赤ずきんは夜明けに笑う

森永らもね

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第一部 一章

02 初陣(挿絵あり)

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 起きてから、リーゼロッテはまたしばらく森の中を移動した。背が高く、幹の太い木々がどこまでも続き、方向感覚が狂ってしまう。途中で人に鉢合わせすることが少なくなり、完全に向かうべき方向を見失ってしまったようだった。

「参ったな……」

 世界の各地にはこういった森が何ヶ所かあり、それが旅人から恐れられている「迷いの森」だと、父からも話を聞いたことがある。ここが正しくそうなんだろうと、リーゼロッテは顎に手を当てた。
 途中人工物や看板を目にしてきたので近くに村があるのは確か。あとは、がいれば確実だ。
「……いた」
 先程から辺りをキョロキョロしていたリーゼロッテはとある地点でクリフから降りると、木の根元に近づいた。そこには砂の一粒一粒が砂利のように固まって盛り上がる土穴がある。ゆっくりとその前で屈み、両手で覆うと、手のひらに何かが当たる感触を得てソレを引きずり出した。
 手のひらサイズ程の、琥珀色の細長い尾のようなしりを持つ、ヒノビバチだ。彼らは迷いの森の木の根元に巣を作るが、夜が近くなるのを感知し外に出てくると、日が沈む頃に咲く落日花に向かって飛んでいく。迷いの森が近くにある村は基本的に落日花を植える傾向にあるので、迷った時は彼らの習性を利用するのが一番だと、父が言っていたのだ。
 指で掴んだヒノビバチの尾にリーゼロッテはリボンを括り付けると、宙に放った。ブゥンと虫特有の羽音を出して飛んでいくヒノビバチを見て「案内よろしくね」とすかさず追っていく。

「……人?」

 走って数十分。ヒノビバチを追っていく先に人の影があった。もしかしたら村人かもしれない。ヒノビバチが飛んでいく方向をしっかりと確認してから「あの!」と歩いてくる男に声をかける。

「やあ。旅人かな」

 人が良さそうな笑みを浮かべて男が答える。背の高い黒髪金目の男だ。この世界では対して珍しくもない容姿をしているが、その中でも綺麗な顔立ちの方だと思った。クリフのスピードを落とし、ゆっくりと止まる。

「そんなところです。えっと、この先に村はありますか?」
「ああ。今用事を終えてそこから出たばかりだよ。このまま真っ直ぐ行けばいずれつくだろう。途中に看板がある」

 男は答えながら「あのヒノビバチは君が?」と問いかけた。軽く無言で頷きリーゼロッテが答えてみれば「へえ。森を越えるのは慣れているのかな」と感心したように見つめる。

「いえ、こういった森は初めてで……あの、村に宿屋はありますかね?」
「ああ。勿論。みんな気さくで人がいい。きっとゆっくり休めるよ」

 その言葉にリーゼロッテはホッと一息ついた。これでようやく休める。お金も家のものを全部持ってきたし、クリフの食べ物を買って……とあれこれやりたいことを思い浮かべた。

「ありがとうございます。それじゃあ、良い旅を」

 手早く会話を終わらせ、礼儀正しくお辞儀をする。それを見た男は思い出したかのように「ああ」と引き止めた。

「あの村に行くなら一つ、気をつけた方がいい。あそこは今、人喰い狼が出るって話で持ち切りなんだ」

 覚えておくといいかもしれないね、と一言付け足す男に「そうですか。ご忠告どうも」と会釈し、リーゼロッテはヒノビバチの後を追った。

(……あの人は真っ直ぐって言ってたけど、ヒノビバチは大きく左に曲った……?)

 こんな森だから何処から歩いてきたか分からなくなるのだろう。勿論そこは父の教えをと、ヒノビバチの方角へ向かった。少し走らせてから、すぐに村の姿が見える。

「結局看板一つもなかったなあ……」

 別の入口があるのだろうか、なんて疑問に首を傾げる。ひとまずこれで休めると、肩の力を抜き、未だ咲いていない落日花の前で飛び回るヒノビバチからリボンを取った。

「ごめんね。案内お疲れ様」

 あと少ししたら日没だ。そうすればちゃんと花が開いてヒノビバチはいつも通り仕事ができるだろう。少し早めに出してしまって申し訳ないなと思いつつ、無事日没前に村の出入り口をくぐった。

「ローレアズ……? 聞いたことないや」

 村はどこにでもあるような普通の作りをしていた。木でできた簡易な家が村のメイン通りに沿って並んでいる。ただし、ルトレア街と比べてみれば遥かに狭く、小規模のようだ。もう日没を迎えたし、食料を一通り揃えたら宿屋でも探そうと、リーゼロッテはクリフを引いて歩き出した。





