悪役令嬢vs腹黒王子〜時々性悪ヒロインと毒舌執事〜

そら。

文字の大きさ
上 下
34 / 38
3.夜の出会い

5.悪役令嬢と夜の王子

しおりを挟む
アレン様は険しい顔つきで剣を抜き、私に突き付けた。

「答えろ。お前は誰だ」

やばいっ、めちゃめちゃ怒ってる!!

「ぼ、僕はキースと申します。今日、田舎から出てきたんですけど、道に迷ってしまって…」

「ほう、道に迷っていただけの者が衛兵の真似事か?」

さらに剣を突きつけられ、喉元に触れた。
令嬢の私にはありえないシュチュエーションで、恐怖の高揚感で変にドキドキしてしまう。


ここをどう切り抜けるかが私の腕の見せ所ね。

私は一歩身を引き、人生で初めての土下座した。

「も、も、も、申し訳ございませんっ!田舎から出てきたのは本当ですっ。でも実は、貴族様の従者になりたくて…。手土産に手柄を立てたくて、怪しい連中を探して捕まえてやろうと思っていましたっ」

どうよ、いかにも人畜無害なヘタレモブだから関わる必要ないですよ作戦っ!
アレン様はきっと呆れて相手にせず、すぐこの場を立ち去るはずよ。

私がそう思いながら、少し顔を上げアレン様を見上げた瞬間ー…。

ドスッー…。

両手をついていた間にアレン様の剣が突き刺さった。

「はっ…、浅はかな考えだな」

アレン様は冷ややかな目で私を見下した。

ひーっ!!怖っ!!

あまりにも冷たすぎる目線と私の手から1ミリ離れた場所に突き刺さった剣先を見て、私は流石にまずいと思った。

もしかしたら私、婚約者に殺されるのかしら。

「申し訳ございません」

とりあえずもう一度頭を下げるとアレン様は「ふんっ」と鼻で笑い、剣を抜き鞘に収めた。

「で、何か情報は得たのか?」

そう言ったアレン様の声からは殺気が消えていた。

もしかしてヘタレモブ作戦成功かしら?

「え?…ああ…、ベリー王国の刺客が何人か入国しているようです。狙いは光魔導士候補のメアリー・ブライトニー。刺客のボスらしき『ライアン』という男がすでにエレメリア学園の学生寮に潜入しているようです」

私はとりあえず得た情報はすべてアレン様に伝えた。きっとそれだけ伝えればアレン様がメアリーを守ってくれるはずだから。

「ほう、田舎から出てきたばかりの割には有能じゃないか。…しかしお前の話、どこまで信じられる?」

アレン様は冷たい目で私を見下ろしている。

うーん、意外とアレン様は疑り深くてしつこい性格なのね。ちょっとめんどくなってきたわ。

私は少し呆れてため息をついた。

「はあー、じゃあ僕の話なんか信じなくていいですよ。それよりここで伸びてる刺客を吊し上げて自白させればいいじゃないですか。もっと詳しい情報を持っているはずですよ」

私が刺客を指差すと、伸びていたはずの3人の意識が戻り始め「くそ…頭がクラクラするぜ…」とブツブツ言いながら剣を持って立ち上がった。

「あ、ちょうど目も覚めたようですね。さあ、王子自慢の剣を思いっきり振ってみてはいかがですか?」

私は腕を組み挑発するようにアレン様を見た。

そもそもアラン様が邪魔しなければ、とっくにこいつらを捕まえられていたのに。

「ふん、こんな雑魚供に思いっきり振る必要もないな」

アレン様がそう言った瞬間、あっという間に3人組の方へ移動し、骨が折れるような鈍い音と共に刺客がバタバタと倒れた。
倒れた刺客は白目を剥いて泡を吹き、全く動かなくなった。

「えっ!?殺しちゃったんですか!?」

「峰打ちだ。まあ、当分目を覚さないだろうがな。お前もやるなら徹底的にやれ。中途半端な腕じゃどこにも雇われないぞ」

相変わらず冷たい目をしたアレン様は、私に不適な笑みを向けた。

うわ…、怖すぎる。
もうここから立ち去りたい。

「あははー、みたいですね。田舎に戻って出直します!では!!」

私はその場から全力で逃げた。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

どうやら夫に疎まれているようなので、私はいなくなることにします

文野多咲
恋愛
秘めやかな空気が、寝台を囲う帳の内側に立ち込めていた。 夫であるゲルハルトがエレーヌを見下ろしている。 エレーヌの髪は乱れ、目はうるみ、体の奥は甘い熱で満ちている。エレーヌもまた、想いを込めて夫を見つめた。 「ゲルハルトさま、愛しています」 ゲルハルトはエレーヌをさも大切そうに撫でる。その手つきとは裏腹に、ぞっとするようなことを囁いてきた。 「エレーヌ、俺はあなたが憎い」 エレーヌは凍り付いた。

