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alive
logic
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雫は平助から逃げて、どこか誰もいないところに、と思いながら走っていると、廊下の角で誰かとぶつかった。
「…いたっ………あれ、雫?」
ぶつかった相手は総司だった。
彼は、ぶつかった拍子に倒れた雫に手を差し出し、起き上がる手伝いをしようとした。
しかし、雫はそれを無視して一人で立ち上がる。
「…雫さ、もしかしていつかここを出ていこうとか思ってない?」
「思ってるけど何?総司には関係ないでしょ」
どこかにいこうとする彼女の腕を掴んで、振り向かせる。
「何でみんなと関わろうとしないの?嫌いだから?」
「うるさいなぁ…関わってもすぐに私がここからいなくなるからに決まってるじゃん!何でそんなこともわかんない?」
一人になりたいときに、一人にさせてもらえない苛立ちから、雫の声はだんだんと大きくなっていた。
「……あの」
二人の声とは全く異なる声が響く。
雫は焦ったように声の主を振り返った。
そこにいたのは一番隊の隊士たちであった。
「…暁月さんは、出ていってしまうのですか?」
「ずっとここにいるんじゃないのか?」
「…出ていくなんて、嘘ですよね?」
口々に質問を投げかける隊士。
雫は動揺から何も言えなかった。
「…何でそんなこともわかんない?って……分からないはずがないよ。僕だって同じだから……だけど君は皆の言葉にどう返事するの?嘘つかないで、取り繕わないで、自分の言葉でちゃんと応えなよ!」
総司は無理やり雫を引っ張ると、隊士と真向かいになるように立たせた。
「…わ、私は………ここにいていい存在じゃないから……」
消えるようなか細い声で、やっとのことで言葉を紡いだ。
「いていい存在って何?」
「暁月がいるから料理とか助かってるだろ?」
「…料理だけじゃない。洗濯もしてくれてるだろ?」
「暁月さん、」
問い詰める隊士たちの中で、唯一森だけが優しく手を握った。
「…あなたが来たことで、この屯所はとても良くなりました。それだけあなたはここに貢献しているのです。……だから、そんな寂しいことを言わないで下さい。皆、あなたがいてくれて嬉しいのですよ」
皆を代表したその言葉に、他の隊士は何も言わずに頷く。
「…それに、ここには訳ありの人間だっています。いていいんです。……それで、僕らの言葉を受けて、あなたの答えはまだ変わりませんか?」
雫は言葉につまり、次に顔をあげたときは、いつも向けていた笑顔とは違った笑みを浮かべていた。
「…ほんと、お人好しですね」
「…え?」
「貢献したのは騙すためだったかもしれないじゃないですか。それでも信用すると?」
「馬鹿だなぁ雫は。そんなことを言う間者がいるわけないでしょ?」
突然会話に入ってきた総司に、雫はすぐさま否定した。
「…世の中には偽善者ぶって裏で悪いことをするやつがいる!そんなやつだって普通に生きてるんだよ!」
だが、総司は笑顔で頭をポンと叩いた。
「…少なくとも君は違う。だって素がでてるよ?ホラ」
そう言って隊士達を指差す。
彼らは総司を怒鳴り散らす雫を見て、苦笑いをしていた。
「…総司、わざとやったでしょ………」
雫はあきらめたように笑った。
「もちろん。君はずーっと上っ面の付き合いしかしてなかったからね。本性見せちゃえばなんとかなるだろーって思ってた」
悪戯に成功した子供のように、総司は笑顔で答えた。
「…いたっ………あれ、雫?」
ぶつかった相手は総司だった。
彼は、ぶつかった拍子に倒れた雫に手を差し出し、起き上がる手伝いをしようとした。
しかし、雫はそれを無視して一人で立ち上がる。
「…雫さ、もしかしていつかここを出ていこうとか思ってない?」
「思ってるけど何?総司には関係ないでしょ」
どこかにいこうとする彼女の腕を掴んで、振り向かせる。
「何でみんなと関わろうとしないの?嫌いだから?」
「うるさいなぁ…関わってもすぐに私がここからいなくなるからに決まってるじゃん!何でそんなこともわかんない?」
一人になりたいときに、一人にさせてもらえない苛立ちから、雫の声はだんだんと大きくなっていた。
「……あの」
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「…暁月さんは、出ていってしまうのですか?」
「ずっとここにいるんじゃないのか?」
「…出ていくなんて、嘘ですよね?」
口々に質問を投げかける隊士。
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「…何でそんなこともわかんない?って……分からないはずがないよ。僕だって同じだから……だけど君は皆の言葉にどう返事するの?嘘つかないで、取り繕わないで、自分の言葉でちゃんと応えなよ!」
総司は無理やり雫を引っ張ると、隊士と真向かいになるように立たせた。
「…わ、私は………ここにいていい存在じゃないから……」
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「いていい存在って何?」
「暁月がいるから料理とか助かってるだろ?」
「…料理だけじゃない。洗濯もしてくれてるだろ?」
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「…それに、ここには訳ありの人間だっています。いていいんです。……それで、僕らの言葉を受けて、あなたの答えはまだ変わりませんか?」
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「…ほんと、お人好しですね」
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「…少なくとも君は違う。だって素がでてるよ?ホラ」
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「…総司、わざとやったでしょ………」
雫はあきらめたように笑った。
「もちろん。君はずーっと上っ面の付き合いしかしてなかったからね。本性見せちゃえばなんとかなるだろーって思ってた」
悪戯に成功した子供のように、総司は笑顔で答えた。
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