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2.婚約破棄まであと5ヶ月
1.悪役令嬢、認められる
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「疲れた…。」
自室に帰ってきた私は制服のままソファに倒れ込んだ。
「おやおや、公爵令嬢ともあろう方がみっともないですよ。」
ジルは呆れながら私が投げ捨てた鞄を片付けている。
「だって、本当に疲れたんだもの。自分の勉学、情報交流に加えてメアリーの指導に付きっきりなのよ。」
私は伸びをしてからソファに座り直した。
「まあ、確かにメアリー様の指導は中々大変そうですね。でももう1ヶ月は経ちましたね。なんだかんだ言ってアレン王子からのお願いは断れないんですね。」
ジルはニヤリと笑うので、私はジロリと睨んでやった。
「…うるさいわよ。」
メアリーの指導をお願いされてからすでに1ヶ月が経っていた。今まで月日の流れなんてあっという間だと感じていたが、この1ヶ月は人生の中でも長く感じた期間だった。なぜなら、メアリーの指導は想像していたより大変だったからだ。
今日もメアリーの言葉遣いを注意すると大泣きされてしまった。泣かせてしまったのはこれで何回目だろうか。そのせいで彼女の護衛のように常に寄り添っているフランには睨まれるし、アレンも呆れ顔をしている。
しかしメアリーはどんなに私に泣かされても、私を指導係から外して欲しいとは言わないらしい。
むしろ「私のためにあえて厳しくしてくれている。」と感謝しているそうだ。そんな健気な姿を見て、最近では彼女を応援する生徒も多い。
正直、外してくれた方が楽なんだけどなぁ…。
「キーナ様、今日はリラックス効果のあるハーブティーですよ。」
ジルがお茶の用意をしてくれていたが、私は思わず眉をひそめた。
「…私、ハーブティー苦手なんだけど。あなたも知ってるわよね?」
ジルはたまにこうやって私に嫌がらせをしてくる。しかもその理由は私の反応を見て楽しむ、というだけの理由。
「もっ、申し訳ございません!!すぐ新しいお茶を煎れ直します!!」
ジルは慌てた素振りで謝ってきた。
しかし、それも楽しんでいるように見える。
「別にいいわよ。飲めないわけじゃないから。というか、何よ?その大袈裟な反応は。」
私がハーブティーに口を付けると「ああっ!もっと怒ってくださいよ!」となぜかジルに怒られた。
「だってキーナ様は悪役令嬢なんだから、もっと意地悪で理不尽な令嬢じゃなきゃダメなんですよ!」
「はぁ?私が悪役令嬢?」
「そうですよ!最近、令嬢達の中で人気がある小説なんですけど、健気で美しい貧しい娘と王子が恋に落ちるシンデレラストーリーで、2人の仲を邪魔するのが意地悪な金持ち令嬢。まさにメアリー様、アレン王子、キーナ様みたいだって陰で結構話題になってるんですよ。俺もその小説読みましたけど、結構面白いんですよ。あ、今度貸しましょうか…」
「ちょ、ちょっと待って。私が2人の仲を邪魔する金持ち令嬢って事?」
ジルの話を遮り、私は自分の頭に手を当てた。
どういうこと?意味が分からないわ。
「そうですよ。あ、自覚あったんですね。」
「ないわよ!っていうか私、意地悪だと思われてるの!?私は指導しかしてないわよ!それにメアリーとアレン様の邪魔をした事なんて一度もないわ。っていうか、そもそも婚約者は私なのに私が邪魔者なの??」
「うーん、というか3人の関係性が小説みたいだなって事ですよ。キーナ様は意地悪ではありませんが、性格がちょっと、いやかなり強めなんですよね。だからまさに悪役令嬢にピッタリなんです。悪役令嬢は物語を盛り上がるキーパーソン!認められてよかったですね。」
ジルは面白そうに話すが、私は全く笑えない。
まあ、確かにメアリーに対して厳しく指導はしているが周りからはメアリーをイジメているように見えるのか。
私は地味にショックで体の力が抜けてしまった。
自室に帰ってきた私は制服のままソファに倒れ込んだ。
「おやおや、公爵令嬢ともあろう方がみっともないですよ。」
ジルは呆れながら私が投げ捨てた鞄を片付けている。
「だって、本当に疲れたんだもの。自分の勉学、情報交流に加えてメアリーの指導に付きっきりなのよ。」
私は伸びをしてからソファに座り直した。
「まあ、確かにメアリー様の指導は中々大変そうですね。でももう1ヶ月は経ちましたね。なんだかんだ言ってアレン王子からのお願いは断れないんですね。」
ジルはニヤリと笑うので、私はジロリと睨んでやった。
「…うるさいわよ。」
メアリーの指導をお願いされてからすでに1ヶ月が経っていた。今まで月日の流れなんてあっという間だと感じていたが、この1ヶ月は人生の中でも長く感じた期間だった。なぜなら、メアリーの指導は想像していたより大変だったからだ。
今日もメアリーの言葉遣いを注意すると大泣きされてしまった。泣かせてしまったのはこれで何回目だろうか。そのせいで彼女の護衛のように常に寄り添っているフランには睨まれるし、アレンも呆れ顔をしている。
しかしメアリーはどんなに私に泣かされても、私を指導係から外して欲しいとは言わないらしい。
むしろ「私のためにあえて厳しくしてくれている。」と感謝しているそうだ。そんな健気な姿を見て、最近では彼女を応援する生徒も多い。
正直、外してくれた方が楽なんだけどなぁ…。
「キーナ様、今日はリラックス効果のあるハーブティーですよ。」
ジルがお茶の用意をしてくれていたが、私は思わず眉をひそめた。
「…私、ハーブティー苦手なんだけど。あなたも知ってるわよね?」
ジルはたまにこうやって私に嫌がらせをしてくる。しかもその理由は私の反応を見て楽しむ、というだけの理由。
「もっ、申し訳ございません!!すぐ新しいお茶を煎れ直します!!」
ジルは慌てた素振りで謝ってきた。
しかし、それも楽しんでいるように見える。
「別にいいわよ。飲めないわけじゃないから。というか、何よ?その大袈裟な反応は。」
私がハーブティーに口を付けると「ああっ!もっと怒ってくださいよ!」となぜかジルに怒られた。
「だってキーナ様は悪役令嬢なんだから、もっと意地悪で理不尽な令嬢じゃなきゃダメなんですよ!」
「はぁ?私が悪役令嬢?」
「そうですよ!最近、令嬢達の中で人気がある小説なんですけど、健気で美しい貧しい娘と王子が恋に落ちるシンデレラストーリーで、2人の仲を邪魔するのが意地悪な金持ち令嬢。まさにメアリー様、アレン王子、キーナ様みたいだって陰で結構話題になってるんですよ。俺もその小説読みましたけど、結構面白いんですよ。あ、今度貸しましょうか…」
「ちょ、ちょっと待って。私が2人の仲を邪魔する金持ち令嬢って事?」
ジルの話を遮り、私は自分の頭に手を当てた。
どういうこと?意味が分からないわ。
「そうですよ。あ、自覚あったんですね。」
「ないわよ!っていうか私、意地悪だと思われてるの!?私は指導しかしてないわよ!それにメアリーとアレン様の邪魔をした事なんて一度もないわ。っていうか、そもそも婚約者は私なのに私が邪魔者なの??」
「うーん、というか3人の関係性が小説みたいだなって事ですよ。キーナ様は意地悪ではありませんが、性格がちょっと、いやかなり強めなんですよね。だからまさに悪役令嬢にピッタリなんです。悪役令嬢は物語を盛り上がるキーパーソン!認められてよかったですね。」
ジルは面白そうに話すが、私は全く笑えない。
まあ、確かにメアリーに対して厳しく指導はしているが周りからはメアリーをイジメているように見えるのか。
私は地味にショックで体の力が抜けてしまった。
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