「えっ、そんなに高いんですか」

 買ったばかりの食料を抱えて宿屋の店主と向き合う。店主は瞼が厚く伸びきった目でじっとこちらを見下ろしながら「あんたね、馬鹿にしているのかい」と頬杖をついた。

「これだけの金で宿屋に泊まれるとでも? これじゃあ、どこに行っても泊めてくれる宿屋なんてないよ」
「ええ……そうなんですか」
「あったりまえだろう! 人喰い狼から旅人を守ってやるための宿だ。それなりの料金は貰わないとね」
「はあ……」

 そういえば、食料を調達した時もそんなことを言われた気がする。数日前にまた人喰い狼が現れたからといってどれもかなり高額だった。おかげで食料もあまり買えていない。家にあるお金をかき集めて来たつもりだったが、それでも足りないようだった。グレッグのやつ……こんな安い給料で父さんから肉を買っていたのかと今更ながら腹立たしく思う。

「じゃ、じゃあ……馬小屋でいいです。お願いします……さ、流石に人喰い狼が現れているのに野ざらしで寝るわけには……」
「はあ……馬小屋……まあ、それぐらいなら」

 それでも店主は乗り気じゃなかったが、しばらくしてなにか閃いたように「あっ」と声を漏らした。

「掃除はしていないから、自分でやるんだよ」

 念を押すように付け足される。いいように使われたなとリーゼロッテは思ったがお金がないのに泊めてくれるならやって当然かと受け入れ「分かりました」と了承した。

「あっ……すみません。しばらく馬小屋に泊まってもいいですか……? 掃除ちゃんとするので……」
「はあ? まあ……いいけど。それなら、これだけじゃなく今の有り金全部寄越しな。そしたら好きにしていい」

 その言葉にリーゼロッテはえっ、と言葉を漏らし戸惑う。父さんが一生懸命稼いでくれたお金なだけにここで全部失うのは抵抗があった。それでも、しばらく村に立ち寄らないために食料は多めに確保したいしと、仕方がなく袋を渡す。

「ん。きちんと貰ったよ」

 片方の口角を上げて店主が鼻歌混じりに袋の中の硬貨を数える。なんだか騙されているような気がしたが、世間知らずの自分では何が普通なのか分からない。父さんの金でしばらくはなんとかなると思っていたのに。それでもそれに頼りっきりもダメだよなあと機嫌のいい店主に「あの」と口火を切る。

「今度はなんだい」
「えっと。この村に換金所はありますかね。獣肉とかとって売れたらなあと……」
「お嬢ちゃんが狩りを?」

 緩急を大げさにつけた尻上がりの声で言ってみせ、店主はケラケラと笑った。明らかに馬鹿にされていると、リーゼロッテは眉間に皺を寄せる。

「ああ、勿論あるさ。けど、今厄介なボスが森の中に住み着いていてね。獣肉なんてとれたものじゃないよ」
「……それは、人喰い狼と関係が?」

 その言葉に店主は「いや。そいつはひと月前にもう捕らえている。とはいえ、数日前の事件で警戒中さ」と続けた。

「捕まったのに出てこられたんじゃ夜な夜な眠れもしないよ。どうやって出たのかは知らないが、今は拘束器具をつけて更に動けないようにしているらしい。確かに前は喧嘩っ早い性格だったが……ココ最近は働き者の好青年で通っていたのにね……残念だよ」
「はあ……」

 そういえば村で買い物している時もそんなことを聞いた。そもそも狼なのに好青年? それについて問いかけようとした時に店主によって遮られる。

「森の中に住んでいるボスはフォレストファングっていうファングの仲間だ。かなりでかくてね。村の男も何人かやられている」
「フォレストファング、ですか」

 人喰い狼も気になったが、フォレストファングという言葉に食いつく。成長すれば全長三メートルにもいく巨大ファングだ。前に伸びた巨大な牙に、岩のような硬い皮膚を持つ体。走るのに特化した蹄行性偶蹄類だ。農作物を荒らし、雑食性で稀に大きな動物も食べるという。名前を聞いただけで瞬時にその姿が思い浮かんだ。

