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104.楠
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ルイは竜の姿になり、グレイを乗せてリリィの果樹園へ向かった。
その間、ルイが話しかけてもグレイは空返事をするだけで、墓に供えるために買った花束を抱きかかえて静かに景色を眺めていた。
果樹園に着くと、やっとグレイは言葉を発した。
「…リリィの果樹園、すごく広くなっている。」
50年前も広い果樹園だと思っていたが、さらに規模は大きくなり所々で従業員らしき人々が作業をしているのが見える。
「ああ。昔は梨とりんごだったが、今ではぶどうや桃などの多くの果物も作っているそうだ。品質もかなり良いものばかりで王都でも有名な農家になったんだよ。今はちょうどぶどうの収穫時期だな。後で買って食べようか。」
ルイの提案にグレイの表情は少し明るくなり嬉しそうに頷いた。
「…じゃあ、リリィの墓へ行こうか。」
「…うん。」
2人は果樹園を見渡しながら墓へ向かって歩いていると、1人の男性が声を掛けてきた。
「おや、ルインハルト様じゃないですか。お久しぶりです。」
「やあ、デイビット。久しぶりだね。元気だったか?」
ルイと男性は親しげに挨拶を交わしていたが、魔族だというだけで人間に追いかけられた経験のあるグレイは、そっとルイの後ろに身を隠した。
そんなグレイの様子に気付いたルイは「大丈夫だよ、グレイ。彼はリリィの孫のデイビットだよ。」と教えてくれた。
「リリィの孫?」
グレイはそっと男性の顔を見ると、男性もグレイを見て嬉しそうに「ああ、あなたがグレイさんですか!あなたの話は祖母から耳にタコが出来るほど聞きました。僕もずっとお会いしたかったんですよ。」と笑いかけた。その優しそうな目元と穏やかな話し方がリリィとよく似ていた。
「今日はリリィの墓参りをさせてもらうよ。」
「そうですか。祖母も喜びます。どうぞゆっくりしていってください。」
デイビットと別れ、2人は再び歩き出した。
少し高台になっている場所に大きな楠があり、その下には小さな丸い石が2つ並んでいた。
その石にはそれぞれ『リリィ・ロバーツ』『ケビン・ロバーツ』と名前が掘られていた。
果樹園が見渡せるこの場所には心地よい風が吹き、グレイの持っていた花束を優しく揺らした。
「これがリリィのお墓?」
「ああ。ケビンはリリィの旦那さんだ。2人はとても仲が良かったから、お墓も並べたんだって。」
「そっか、可愛いお墓だね。…リリィ、本当に死んじゃったんだね。」
グレイは花束を握りしめた。ルイはそっとグレイの肩に手を置いた。
「…グレイ、大丈夫か?」
「うん。でも今は1人になりたい。」
「…わかった。少ししたら迎えにくるよ。」
「うん。」
ルイはグレイを残し、楠から離れた。
本音を言えば、グレイの側にいたかったし支えたかった。しかしきっとグレイはリリィと2人で話したいはずだ。
振り返れば、グレイの小さな背中が寂しそうに佇んでいる。
自分がもっと早くグレイを見つけていれば…。
「…ごめん。」
ルイの謝罪の言葉は風に乗って消えていった。
その間、ルイが話しかけてもグレイは空返事をするだけで、墓に供えるために買った花束を抱きかかえて静かに景色を眺めていた。
果樹園に着くと、やっとグレイは言葉を発した。
「…リリィの果樹園、すごく広くなっている。」
50年前も広い果樹園だと思っていたが、さらに規模は大きくなり所々で従業員らしき人々が作業をしているのが見える。
「ああ。昔は梨とりんごだったが、今ではぶどうや桃などの多くの果物も作っているそうだ。品質もかなり良いものばかりで王都でも有名な農家になったんだよ。今はちょうどぶどうの収穫時期だな。後で買って食べようか。」
ルイの提案にグレイの表情は少し明るくなり嬉しそうに頷いた。
「…じゃあ、リリィの墓へ行こうか。」
「…うん。」
2人は果樹園を見渡しながら墓へ向かって歩いていると、1人の男性が声を掛けてきた。
「おや、ルインハルト様じゃないですか。お久しぶりです。」
「やあ、デイビット。久しぶりだね。元気だったか?」
ルイと男性は親しげに挨拶を交わしていたが、魔族だというだけで人間に追いかけられた経験のあるグレイは、そっとルイの後ろに身を隠した。
そんなグレイの様子に気付いたルイは「大丈夫だよ、グレイ。彼はリリィの孫のデイビットだよ。」と教えてくれた。
「リリィの孫?」
グレイはそっと男性の顔を見ると、男性もグレイを見て嬉しそうに「ああ、あなたがグレイさんですか!あなたの話は祖母から耳にタコが出来るほど聞きました。僕もずっとお会いしたかったんですよ。」と笑いかけた。その優しそうな目元と穏やかな話し方がリリィとよく似ていた。
「今日はリリィの墓参りをさせてもらうよ。」
「そうですか。祖母も喜びます。どうぞゆっくりしていってください。」
デイビットと別れ、2人は再び歩き出した。
少し高台になっている場所に大きな楠があり、その下には小さな丸い石が2つ並んでいた。
その石にはそれぞれ『リリィ・ロバーツ』『ケビン・ロバーツ』と名前が掘られていた。
果樹園が見渡せるこの場所には心地よい風が吹き、グレイの持っていた花束を優しく揺らした。
「これがリリィのお墓?」
「ああ。ケビンはリリィの旦那さんだ。2人はとても仲が良かったから、お墓も並べたんだって。」
「そっか、可愛いお墓だね。…リリィ、本当に死んじゃったんだね。」
グレイは花束を握りしめた。ルイはそっとグレイの肩に手を置いた。
「…グレイ、大丈夫か?」
「うん。でも今は1人になりたい。」
「…わかった。少ししたら迎えにくるよ。」
「うん。」
ルイはグレイを残し、楠から離れた。
本音を言えば、グレイの側にいたかったし支えたかった。しかしきっとグレイはリリィと2人で話したいはずだ。
振り返れば、グレイの小さな背中が寂しそうに佇んでいる。
自分がもっと早くグレイを見つけていれば…。
「…ごめん。」
ルイの謝罪の言葉は風に乗って消えていった。
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