暁の刻

煉獄薙

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「…雫はここを出ていかないので、君たちは戻って稽古の続きをしてください」
総司が促すと、顔を見合わせ戸惑いながらも、それぞれ戻っていった。
残されたのはまた二人であった。

「…ちょ、出ていかないなんて…」
「…言ってなくても書いてあるんで駄目です」
先生のように優しく諭す。
「…雫は知らないと思いますが、局中法度にそう記されていますから」

そういえばそんなのもあったなぁ、と雫はため息をついた。

「…それで?どこまでが作戦?」
「え?なんのこと?」
「…とぼけるのはやめてほしいな?わざと喧嘩して隊士たちに私の考えてること聞かせて、私の素を引き出して隊士たちに見せて、どこまで先をみてたのって聞いてるの」

先ほどまでの喧嘩やなんやらで疲れた雫は、とりあえずその場に腰かけた。

それをみて総司も隣に座った。

「…雫はどこからだと思う?」
「………………ぶつかった辺りとか?」
「…残念。もっと前…君が一くんと歩いてきた時からだよ」
「……………………………………え、まじ?」

結構前のことになると思うが、そこから全て計算してあの状態にしたというのか……?

雫は総司を疑っていた。

そんな雫とは対照的に、総司は答えを笑顔で教える。

「最初に君を探して部屋に戻ったら山崎くんが正座しててね。君は僕と似てるから行動予測も楽なんだ!だから何となくしようとしてることに気付いて…」

「…山崎さんを脅した?」

「そう!そして土方さんの部屋にデカブツがいるって嘘をついてもらったんだ。平助はもともと素直な性格してるし、雫のこともずっと気にかけてたからね。絶対かき乱してくれると踏んでた」

自身の推理を話す探偵のように、キラキラした瞳で答えを言い終わった総司は、雫の手を掴んだ。

降参した様子の雫は、無抵抗にその手を持ち上げられた。

「…雫、君は彼らだけじゃなく、多くの隊士に好かれているんだ。ここの料理担当、とりあえずはそれがここで存在する理由ってことでいいんじゃないかな?」

「…いいよ。その代わり気が変わったらやっぱり出ていくから」

*****

「…あれ?総司、雫は……」
「しー!………この通り」

総司は自分の膝を枕に寝ている雫を指差した。

平助もそれを察してそーっと近づく。
「…ねちゃってたんだ」

「…まぁ、傷も治らないうちに走ったり怒鳴ったりしましたからね。きっと疲れたんでしょう」

そう言って優しく顔に触れる。

「…へぇ、怒鳴ったんだ。……見てみたかったな」

「…いつでも見れると思いますよ。雫は実は性格キツイですからね。今までは猫かぶってましたから」

「……………それはお前もだろ?」

総司をじっと見つめ、答えを待っていた。

「…何のことですかね?………それより、寝顔も可愛いですね」

「…はぐらかすなよ」

このあと、雫が起きるまでの間、彼女はずっとその寝顔を二人に見られていたのは言うまでもなく……


寝起きの雫はさらにS度を増していたのは二人だけが知る秘密となった。
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