「分かりました。じゃあ、そいつを狩れば、この村で安心して稼げますね」

 やることが決まったと、少し浮かせるようにして荷物を持ち直す。店主はそれを聞いて少し驚きながら「狩るってまさかあんたが狩るのかい?」と問いかけた。

「面白い冗談だね。お嬢ちゃんは知らないと思うが、フォレストファングってのはファングの王とも言われて……」
「大きくて全長三メートル級の化け物。凶暴で、ファング種の中でも唯一、他の動物を食べ、人間も襲われる事件が多発。彼らの住み着いた森は生態系が崩れるとも言われている、ですよね?」

 店主を遮るようにしてリーゼロッテは口を開く。フォレストファングの狩りは何度も父のそばで見てきた。ルトレア街はいくつもの森に囲まれていた場所だったから、奴らが現れる度に父が退治していたのだ。そして彼らの肉は高級品で、高く売れる。ここの森にいるやつを倒せればしばらくお金には困らないはずだ。
 一人でまともに獲物を狩ったことがない。下手したら怪我だけではすまないかもしれない。それでも、やり方は熟知している。

「わざわざご丁寧に、ご忠告ありがとうございます。じゃあ、馬小屋お借りしますね」

 嫌味を真に受けずに宿屋を出る。いつまでも父の背中に憧れていてはダメだ。お金もずっと父のものに依存しているわけにはいかない。自分で生きていけるように強くならないと。

「明日は早起きしないとな……」

 父も初めて一人で取った獲物は二メートル級のフォレストファングだったと言う。いつか父を超えるのなら、これぐらいこなせなくてはいけない。念入りに準備しないとと体を伸ばし、月を見上げた。
 とはいえ、その前にやることがある。嫌な予感を引き摺ったまま馬小屋に入ってみれば、そこには荒れた小屋の姿があった。確かに屋根はついているが、糞がそこら中にあって、藁が散らばっている。壁にも数箇所穴があいていて、自身の足元の傍を風が横切っていった。

「う゛っ……なにこれ……酷い」

 なぜこんなになるまで放置しているのだろう。馬は利口な生き物なのだからここまで汚すことはないはずなのに。

「君たちの小屋……なかなか、掃除しがいがあるね」

 繋がれていた馬に声をかけてみれば、彼らはぶるりと大きく震えてからそっぽを向いた。よく見てみれば鞭でつけられた生々しい傷がある。これは色々と問題がありそうだ。

「大丈夫だよ、クリフ。すぐに綺麗にしてあげるね」

 幸い掃除道具は無事だ。ついでに穴の空いた壁の修理もしてやろうと、リーゼロッテは腕を捲った。

 その後掃除と修繕を終え、リーゼロッテが腰を下ろせたのは、辺りが暗闇で覆われる真夜中の事だった。





「んっ……?」
 なにかに体を引っ張られ、リーゼロッテは目を開ける。そこにはクリフと、昨日の馬たちが集まっていた。
「おはよう、クリフ。その子達は……」
 なぜ自分の所へと不思議に思っていると、ほかの馬達がしっぽを振りながら自分に擦り寄ってくる。

「あっ、痒いの? 昨日の傷かな……」

 一応手当はしたけれどと見てみるが、馬達は口を動かしながら擦り寄ってくるばかりだ。昨日は無視されたけど、どうやら掃除と治療で悪い人間ではないと分かってくれたらしかった。

「あっ、これ……良かったら食べる?」

 クリフに朝飯をあげながら、リーゼロッテは昨日買った野菜を差し出す。馬達はわかりやすいぐらいに跳ね、喜びを表しながら勢いよく食らいついた。ガツガツと食べる姿がなんだかクリフの子馬時代を思い出す。

「良かった……みんな元気だね」

 昨日は食べてくれなかったけど、今日は自分の手から食べてくれた。信頼してくれている証拠だ。一頭一頭を撫でながら「いい子だね」と話しかける。

「ぶっふーーーー!」

 それを見ていたクリフは不満だったのか、自分もと言いたげにリーゼロッテの外套を口で咥えてグイグイと引き寄せた。ごめんごめん、とクリフを撫で、自身の顔をすりつけるように抱きつく。

「さて、そろそろ行くか」

 馬小屋の扉を開け、日光を浴びる。まだ日が昇って間もない、青紫に染まった黎明の空。ぼうっと霧がかっていて、水彩画のような色の広がりがグラデーションのようになっている。それでもまだ西の方は暗黒に包まれていて、夜明けから時間が経っていないことを表していた。

