32 / 38
3.夜の出会い
3.悪役令嬢と夜の街
しおりを挟む
街に着くとすでに太陽は沈み、街灯と建物のオレンジの灯りで石畳をキラキラと照らし、昼間とは違った街並みになっていた。
「夜の街はあまり来たことがなかったけど、結構きれいなんだな」
私は男言葉を意識しながら周りを見渡した。
「ちょっと待ってくださいよ、キーナ様!こんな夜遅くに出歩いていたら流石に旦那様に怒られます!早く帰りましょうよー」
ジルは息を切らしながら私の後をついて来た。
夜遅くって、まだ夕方の6時じゃない。
「おい、『キーナ様』じゃないだろ。そうだな、僕のことはキースと呼んでくれ」
私は腰に手を当て仁王立ちして笑った。
「…まんまじゃないですか。まあ、いいですけど。さあ、帰りますよ」
「あのなー、今着いたばっかりだろ。薬の効果もあるし、あと2時間は調査するぞ。そうだ、時間短縮のために二手に別れよう。僕は大通りに行くから、ジルは露店街に行ってみてくれ」
何だか探偵ごっこをしているみたいで楽しい。
「はぁー…。分かりました。では、時計台の8時の鐘が鳴るまでですよ。ただし、怪しい人物がいても絶対に手を出さないこと。すぐに衛兵を呼ぶだけにしてください。それからもし危険な目に遭いそうなったら警告灯を上げてくださいね」
警告灯とは、火魔法を高く打ち上げ自分の居場所を知らせる合図だ。火の色で誰が打ち上げたが分かるようになっている。
「はいはい。ジルも無理をするなよ。じゃあまた後で」
そう言って私とジルは二手に分かれた。
大通りには、昼ほどではないが人出もあり酒場からは陽気な笑い声が聞こえてくる。
みんな夜の時間を過ごし、楽しんでいるようだ。
(ふふ、やっぱりフィルコートは治安が良いわ。このまま何事もなく無事に夏祭りも終わってほしいわ。)
私は夜の街の雰囲気を味わいながらゆっくり大通りを歩いた。
すこし歩いたところで小さな路地裏から猫が勢いよく飛び出してきた。
猫はあっという間に大通りを横切り、また別の路地裏へ逃げていった。
私は猫が飛び出してきた路地裏へ、そっと入った。
治安が良いフィルコートとは言え、流石に人気のない路地裏は危険が伴う。
足音を立てずに、ゆっくり進んでいくと聞きなれない言葉で話す二人組がいた
私は壁の影に隠れて耳を覚ました。
ー…ああ、この言葉はベリー王国のものだ。
子供の頃からベリー王国の言語を学んできた私は、集中して二人組の会話を聞き取った。
「ー…だから昼間の任務は失敗したんだ。運悪く、第一王子が居合わせて、ダンのやつが捕まったんだ。」
「ダンはトロいからな。まあ、あいつは元々捨て駒だし期待はしていなかった。拷問でも自白剤でも勝手にすればいいさ。どうせダンはこの計画について何も知らないんだから」
「だが、そのせいで衛兵の人数が増やされたんだ。やっぱり拉致するなら人の少ない夜を狙うべきだったんだ。とっとと光魔導士を捕まえないと俺たちがボスに殺される」
「分かっているさ。しかしメアリー・ブライトニーはまだ子供だろ?夜に出歩くか?」
メアリーの名前が出た。
やっぱりこの二人組はベリー王国の刺客ね。
おそらくひったりで捕まった男の名前がダン。きっとこの二人の方がダンより詳しい計画を知っている。
あー捕まえたい。でもジルには手を出すな、と釘を刺されているし…。
「おい、お前!そこで何をしている!?」
ー…やばっ!!
後ろから声を掛けられ、振り返ればガタイのいい男が立っていた。その男の言葉もベリー王国の言葉。
男は私の腕を思い切り掴んだ。
「いたっ!」
想像以上の力の強さに腕に痛みが走る。
男の声を聞きつけ話していた二人組もこっちへやって来た。
「おい、どうしたんだ!?」
「この兄ちゃん、オメェらの会話を聞いていたみたいだぜ」
細い路地裏、私は3人の男に囲まれてしまった。
ごめん、ジル。
早速、危険な目に遭いそうだわ。
「夜の街はあまり来たことがなかったけど、結構きれいなんだな」
私は男言葉を意識しながら周りを見渡した。
「ちょっと待ってくださいよ、キーナ様!こんな夜遅くに出歩いていたら流石に旦那様に怒られます!早く帰りましょうよー」
