくないのかと訊ねた。
答えは先ほど平助が言った通り。
加えて
「外に出て、何かすることがあるんですか?」
と答えた。
京のことをよく知らない雫は、遊びに行くような場所を知らない。
雫は純粋に質問しただけのつもりだったが、平助は違う意味で捉えたようだ。
こういった経緯から、平助はどうにかして外に出そうとしている。
「…だけどよー俺らもあんまり店とか知らねーだろ?」
近くで話を聞いていた永倉はあまり乗り気ではないようだ。
「…そ、そりゃ確かに花街しか行かねーから」
妙に歯切れの悪い返事をする平助。
雫をあの場所に連れていく、というのは気が引ける。
「…確かに俺らも花街以外特に理由なく外にでねーな」
原田の同調に、それ以上議論がストップしてしまう。
「…普通に誰かに聞けばいいんじゃないか?」
見るに堪えかねて、永倉は提案した。
二人はキラキラと輝いた瞳をしていた。
「…そうと決まれば聞きに行こう!」
「…え、いや、俺は面倒……………」
「よし!行くぞ!」
ノリノリな二人に捕まれて、永倉は逃げるすべなく外へと連れ出された。
「……暁月さんが楽しめる場所?…それは、彼が興味を持った場所に連れていけばいいのではないでしょうか?自分もあまりお店に詳しいわけではありませんし、彼は京の町に行ったことがないと言っていたので……」
まず聞きに行ったのは、雫と親しい一番隊の平隊士。
雫曰く、普通の人で話がしやすいとのこと。
話してみると噂通り普通だった。
彼の提案は平助たちにとって大きなヒントとなった。
どこにも行ったことがないのなら、どこでもいいじゃないか、と。
そして彼らは雫を誘いに行った。
だが、雫は即答はせず、少し時間がほしいとお願いした。
「…なんで?」
「……いろいろと、あるので…」
言葉を濁された。
彼にはここに現れたときから不思議なところがあったが、それでも真面目に仕事をしている姿から、その違和感は少しずつ薄れていった。
雫は一刻ほど経ってから「土方さんに許可を貰いました」と笑顔で報告してきた。
ちょうど明日は休みだ。
雫のこと、もう少し知ることが出来るだろうか。
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