純粋で一途な命の恩人を50年放置してたらグレた。

そら。

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100.幸せな朝

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外から小鳥の鳴き声がする。


きっと今日もいい天気なんだろうな。
まだ眠いけど、そろそろ起きなきゃ…。

グレイは重い瞼をゆっくり開けた。
目の前にはグレイを抱きしめて眠っている裸のルイがいた。

初めて出会った頃は竜人貴族の象徴のような長い髪は、今は短くなりルイの目に少しかかっている。
グレイはそっと手を伸ばし髪をかきあげた。
長い睫毛に形が良く品のある鼻と口。

昨日、この口でいろんなところにキスをされたんだ。

「~~~っ!」

グレイは昨晩の出来事を思い出し、頭から湯気が出そうなくらい真っ赤になった。

夜が明けるまで愛し合っていたせいで、ひどく疲れたはずなのに心も体もすごく満たされている。

人生でこんなに幸せな朝を迎えられたことに感動すら覚える。

ルイがまだ寝ていることを確認したグレイはそっとルイに抱きついた。胸に耳を当てれば、ルイの鼓動が聞こえてくる。

ルイの右腕には大きな古傷が残っている。
それは魔王と戦った時の傷だった。
ルイは普段平気な顔をしているが、きっとまだ痛むはずだ。

俺にもっと魔力があれば完治させられたのかな…。

グレイはやるせない気持ちになりながら、ルイの古傷にそっと触れた。

するとルイの腕に力が入り、グレイはルイの胸の中にすっぽりと引き込まれた。

「…ん、おはよ。体は大丈夫?」

ルイはまだ眠そうな声でグレイに聞いた。

「…はよ。多分大丈夫…。」

「良かった。今日はゆっくり休むといい。
…あー、もう朝か。このままグレイと寝ていたいよ。離れたくない。」

ルイはグレイのおでこにキスをした。

「…甘えたこと言うな。今日も仕事に行くんだろ?準備しなくていいのか?」

「うん、準備するよ。でもその前に…。」

「んっ…!」

グレイに深く長いキスをした。
唇を離したルイはグレイを見つめ、優しく微笑む。

「グレイのおかげで人生で1番幸せな朝を迎えられた。心も体もすごく満たされてる気分だ。今日も愛してる。」

「ーっ!!」

相変わらず激甘なルイの言動に、グレイは言葉を失い真っ赤になる。

しかもグレイと同じ気持ちだった事が嬉しくて、また涙が出そうになる。

その様子を見たルイは更に目尻を下げて微笑んだ。

「ふふ、真っ赤だ。可愛い。」

「も、も、もういいからっ!早く仕事に行けよ!!」

そう言ってグレイはルイを突き飛ばした。

ー…あ、またやっちゃった。

またひどい態度をとってしまった。

それでもルイは嬉しそうだったが、グレイは相変わらず素直になれない自分にうんざりした。

ー…ちゃんと素直な気持ちを伝えなきゃ。


その後2人で朝食を食べ、ルイは出掛ける準備を終わらせた。
ベッドの中ではボサボサだった髪はきれいにセットされ、シワひとつないスーツを着こなしている。寝不足のくせに顔色は良く色気さえ漂う。

ー…きっとモテるんだろうな。

グレイの心にジワっと小さく不安が広がる。


「じゃあ、行ってくる。何かあればすぐに連絡してくれ。」

ルイが部屋から出ようとした時、グレイは勇気を出して腕を掴んだ。

「…。」

「グレイ、どうしたんだ?」

下を向くグレイが心配になったルイはしゃがんで顔を覗き込むとネクタイを引っ張られた。


ちゅ。

「無理しなくていいけど、早く帰ってこいよ。…俺だって離れたくないんだ。じゃ、いってらっしゃい。」

そう言ってグレイはすぐにドアを閉めてしまった。

不意打ちにキスとデレの攻撃を受けたルイは1人廊下で悶絶した。
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