ジルは息を切らしながら私の後をついて来た。
夜遅くって、まだ夕方の6時じゃない。
「おい、『キーナ様』じゃないだろ。そうだな、僕のことはキースと呼んでくれ」
私は腰に手を当て仁王立ちして笑った。
「…まんまじゃないですか。まあ、いいですけど。さあ、帰りますよ」
「あのなー、今着いたばっかりだろ。薬の効果もあるし、あと2時間は調査するぞ。そうだ、時間短縮のために二手に別れよう。僕は大通りに行くから、ジルは露店街に行ってみてくれ」
何だか探偵ごっこをしているみたいで楽しい。
「はぁー…。分かりました。では、時計台の8時の鐘が鳴るまでですよ。ただし、怪しい人物がいても絶対に手を出さないこと。すぐに衛兵を呼ぶだけにしてください。それからもし危険な目に遭いそうなったら警告灯を上げてくださいね」
警告灯とは、火魔法を高く打ち上げ自分の居場所を知らせる合図だ。火の色で誰が打ち上げたが分かるようになっている。
「はいはい。ジルも無理をするなよ。じゃあまた後で」
そう言って私とジルは二手に分かれた。
大通りには、昼ほどではないが人出もあり酒場からは陽気な笑い声が聞こえてくる。
みんな夜の時間を過ごし、楽しんでいるようだ。
(ふふ、やっぱりフィルコートは治安が良いわ。このまま何事もなく無事に夏祭りも終わってほしいわ。)
私は夜の街の雰囲気を味わいながらゆっくり大通りを歩いた。
すこし歩いたところで小さな路地裏から猫が勢いよく飛び出してきた。
猫はあっという間に大通りを横切り、また別の路地裏へ逃げていった。
私は猫が飛び出してきた路地裏へ、そっと入った。
治安が良いフィルコートとは言え、流石に人気のない路地裏は危険が伴う。
足音を立てずに、ゆっくり進んでいくと聞きなれない言葉で話す二人組がいた
私は壁の影に隠れて耳を覚ました。
ー…ああ、この言葉はベリー王国のものだ。
子供の頃からベリー王国の言語を学んできた私は、集中して二人組の会話を聞き取った。
「ー…だから昼間の任務は失敗したんだ。運悪く、第一王子が居合わせて、ダンのやつが捕まったんだ。」
「ダンはトロいからな。まあ、あいつは元々捨て駒だし期待はしていなかった。拷問でも自白剤でも勝手にすればいいさ。どうせダンはこの計画について何も知らないんだから」
「だが、そのせいで衛兵の人数が増やされたんだ。やっぱり拉致するなら人の少ない夜を狙うべきだったんだ。とっとと光魔導士を捕まえないと俺たちがボスに殺される」
「分かっているさ。しかしメアリー・ブライトニーはまだ子供だろ?夜に出歩くか?」
メアリーの名前が出た。
やっぱりこの二人組はベリー王国の刺客ね。
おそらくひったりで捕まった男の名前がダン。きっとこの二人の方がダンより詳しい計画を知っている。
あー捕まえたい。でもジルには手を出すな、と釘を刺されているし…。
「おい、お前!そこで何をしている!?」
ー…やばっ!!
後ろから声を掛けられ、振り返ればガタイのいい男が立っていた。その男の言葉もベリー王国の言葉。
男は私の腕を思い切り掴んだ。
「いたっ!」
想像以上の力の強さに腕に痛みが走る。
男の声を聞きつけ話していた二人組もこっちへやって来た。
「おい、どうしたんだ!?」
「この兄ちゃん、オメェらの会話を聞いていたみたいだぜ」
細い路地裏、私は3人の男に囲まれてしまった。
ごめん、ジル。
早速、危険な目に遭いそうだわ。
0
お気に入りに追加
87
あなたにおすすめの小説
どうやら夫に疎まれているようなので、私はいなくなることにします
文野多咲
恋愛
秘めやかな空気が、寝台を囲う帳の内側に立ち込めていた。
夫であるゲルハルトがエレーヌを見下ろしている。
エレーヌの髪は乱れ、目はうるみ、体の奥は甘い熱で満ちている。エレーヌもまた、想いを込めて夫を見つめた。
「ゲルハルトさま、愛しています」
ゲルハルトはエレーヌをさも大切そうに撫でる。その手つきとは裏腹に、ぞっとするようなことを囁いてきた。
「エレーヌ、俺はあなたが憎い」
エレーヌは凍り付いた。