「本当に、綺麗……」

 よくこの空を父さんと眺めたな、なんてことを思い出し感傷的な気分になる。またじわじわと目縁が熱くなったが、いけないと何度か両頬を叩き、クリフに跨った。

「お願いね、クリフ」

 まずはフォレストファングの足跡を見つけて、縄張りから巣を特定しなくては。どこを通るかも見極めて行く必要がある。ひとしきり撫でてから、手綱を波打つように振るい「はっ」と声を上げて走り出した。
 昨日の来た方角にいるのなら通ってきた時にフォレストファングの存在に気づくだろう。奴らの縄張りの痕は大きな体だけに分かりやすく、糞尿の臭いも強い。となると自分が来た方向にいるとは考えにくかった。何となく村の周りを走り、迷いの森の木と形が違う森林の前で止まる。

「ここ……家の近くとよく似てる」

 大きな葉が朝露を受けて、森林全体が雨上がりの匂いを放っている。父の死を思い出して不快に思いながらも、表情を険しくさせて、ゆっくりと森の中に入った。

「凄い……! 黒土だ」

 とある地点まで進んでいくと、綺麗な境界線を作って黒い地面に変わる。本来なら開拓して農地にするのだろうが、フォレストファングのせいでそうもいかないのだろう。これだけ栄養のある地面なら、それを好んだ幼虫や動物が沢山いるはずだ。フォレストファングもそれに惹かれたに違いない。多分やつはこの先にいる。まだ一人前の狩人になってひと月も経っていないが、リーゼロッテには分かった。

「……っ! クリフ、止まって」

 進んでまもなく声を上げ、徐々に動きを止めるクリフから降り、土の様子を見る。間違いなく、奴が通った足跡だ。予想以上にかなり大きい。近くの木を見てみると、根元を掘った跡があり、幹に擦れた後があった。変に傾き、そこから道ができている。ずっと辿るように通っていくとツンとした臭いがし、思わず涙目になった。羽音が聞こえる方へと近づく。

「なっ……!」

 臭いと音の正体を目に映し、リーゼロッテは声を失う。倒れていたのは黒い毛並みをした巨大な熊だ。全長は約三メートルと言ったところだろうか。肉の糸が張られた内部には赤黒とした臓器が鈍い光を放って散らかっている。空気を吸うだけで眉間が痛み、涙が出てくるほど酷い臭いだ。骨が剥き出しになり、切り開かれた中をよく見てみれば、死肉の表面を白い楕円状のものがうねうねと這っていた。その上を成長した黒い粒の集合体がバラバラに飛び交っている。

「嘘……フォレストファングが熊を!?」

 腕で鼻を押さえながら後退る。確かに大きな動物を襲って食べる事例は聞いたことがあったけれど、熊ほどの大型動物は初めて聞く。別の肉食動物がいるのかと思ったが、巨大な体に体当たりされて木に当たり、牙で抉った形跡が死体の近くで多く見られた。
 なんて自己主張の激しいやつなのだろう。自分の力を示すようにそこから先は分かりやすいほどの道ができている。恐らくこの熊が森のボスだったに違いない。三メートル級の熊をここまで薙ぎ倒すサイズともなればもっと上のサイズがあってもおかしくないだろう。

「……そんな」

 強気に狩るなんて言ってしまったが一気に希望が遠のいていく。父といた時だってせいぜい二メートル後半。それでも苦労するのは父を見ていて十分分かっていた。これは、自分の手に負えるものじゃない。ギルドハンターに要請しなくてはいけない化け物だ―――でも。

『死ね! 死んじまえクソ野郎が!』

 目を瞑ると父を殺したあのギルドハンター達を思い出して、息が乱れる。あんな外道に任せるのはなんだか負けた気がしてならなかった。
 正直村がいくつ滅びようがどうだっていい。だからこれは自分のただのプライドだ。

「……やるって決めたんだ」

 父の誇りを守るためにも、ここで勝たなくてはいけない。そう、自分勝手に決めた。怯えて死体から離れていたクリフの元へいき、安心させるように背中を優しく撫でてから跨る。ここまでの獣道があるなら、場所はなんとなく把握出来た。少し獣道から逸れ、クリフを走らせながら、奴らの全体の通り道と縄張りを把握する。巣らしき場所も見つけた。

「よし……ひとまずこれぐらいか」

 今回は狩りではなく化け物退治。こちらも手段は選ばないと、離れた大岩の近くで準備を進めた。
 大きいのなら場所を把握しやすい。近づかなければ狩りやすい方だ。あとは一気に距離を詰められることに警戒しつつ、獣道に張ってきた罠を利用する。最も二メートル級を想定した罠が化け物にどれだけ耐えられるかが不安ではあるが。

「……クリフ、どうしたの」

 先程から首を高く持ち上げ自身の後ろをじっと見つめるクリフに小首を傾げる。馬でいう警戒態勢だ。不審に思ってその場から立ち上がる。と、同時に大きな地揺れがして、思わずよろけた。自身に覆いかぶさった影にリーゼロッテは慌てて振り返る。

「……はっ」

 生暖かい風が自身の前髪を立たせる。コケに覆われた体はゆっくりと正面を向き、地面の中から巨大な二本の牙が現れた。自分の目線と同じ高さの位置でボトボトと土が落ちていく。
 何度も見てきたその形に体温が急激に冷めていった。見上げるほどの巨大な岩だと思っていた正体を悟ってすぐ、リーゼロッテはクリフの手綱を掴む。こんなに大きいなんて誰が想定しただろう。

「クリフ……! こっちに……!」

 自身も倒れるように左に引っ張る。同時にそのすぐ脇を轟音と共に風が横切っていった。走るだけで木をなぎ飛ばし、太い足を軸にして地面を滑るようにこちらを向く。間違いない。探していたフォレストファングだ。
 考えるより先にクリフに跨る。完全にこちらを標的に捉え、奴はまた駆け出した。それを想定し、素早くクリフを横に避けさせるように走らせる。地揺れでクリフから落ちそうになったが、しがみついて何とか耐えた。こいつを相手にする時は絶対に真っ直ぐ逃げてはいけない。

「くっ……最悪だ」

 予定ならもっと距離を取るつもりだったのに。歯を食いしばり、背後で聴こえる音を頼りに、クリフの手綱を絞り、行き先を変えていく。フォレストファングは確かに擬態に優れた体がある。でも大きな体ならすぐに気がつくと思っていたのだ。狩りで相手が獣だと油断する事は自分の寿命を縮めることだと父も口煩く言っていたのに、我ながら甘い考えだった。

「な、なんやー!!!」

 ふと、クリフの走らせる方向に見知らぬ二つ結の少女の姿を確認した。それでも、歳は同じぐらいだろうか。手には火縄銃が握られている。

「なんでこんなところに人が……っく」

 考えている場合じゃない。このままでは巻き込まれて吹き飛ばされるだろう。クリフの手綱をきり、少女の方へ走らせる。

「こっちへ!」


 時間は一瞬だ。手を伸ばしたまま、先にいる少女に声をかける。夕焼けを彷彿とさせる濃い橙黄色の瞳の少女はこちらに気づき、把握すると、リーゼロッテの手に掴まり、クリフの体に足をかけてよじ登った。

「いい反射神経だね」
「あったりまえやろ!! てか自分、何連れてきとんの!?」

 独特の方言を話す少女に「話はあと」と返しながら手綱を握らせる。

「少しの間持ってて」
「はあ!?」

 不満げな声を横耳に足でしっかりと固定し、リーゼロッテは振り返って矢を放つ。けれどそれもあまり意味がなく、風圧と巨大な牙によって体につき刺さらない。方向を切りかえても、奴はその巨体から考えられない圧倒的な素早さで進路を変更し、追ってくる。

「ちっ、あそこ! 行って……!」
「命令すんなどアホー!」

 口答えしつつ後ろから迫ってくる音に焦り、見えてきた罠の場所に向かって一目散に走り出す。一応大きいことを想定して頑丈に張ったつもりだった。けれど奴は迷わず突進してきて、罠を引きちぎり、リーゼロッテと少女、クリフを牙で持ち上げるように投げ飛ばした。

「……かっ」
「あっ! ……っ」

 少し離れた地面に叩きつけられ、着地点から数メートルほど転がった。後頭部を強く打ち、転げた際に突き出た枝で切ったのか額から溢れる血が目を通って頬に伝っていく。激しく咳き込み、うつ伏せになるよう寝返ってから起き上がろうとするも、力が入らない。

「うう……」

 ぐったりとしているが、呻きを聞く限り少女は無事のようだ。目線だけを前に向ける。

「ぐっ、リフ……」

 血と涙でぼやけた視界の先には、倒れて起き上がれずにいるクリフと、興奮するフォレストファングの姿があった。来た道で朽ちていた大熊を思い出し、まずいと指に力を込めて、土を握りしめるように震えながら上半身を浮かせる。

「ぃやだ……まって……」

 父のようにクリフまで失いたくない。それでもやつはそんな思いを聞き入れずにぼたぼたと唾液を垂れ流してクリフに歩みを寄せていく。
 また、目の前で失うのか。父を失った時のことを思い出して自然と涙が出てくる。ぽたぽたと涙に混ざって鼻血を地面に垂らし、重くなった体を必死に浮かせようと踏ん張った。
 ふと、起き上がれず葛藤していると、首からかけていた角笛が目の前に垂れ下がる。そうだ、これでやつの気を引かせようと、その角笛を口に挟み睨みつけるようにして吹いた。

クォオオォォォォ!

 途端に耳を劈くようなけたたましい音が辺りに響き渡る。何かの生物の咆哮のようなそれは大地を揺るがし、周囲にいた生物全ての時間を凍りつかせるおぞましさがあった。フォレストファングも例外ではない。毛を逆立たせ、震えながらその場に立ち尽くしている。
 音を出した本人でさえも驚き目を見開いたがすぐにハッとし、地面に転がっていた弓を構えた。

「はぁ……クリフ……から、離れろ!!!」

 ぎりぎりと音を出しながら引き絞り、怒号をあげて放った。びゅん、と風を切って飛んでいく矢はフォレストファングの目に命中する。やや遅れて何本もの矢が心臓付近と首に突き刺さり、フォレストファングは悲痛な鳴き声と共に両足をあげるようにして悶え苦しんだ。

「特性の毒矢だ。そのまま苦しんで死ね……っ!」

 倒れるフォレストファングを睨みつけてから、リーゼロッテは体を引きずるようにしてクリフの元へ急ぐ。クリフは動けずに真っ黒な目をキョロキョロと動かしながら、足をじたばたさせていた。どうやら胴体を強くぶつけて起き上がれなくなっていただけのようだ。命に別状がなくて良かったと撫でてから抱きしめる。

「はっ……?」

 クリフとリーゼロッテに再び大きな影が重なる。荒くさせた鼻息の熱風が自身の前髪を吹きあげ、リーゼロッテはクリフを抱きしめたまま、振り返った。

「なん、で……っ!」

 悶え苦しんでいたはずのフォレストファングが起き上がると、二人の前に立ちはだかった。牙が二人を囲っている距離だ。なんてやつだろう。比較的血の巡りが早い場所に猛毒の矢が刺さっているというのに。これじゃあ逃げられない。

「ブオオオオオ!」

 真正面で雄叫びをあげられ、その唾液やらが勢いで顔に降りかかる。恐怖で全身が粟立ち、思わず目に涙が浮かんだ。もうダメだと悟り、これからくるであろう痛みに備えて首を竦め、ギュッと目を瞑る。

ドォン!

 鳴り響く重々しい銃声音。そこから、いつまで経っても痛みがくる気配がない。不思議に思ったリーゼロッテが目を開けた直後、フォレストファングはぐるりと白目を剥き、力尽きたようにその場に倒れた。鼓動の速さで胸が苦しくなったせいか、空気を求めようとして肩で息をする。

「かっ……はぁ、はぁ……っ、お父ちゃんの仇だ!! うちの事、舐めたらあかんで!!」

 フラフラになりながら立っている少女の手には煙を吐いた火縄銃が持たれている。どうやら彼女の放った銃弾がトドメを刺したようだった。

「や、やった……?」

 もう答えもしない相手に向かって問いかけるように声を出した。恐る恐る近づき、そのコケの覆った体に触るがなんの反応もない。同時に、早くなった鼓動に突き動かされていた体は脱力し、二人はほぼ同時によろよろと座り込んだ。

「あ、ありがとう……助けてくれて……」
「いいんよ……自分の毒矢のおかげや。うちだけじゃこいつは倒せんかった」

 座り込んだ少女はその場に寝転がり、腕で目元を覆う。一先ず助かったとリーゼロッテも同じように倒れた。

「父さん……」

 天を見上げ、何度も噛みしめる。歓喜に喉が震え、それが全身に伝わっていく感覚。今までのどんな事よりも心地いい気分だった。一人でとは言えない狩りだったが、初めての四メートル級の化け物だ。これで少しは天にいる父も安心してくれただろうか。
 長い息を吐きながら天を仰ぐ。見上げた木々の向こうに見えた空は真っ青で、なんだか父が祝福しているような、そんな気がした。





 クリフと自分、少女の応急処置をし、リーゼロッテはフォレストファングの牙を二本だけ手に入れると、死体をその場で燃やした。本来ならば肉も売りたいところだが、猛毒の矢を使っているためそうもいかなかった。毒矢で殺した獲物は売り物にならないため、狩人の最終手段でもある。

「どうか安らかに……」

 メラメラと燃えていく炎の前で目を瞑り、手を組む。命を頂いている感謝は、忘れてはいけない。どんな害獣だって、同じ生ける命だ。

「なあ、自分この村では見ない顔よな?」

 弔いの儀式を見ていた少女が声をかけてきた。そういえばまだ名前も知らない。

「うん。昨日この村に来たの。旅の休憩がてらに」
「ふうん。その歳で旅人ねえ~まっ、いいや。うちはリサ。自分、名前は?」
「私はリーゼロッテ。リーゼでいいよ……それで、リサ、さんはなんでこの森に……?」

 フォレストファングが村の周辺にいることをこの子は知っていたはずだ。そんな危険があって呑気に木の実採りなんてしないだろう。「同じくうちの事はリサでいいんよ。歳近いやろ?」とリサがリーゼロッテの隣に膝を立てて座る。そうしてからゆっくり口を開いた。

「……うちのお父ちゃんはな、村を代表する狩人やったんや。ある日、お父ちゃんを筆頭に討伐隊が組まれて……でも結果は惨敗。お父ちゃんは、討伐隊の一人を庇ってそのまま帰らぬ人や……他の獣と同じだって舐めてかかったのがあかんかったのかもな……だからその敵討ちに今日こそは! って覚悟決めてたんよ」
「あっ……」

 自分とどこか似た過去に咄嗟に「ごめん」と声に出す。だから先程フォレストファングに「仇」と言っていたのか。

「なんで自分が謝るん? 別にリーゼは何も悪くないやろ」
「……辛いこと話させちゃって。私も、父さん亡くしてるから、分かるんだ……」

 眉を下げるリーゼロッテにリサはしばらく無言になってから「アホ」とその赤い背中を叩く。

「いいんよ、別に。うちは、辛気臭いの嫌いなんや。いつまでも顔暗くさせてたら、お父ちゃんが悲しむやろ」

 バシン、と強めに背中を叩かれ、顔を歪めながらリサを見つめる。彼女はニッとはにかんでみせた。

「人生は人のやない。自分だけのものや。リーゼももっと明るくいこな!」

 太陽のような人だ。明るくて、心がポカポカする。その笑顔に「……うん!」とリーゼロッテも連られて笑みを返した。

「さあて、と。村のやつにとっては朗報や。はよ帰って報告せなな! んで、リーゼはどうするん?」

 そんな牙だけ持って、と付け足してリサが問いかけた。クリフに二本を括りつけながら「牙を持っていった方が証拠になるし安心できるでしょ?」と返す。

「あと、元々……資金集めのつもりでもいたから売りたいなって思ってたの。もう一本は新しい弓を作りたくて……村に良さそうな場所はないかな?」

 牙だけでもかなり高額で売れるので、持って帰るものとしては十分な収穫のはずだ。

「ふうん。そういう事なら、取っておきの場所があんで!」

 何故か張り切った様子でリサが答える。

 火事にならないように後始末をしっかりし、死体を地面に埋めた。夕方頃に村に戻り、真っ先に市場へと向かう。やることがなくて暇そうな男店主の前に、リーゼロッテは無言で二本の牙を置いた。

「すみません、フォレストファングの牙を売りたいんですが……」

 男店主はそれを聞いて「ああ、フォレストファングね」と流すようにオウム返しした。しばらくして、自分の言葉に眉を顰め「フォレストファング!?」と声を大にリーゼロッテを見つめる。その声が通行人の目線を集めた。

「はい。ここに腕のいい鍛冶屋がいると……」
「そりゃ勿論……って。悪いがからかいのつもりなら……」

 一度乗せられかけながらも冷静に返す男店主に「相変わらず暇そうやなあ。おやっさん」と間延びした声が聞こえてきた。ひょこりとクリフの影から顔を出すリサに、男店主は更に乗り出して「リサ!」と店から出てくる。

「お前一日どこにいってたんだ!!」
「せやさかい、フォレストファングをちょちょっーと狩ってきたんよ!」
「お前、無断欠勤の嘘にしてはタチが悪いぞ!」
「せやから! 本当やって! その牙みてや!! おやっさんなら、本物か見れば分かるやろ!?」

 ほらほらと触らせようとするリサを男店主が訝しげに見つめ「これをお前がか?」と目を細める。

「あー! うちが狩ったのは嘘や! でも、このリーゼロッテは狩りをしながら旅をする狩りのスペシャリストやで!! あの化け物の急所をズバッと撃ち抜いてなあー! その動きは……あー! 無断欠勤してほんまに悪かったと思うてる! せ、せやけど、奴は本当にリーゼが倒したし、新しい客も連れてきたからこの通りや!」

 パチンと音を出して顔前に手を合わせる。手の影からチラチラと顔を覗かせるリサに「このどアホ!」と怒号が飛んだ。反射的に目をつぶり、首を窄ませるリサは、直後温かな体温に包まれる。

「どれだけ心配したと思ってんだ!! もしお前がいなくなっちまったら……俺はあいつに顔向けできねぇ……!」
「……っ! ……ごめんなあ、おやっさん」

 じわりと目に涙が滲む。その光景を見てリーゼロッテは何だか羨ましい気持ちになった。もう叶わないって、分かっているのに。

「ひとまず、奴を狩ったのは信じよう。リサは、あのフォレストファングを仇に見ていてな……大方、通りかかったお嬢ちゃんが助けてくれたんだろう? その弓矢を見た限りじゃ相当使い込んでいるとみた……リサを助けてくれてありがとう」
「いえ……寧ろ助けて貰って……その火縄銃で」

 指を指す方を見て「これ、あいつの……」と男店主が驚く。

「こいつはな、俺の親友で恩人が使っていたやつなんだ。あいつ……ウィルが……」

 その言葉に察する。きっと、リサの父が助けた討伐隊の一人というのが、この鍛冶屋の店主なのだろう。リサに使えるとは思えないが、と吐かれた言葉に「うちの事舐めたらあかんて!」とリサが頬を膨らませる。血の繋がりはなくても、家族みたいな人達だ。

「まあ、いい……見た感じ牙にあいつがつけた傷もあるし、間違いない」

 男店主が置かれた牙を持ち、あらゆる方向から眺めて呟く。重さや質感、仲間たちがつけた傷を見ても本物で間違いないだろう。

「……よし。おい! みんな! あの化け物が死んだぞ!!! この子が狩ったんだ!!」

 張り上げた男店主の声によって、辺りがざわつき始める。その言葉にリサの方をみるが「いいんよ」とリサが無言で手を振ってみせた。
 先程からの騒ぎのせいか、いつの間にかたくさんの人達が集まってきて、店の周りを囲んだ。喜ぶ声、疑いの声と様々飛び交い、リーゼロッテはそれらを遠くで聞きながら、ただ困ったように棒立ちする。

「これで村は悪夢から解放されるよ……ああ。お嬢ちゃん、すまんな。これ二本精算でいいか? 銀貨……いや、金貨二枚でどうだ??」

 しばらく放置されているリーゼロッテにハッとし、男が指で数を示す。とんでもない数値に思わず「金!?」と声を上げた。

「ちゃうちゃう! おやっさん! 金もそうやけど、リーゼはそれで弓を新調して欲しいねん!」
「なんだ、それを早く言え」
「お客言うたやん!」

 目の前で繰り広げられる会話に「あの、代金は……?」とリーゼロッテが恐る恐る口を開く。村全体が人喰い狼で高値になっているので不安になったのだ。

「ん? ああ、代金はいらねえよ? リサを無事に連れ帰ってくれたのと、村の問題を解決してくれたお礼だ!」

 ありがとうな、小さなハンター! と男店主に強めに撫でられる。その言葉に何かが込み上げ、目の縁が熱くなった。誰かにお礼を言われるなんて、本当に久々だ。誰かに撫でられることも。なんだか報われたような気がして金貨を一枚手にし、ギュッと胸の前で掴む。

「そうだ。せっかくだし、今回の加工。お前やってみるか?」

 その言葉にリサがピンと背中を伸ばす。興奮気味に「ほんま!?」と目を輝かせた。

「ああ。いつの間にか仲良くなっているみたいだし……ああ、勿論お客様に聞いてな」
「私は別に構いませんよ」

 特に気にしないと付け足す様子に「うおおお! やったるでー!」とリサが腕を捲った。なんだか明るくて一緒にいるだけで楽しい子だ。
 ふと顔を上げると、騒ぎを聞きつけてきたのか、遠くから眺めている宿屋の主人と目が合った。思い出したかのように慌てて駆け寄る。

「あの。お金……これで足りると思うんですけど。今度は宿屋に泊まれますか?」

 金貨を見せつけるリーゼロッテに、宿屋の主人はうっ、と顔を顰めた。まさか本当にフォレストファングを狩って稼いでくるとは思ってもいなかったのだろう。昨夜冷たく当たっていただけに、居心地が悪いようだった。

「あんた本当に……いや。好きな部屋を選ぶといい……」

 最早、意地悪を言う気にもなれなかったのだろう。その言葉を聞いてリーゼロッテは「ありがとうございます!」と満面の笑みを向けた。
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