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121.目が覚めて

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グレイが目を覚ますと、目の前には眠るルイがいた。
なぜか久しぶりにルイの顔を見た気がした。

あ、ルイの唇切れてる…。

グレイはそっと指で触れて治癒魔法をかけた。

寝起きのせいか体がだるく頭もふわふわする。でも心は満たされている。

水を飲もうと起き上がると、後ろからだらりと溢れた。太ももを伝いボタボタとシーツを汚した。

グレイはその感覚にびっくりしたが、裸のままの自分の体を見てそれ以上にびっくりした。

体中キスマークだらけだった。

ー…うわっ、恥ずかし。ルイの仕業だな。

グレイは呆れてルイを見ると、丁度ルイも目を覚ました。目を擦りながらグレイの太ももを見た。

「…朝から誘惑するなよ。」

触れようと伸ばしたルイの手をグレイは思い切りたたいた。

「誘惑なんてしてねぇよ!」

グレイはいつもの照れ隠しで言ったつもりだったのに、ルイは固まってしまった。

あれ、もしかして傷付けた?

グレイはキツく言いすぎたと思い謝ろうとした時、ルイが勢いよく起き上がりグレイを抱きしめたい。

「ああ、グレイ、正気に戻ったんだな…。良かった。体は大丈夫か?」

「へ?大丈夫だけど…。」

グレイは一瞬何のことだか分からなかったが、母体化のことを思い出した。

「ああ、そっか。俺、発情期になってたんだっけ。体は大丈夫。少しだるいけど全然平気。ほら見ろよ。」

そう言って腕を回すとグルルルルーっと盛大に腹の虫が鳴った。
グレイはお腹をさすりながら「でもハラ減った。」と恥ずかしそうに笑った。そんなグレイの様子を見て、ルイは安堵の笑いが出た。

「ふふ、お腹空いたよな。1カ月まともな食事をしてないもんな。よし、すぐに用意しよう。」

「え?1ヶ月?」

「ああ。母体化のせいでほぼ1ヶ月間発情期になっていたんだ。熱に浮かされていたから覚えてないかもしれないが…。」

「あー…」

ルイに指摘されてグレイは記憶を巡らせた。

そうだ。

母体化の後、体が熱くなってルイがたまらなく欲しくなったんだ。求める事しか考えられなくなった。そしてルイの精液を中に出されれば出されるほど欲望が掻き立てられたのだ。


『ー…もっと欲しいっ、あっ、あぅ、ルイっ!ルイっ!もっと…もっと…。』

獣のようにルイを求めた自分を思い出し、グレイは真っ赤になった。


「お、お、覚えてない!!」

思い出すには恥ずかしすぎる記憶だった。

「そっか。でも元気そうで良かった。発情期中のグレイはかなり辛そうだったんだ。無理させて申し訳なかった。さあ、食事にしよう。その前にシャワーを浴びるか?」

そう言ってベッドから出たルイの体を見てグレイは言葉を失った。

体中傷だらけになっていたのだ。
血が滲んだ引っ掻き傷に歯型がしっかり残っている噛み跡。そして痣になるほどのキスマーク。

「ルイ、それ、傷…。ごめん。俺全然記憶ないんだけど…原因俺だよね?治癒魔法使うか?」

「ダメだ!そんな勿体無いこと出来ない!グレイが付けた跡は全部消したくない。むしろ一生残しておきたいくらいだ。」

ルイは愛おしそうに自分の傷を撫でた。

「えー…、さすがにキモいぞ。」

グレイは呆れながら呟いた。



食事の準備を待つ間、2人は風呂に入った。

「赤ちゃん…出来たかな?」

グレイは自分の腹を撫でてみた。

「うーん、どうだろうな。こればっかりは分からないが、グレイの体は完全に母体化している。球を取り出すまで元に戻ることはないが、今まで通り普通に暮らせるよ。」

「そっか。」

「まあ、でも今回出来なくても焦る必要はないよ。ゆっくり私たちのペースでやっていけばいい。それに私は子供が出来なくなってもグレイと一緒に居られれば充分幸せだからな。」

ルイはグレイを引き寄せ頬にキスをした。

「俺もルイがいれば幸せだ。」

今度はグレイがルイの手を取り、手の甲にキスを落とした。
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