この度、皆さんの予想通り婚約者候補から外れることになりました。ですが、すぐに結婚することになりました。
鶯埜 餡
恋愛
ある事件のせいでいろいろ言われながらも国王夫妻の働きかけで王太子の婚約者候補となったシャルロッテ。
しかし当の王太子ルドウィックはアリアナという男爵令嬢にべったり。噂好きな貴族たちはシャルロッテに婚約者候補から外れるのではないかと言っていたが

悪役令嬢に転生したら手遅れだったけど悪くない
おこめ
恋愛
アイリーン・バルケスは断罪の場で記憶を取り戻した。
どうせならもっと早く思い出せたら良かったのに!
あれ、でも意外と悪くないかも!
断罪され婚約破棄された令嬢のその後の日常。
※うりぼう名義の「悪役令嬢婚約破棄諸々」に掲載していたものと同じものです。
5年も苦しんだのだから、もうスッキリ幸せになってもいいですよね?
gacchi
恋愛
13歳の学園入学時から5年、第一王子と婚約しているミレーヌは王子妃教育に疲れていた。好きでもない王子のために苦労する意味ってあるんでしょうか。
そんなミレーヌに王子は新しい恋人を連れて
「婚約解消してくれる?優しいミレーヌなら許してくれるよね?」
もう私、こんな婚約者忘れてスッキリ幸せになってもいいですよね?
3/5 1章完結しました。おまけの後、2章になります。
4/4 完結しました。奨励賞受賞ありがとうございました。
1章が書籍になりました。
【コミカライズ2月28日引き下げ予定】実は白い結婚でしたの。元悪役令嬢は未亡人になったので今度こそ推しを見守りたい。
氷雨そら
恋愛
悪役令嬢だと気がついたのは、断罪直後。
私は、五十も年上の辺境伯に嫁いだのだった。
「でも、白い結婚だったのよね……」
奥様を愛していた辺境伯に、孫のように可愛がられた私は、彼の亡き後、王都へと戻ってきていた。
全ては、乙女ゲームの推しを遠くから眺めるため。
一途な年下枠ヒーローに、元悪役令嬢は溺愛される。
断罪に引き続き、私に拒否権はない……たぶん。

婚約破棄されたら魔法が解けました
かな
恋愛
「クロエ・ベネット。お前との婚約は破棄する。」
それは学園の卒業パーティーでのこと。
……やっぱり、ダメだったんだ。
周りがザワザワと騒ぎ出す中、ただ1人『クロエ・ベネット』だけは冷静に事実を受け止めていた。乙女ゲームの世界に転生してから10年。国外追放を回避する為に、そして后妃となる為に努力し続けて来たその時間が無駄になった瞬間でもあった。そんな彼女に追い打ちをかけるかのように、第一王子であるエドワード・ホワイトは聖女を新たな婚約者とすることを発表する。その後はトントン拍子にことが運び、冤罪をかけられ、ゲームのシナリオ通り国外追放。そして、国外へと運ばれている途中に魔物に襲われて死ぬ。……そんな運命を辿るはずだった。
「こんなことなら、転生なんてしたくなかった。元の世界に戻りたい……」
あろうことか、最後の願いとしてそう思った瞬間に、全身が光り出したのだ。そして気がつくと、なんと前世の姿に戻っていた!しかもそれを第二王子であるアルベルトに見られていて……。
「……まさかこんなことになるなんてね。……それでどうする?あの2人復讐でもしちゃう?今の君なら、それができるよ。」
死を覚悟した絶望から転生特典を得た主人公の大逆転溺愛ラブストーリー!
※毎週土曜日の18時+気ままに投稿中
※プロットなしで書いているので辻褄合わせの為に後から修正することがあります。

【完結】悪役令嬢だったみたいなので婚約から回避してみた
21時完結
恋愛
春風に彩られた王国で、名門貴族ロゼリア家の娘ナタリアは、ある日見た悪夢によって人生が一変する。夢の中、彼女は「悪役令嬢」として婚約を破棄され、王国から追放される未来を目撃する。それを避けるため、彼女は最愛の王太子アレクサンダーから距離を置き、自らを守ろうとするが、彼の深い愛と執着が彼女の運命を変えていく。

【完結】引きこもり令嬢は迷い込んできた猫達を愛でることにしました
かな
恋愛
乙女ゲームのモブですらない公爵令嬢に転生してしまった主人公は訳あって絶賛引きこもり中!
そんな主人公の生活はとある2匹の猫を保護したことによって一変してしまい……?
可愛い猫達を可愛がっていたら、とんでもないことに巻き込まれてしまった主人公の無自覚無双の幕開けです!
そしていつのまにか溺愛ルートにまで突入していて……!?
イケメンからの溺愛なんて、元引きこもりの私には刺激が強すぎます!!
毎日17時と19時に更新します。
全12話完結+番外編
「小説家になろう」でも掲載しています。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる