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2.婚約破棄まであと5ヶ月
11.腹黒王子のプレゼント
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レストランまで向かう道では、トラブルに巻き込まれないように細心の注意を払いながら歩いた。
キーナは出店の商品を見ながら楽しそうに歩いている。
「何か欲しいものはあったか?」
「え?ああ、いえ、特には。こうして眺めているだけで十分ですわ」
「そうか。欲しいものがあれば言ってくれ」
「ふふ、ありがとうございます。じゃあ何かあれば遠慮なくおねだりさせていただきますね」
キーナは嬉しそうに微笑んだが、結局何もねだられる事はなかった。
たまにはプレゼントを贈りたいと思ったのだが…。
途中、アクセサリーショップでキーナは髪飾りを手に取った。しばらく眺めて、そっと元の場所へ置く。
他のアクセサリーも見て、またその髪飾りを手に取った。欲しいのかと思い、聞こうとするとキーナは振り返り、「そろそろレストランに向かいましょう」と笑った。
「ああ、ちょっと先に行ってくれ。すぐ追いかける」
「…?かしこまりました」
俺はキーナが店を出たのを確認して、その髪飾りを買った。
レストランで食事を終え、帰りの馬車の中で俺は髪飾りを渡した。
正直、喜んでくれるか不安だった。
そわそわする心を押し殺し、平然を装いながらキーナの反応を見ていると、花が咲き誇るような笑顔で髪飾りを手に取った。
髪飾りから反射したエメラルドの光がキーナの頬を彩る。
「きれい…」
良かった。喜んでくれた。
俺は嬉しくなって、そのままキーナを眺めた。
キーナは一瞬、泣きそうな表情をした。
「ありがとうございます、アレン様。この髪飾りは一生大切にします」
ー…え?
キーナの表情は、いつもの作り笑いに変わった。
嬉しくなかったのか?
「え?…ああ。そんなに大したものではない。気にするな」
キーナは俺に壁を作った。
そんな笑顔だった。
キーナを屋敷に送り届けた後、俺は自室のベッドに倒れ込んだ。
「なんなんだ、あの作り笑いは…」
髪飾りが嬉しくなかったのか?
いや、でも袋を開けた瞬間は嬉しそうだったじゃないか。
じゃあ、俺からのプレゼントだったから嬉しくなかったのか?
「……。」
俺はショックでなかなか起き上がれなかった。
すぐに出掛けないといけないのに…。
コンコンコンー…。
ノックをする音。重い体を起こして扉を開ける。
外には俺の従者兼隠密隊のリクがいた。
「素性が分かったか?」
俺はリクにひったくり犯について調べさせていた。
「はい。犯人はベリー王国の者でした」
「やはりな。事件の場所の近くにメアリーもいたのだろう?」
「はい。フラン様と一緒に買い物に来ていたようです。王子の言う通り、近くにはベリー王国の刺客がいました。その者も捕獲済みです」
「そうか、よくやった」
事件の真相は、ベリー王国によるメアリーの誘拐だった。
ひったくりで騒ぎを起こし、衛兵の注意を引き付けている間にメアリーを拉致する計画だったのだろう。
最近、メアリーの周りで怪しい人物を見かけると報告が何件もあった。外見や言語などからおそらくベリー王国の者だろう。
ベリー王国には、光魔法の使い手が非常に少なく、どんな手段を使ってでも人員確保をしていると噂されている。
メアリー自身、ベリー王国からスカウトされた、と言っていた。条件さえ揃えば簡単にベリー王国へ行くだろう。ただ、現状メアリーはフィルコートに留まっている。
ベリー王国は強硬手段に出た、という事だろうか。
捕獲されたベリー王国の刺客は2人。
王都にはまだ多くの刺客が潜んでいるはずだ。
俺は重い腰を上げて、再び街へ向かった。
キーナは出店の商品を見ながら楽しそうに歩いている。
「何か欲しいものはあったか?」
「え?ああ、いえ、特には。こうして眺めているだけで十分ですわ」
「そうか。欲しいものがあれば言ってくれ」
「ふふ、ありがとうございます。じゃあ何かあれば遠慮なくおねだりさせていただきますね」
キーナは嬉しそうに微笑んだが、結局何もねだられる事はなかった。
たまにはプレゼントを贈りたいと思ったのだが…。
途中、アクセサリーショップでキーナは髪飾りを手に取った。しばらく眺めて、そっと元の場所へ置く。
他のアクセサリーも見て、またその髪飾りを手に取った。欲しいのかと思い、聞こうとするとキーナは振り返り、「そろそろレストランに向かいましょう」と笑った。
「ああ、ちょっと先に行ってくれ。すぐ追いかける」
「…?かしこまりました」
俺はキーナが店を出たのを確認して、その髪飾りを買った。
レストランで食事を終え、帰りの馬車の中で俺は髪飾りを渡した。
正直、喜んでくれるか不安だった。
そわそわする心を押し殺し、平然を装いながらキーナの反応を見ていると、花が咲き誇るような笑顔で髪飾りを手に取った。
髪飾りから反射したエメラルドの光がキーナの頬を彩る。
「きれい…」
良かった。喜んでくれた。
俺は嬉しくなって、そのままキーナを眺めた。
キーナは一瞬、泣きそうな表情をした。
「ありがとうございます、アレン様。この髪飾りは一生大切にします」
ー…え?
キーナの表情は、いつもの作り笑いに変わった。
嬉しくなかったのか?
「え?…ああ。そんなに大したものではない。気にするな」
キーナは俺に壁を作った。
そんな笑顔だった。
キーナを屋敷に送り届けた後、俺は自室のベッドに倒れ込んだ。
「なんなんだ、あの作り笑いは…」
髪飾りが嬉しくなかったのか?
いや、でも袋を開けた瞬間は嬉しそうだったじゃないか。
じゃあ、俺からのプレゼントだったから嬉しくなかったのか?
「……。」
俺はショックでなかなか起き上がれなかった。
すぐに出掛けないといけないのに…。
コンコンコンー…。
ノックをする音。重い体を起こして扉を開ける。
外には俺の従者兼隠密隊のリクがいた。
「素性が分かったか?」
俺はリクにひったくり犯について調べさせていた。
「はい。犯人はベリー王国の者でした」
「やはりな。事件の場所の近くにメアリーもいたのだろう?」
「はい。フラン様と一緒に買い物に来ていたようです。王子の言う通り、近くにはベリー王国の刺客がいました。その者も捕獲済みです」
「そうか、よくやった」
事件の真相は、ベリー王国によるメアリーの誘拐だった。
ひったくりで騒ぎを起こし、衛兵の注意を引き付けている間にメアリーを拉致する計画だったのだろう。
最近、メアリーの周りで怪しい人物を見かけると報告が何件もあった。外見や言語などからおそらくベリー王国の者だろう。
ベリー王国には、光魔法の使い手が非常に少なく、どんな手段を使ってでも人員確保をしていると噂されている。
メアリー自身、ベリー王国からスカウトされた、と言っていた。条件さえ揃えば簡単にベリー王国へ行くだろう。ただ、現状メアリーはフィルコートに留まっている。
ベリー王国は強硬手段に出た、という事だろうか。
捕獲されたベリー王国の刺客は2人。
王都にはまだ多くの刺客が潜んでいるはずだ。
俺は重い腰を上げて、再び街へ向かった。
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