暁の刻

煉獄薙

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alive

brisk

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「…雫ー!なんか食べ物ない?」
屯所で住み込みで働くようになってから一月が経った。
この一月で色々な人と話をするようになり、たくさんの人に名前を覚えてもらっていることを知った。
「…えっと、団子とかならすぐに作れますけど……」
暖簾を半分だけくぐって、雫に声をかけた長身の男が十番隊隊長の原田左之助。
面倒見のよい性格をしているため、平助経由で話をするようになり、すぐに雫と仲良くなった。
「…ん!団子ちょーだい!」
「わかりました。出来たら左之さんの部屋にお運びすればいいですか?」
「ありがと!うん!よろしく!!」
見た目に反して意外と優しい性格に、最初は雫も知らずに恐れていた、などとは今となっては言えないことだ。

もともと長期保存できるものを作ろうとしていたため、団子を作るのは手間にはならない。
「……総司にも、作ろうかな」
バレンタインでも誕生日でもないのにプレゼントを渡すのは変かな?
あ、でもそんな概念ないから問題ないか。

一人完結した雫は、総司の分も含めて団子を作り、盆に乗せて運んでいると、
「…おや、暁月くん。」
「おはようございます、山南さん。お出かけですか?」
眼鏡がトレードマークの山南敬介。
土方と同じ副長である。
いつもにこにこしていて、土方と違い、怒鳴ることはしない。
しかし、ただ優しいだけではないことを、雫は知っている。

一度、山南が笑っているときに、
「何を怒っているのですか?」
と質問したため、山南も雫が気付いていることを知っている。
だが、それ以外は普通に優しい青年なため、雫もなついている。

「いや、今帰ってきたところですよ。それよりお団子、ですか?……沖田くんに?」
盆に乗った団子を見て、山南はフッと微笑んだ。
「はい。総司と………左之さんに」
「原田くんもでしたか。意外ですね。やはり、暁月くんのお料理が美味しいからですね」
「いえいえ、そんなことは………山南さんも召し上がりますか?」
「おや、いいのですか?」
「はい、あとでお持ち致しますね!」
山南は知識も豊富で、この時代のことをいろいろと教えてくれる先生でもある。
お茶のついでにまた面白い話をしてもらおうと密かに思って、雫は原田の部屋へと歩き出した。
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