【完結】殿下、自由にさせていただきます。

なか
恋愛
「出て行ってくれリルレット。王宮に君が住む必要はなくなった」  その言葉と同時に私の五年間に及ぶ初恋は終わりを告げた。  アルフレッド殿下の妃候補として選ばれ、心の底から喜んでいた私はもういない。  髪を綺麗だと言ってくれた口からは、私を貶める言葉しか出てこない。  見惚れてしまう程の笑みは、もう見せてもくれない。  私………貴方に嫌われた理由が分からないよ。  初夜を私一人だけにしたあの日から、貴方はどうして変わってしまったの?  恋心は砕かれた私は死さえ考えたが、過去に見知らぬ男性から渡された本をきっかけに騎士を目指す。  しかし、正騎士団は女人禁制。  故に私は男性と性別を偽って生きていく事を決めたのに……。  晴れて騎士となった私を待っていたのは、全てを見抜いて笑う副団長であった。     身分を明かせない私は、全てを知っている彼と秘密の恋をする事になる。    そして、騎士として王宮内で起きた変死事件やアルフレッドの奇行に大きく関わり、やがて王宮に蔓延る謎と対峙する。  これは、私の初恋が終わり。  僕として新たな人生を歩みだした話。  

この度、皆さんの予想通り婚約者候補から外れることになりました。ですが、すぐに結婚することになりました。

鶯埜 餡
恋愛
 ある事件のせいでいろいろ言われながらも国王夫妻の働きかけで王太子の婚約者候補となったシャルロッテ。  しかし当の王太子ルドウィックはアリアナという男爵令嬢にべったり。噂好きな貴族たちはシャルロッテに婚約者候補から外れるのではないかと言っていたが

悪役令嬢に転生したら手遅れだったけど悪くない

おこめ
恋愛
アイリーン・バルケスは断罪の場で記憶を取り戻した。 どうせならもっと早く思い出せたら良かったのに! あれ、でも意外と悪くないかも! 断罪され婚約破棄された令嬢のその後の日常。 ※うりぼう名義の「悪役令嬢婚約破棄諸々」に掲載していたものと同じものです。

5年も苦しんだのだから、もうスッキリ幸せになってもいいですよね?

gacchi
恋愛
13歳の学園入学時から5年、第一王子と婚約しているミレーヌは王子妃教育に疲れていた。好きでもない王子のために苦労する意味ってあるんでしょうか。 そんなミレーヌに王子は新しい恋人を連れて 「婚約解消してくれる?優しいミレーヌなら許してくれるよね?」 もう私、こんな婚約者忘れてスッキリ幸せになってもいいですよね? 3/5 1章完結しました。おまけの後、2章になります。 4/4 完結しました。奨励賞受賞ありがとうございました。 1章が書籍になりました。

【コミカライズ2月28日引き下げ予定】実は白い結婚でしたの。元悪役令嬢は未亡人になったので今度こそ推しを見守りたい。

氷雨そら
恋愛
悪役令嬢だと気がついたのは、断罪直後。 私は、五十も年上の辺境伯に嫁いだのだった。 「でも、白い結婚だったのよね……」 奥様を愛していた辺境伯に、孫のように可愛がられた私は、彼の亡き後、王都へと戻ってきていた。 全ては、乙女ゲームの推しを遠くから眺めるため。 一途な年下枠ヒーローに、元悪役令嬢は溺愛される。 断罪に引き続き、私に拒否権はない……たぶん。

婚約破棄されたら魔法が解けました

かな
恋愛
「クロエ・ベネット。お前との婚約は破棄する。」 それは学園の卒業パーティーでのこと。 ……やっぱり、ダメだったんだ。 周りがザワザワと騒ぎ出す中、ただ1人『クロエ・ベネット』だけは冷静に事実を受け止めていた。乙女ゲームの世界に転生してから10年。国外追放を回避する為に、そして后妃となる為に努力し続けて来たその時間が無駄になった瞬間でもあった。そんな彼女に追い打ちをかけるかのように、第一王子であるエドワード・ホワイトは聖女を新たな婚約者とすることを発表する。その後はトントン拍子にことが運び、冤罪をかけられ、ゲームのシナリオ通り国外追放。そして、国外へと運ばれている途中に魔物に襲われて死ぬ。……そんな運命を辿るはずだった。 「こんなことなら、転生なんてしたくなかった。元の世界に戻りたい……」 あろうことか、最後の願いとしてそう思った瞬間に、全身が光り出したのだ。そして気がつくと、なんと前世の姿に戻っていた!しかもそれを第二王子であるアルベルトに見られていて……。 「……まさかこんなことになるなんてね。……それでどうする?あの2人復讐でもしちゃう?今の君なら、それができるよ。」 死を覚悟した絶望から転生特典を得た主人公の大逆転溺愛ラブストーリー! ※毎週土曜日の18時+気ままに投稿中 ※プロットなしで書いているので辻褄合わせの為に後から修正することがあります。

三度目の嘘つき

豆狸
恋愛
「……本当に良かったのかい、エカテリナ。こんな嘘をついて……」 「……いいのよ。私に新しい相手が出来れば、周囲も殿下と男爵令嬢の仲を認めずにはいられなくなるわ」 なろう様でも公開中ですが、少し構成が違います。内容は同じです。

処理中です...