95 / 135
94.愛しい存在
しおりを挟む
今から数時間前、ルイが帰宅すると部屋にグレイとルーフはいなかった。執事からルーフの手紙を預かっていると渡された。
『グレイとシーラの店で飲んでくるから心配するな。まあ、グレイがお持ち帰りされても責任はとらないけどな。ガハハ。』
ルイはルーフの手紙を破り捨て、シーラの店に向かった。
シーラの店に着きドアノブに手をかけると、中からは陽気な笑い声が聞こえてきた。ルイは急に怖くなった。
今のグレイは私の事を好きじゃない。
むしろ拒絶されている。
もしかしたら、ルイのいない場所で心置きなく楽しんでいるかもしれない。
シーラの店には血液パックを扱う魔女もいるからそれを飲んでいるかもしれないし、誰かから血を貰っているかもしれない。
気の合う人が見つかって、2人で楽しく飲んでいるかもしれないし、そのままどこかに行くかもしれない。
「はぁー…。呼ばれてもない私が現れたら迷惑だよな…。」
ルイはドアノブから手を離し、入口の前から離れた。
やっぱり帰ろう。
せっかく自由になれたグレイの行動を制限することはしたくない。
でもきっと目の前で知らない奴とグレイが仲良く飲んでいたらきっと連れて帰ってきてしまう。
体調が良くなるまではルイの屋敷で過ごす事を約束してくれた。今日はどこかに泊まったとしても、きっと戻って来てくれるだろうし…。
誰かがグレイとホテルへ行く想像をすると胸が苦しくなった。すぐにでも自分のところへ帰ってきて欲しい。やっぱり今すぐにでも連れ戻したい。
帰ろうとした足はなかなか動かず、立ち尽くしているとカランカラン、と店の扉が開く音がした。
顔を上げればグレイが飛び立とうと羽をパタパタと広げている。
「どこに行くんだ?」
ルイは思い切って声を掛けた。
グレイはびっくりした顔をしてから目線を逸らし「お前の屋敷に帰るんだよ。」と言って自分の鼻を掻いた。
ルイは嬉しくてグレイを思い切り抱きしめたくなった。でもきっと嫌がると思い、なんとか我慢した。
「じゃあ一緒に帰ろう。執事からお前たちがシーラの店に行ったと聞いて迎えにきたんだ。邪魔したら悪いとは思ったんだけど…。」
なんだか勝手に言い訳をしてるな、と恥ずかしくなり、歯切れの悪い話し方をした。
「ルイは邪魔じゃないよ。それより早く屋敷へ帰ろう。…血をくれるんだろ?」
「ーっ!!」
ルイはもう我慢できず思いきりグレイに抱き付いた。
「うわっ!急になにするんだよっ!」
グレイがバタバタと暴れたが今は離したくない。
「ありがとう、グレイ。あげるよ。私の血なんかいくらでもあげる。だから一緒に帰ろう。」
「…うん。」
グレイが小さく返事をした。
ああ、なんて可愛いんだ。
ちょっとした言動でルイの気持ちを掻き乱し、最後は必ず幸せな気持ちにしてくれる。
可愛くて愛しい大切な存在だ。
自室に戻るとルイはグレイを膝に乗せ向き合ってソファに座った。
「なに、この格好。恥ずかしいんだけど…。」
グレイは恥ずかしそうに少し呆れながら言った。
「この体勢の方が血を飲みやすいだろ。ほら、好きなだけ飲んでくれ。」
ルイはシャツの襟を広げた。
グレイはドキドキしながら首筋に顔を近づけると、痣が残っていた。
「あ、前に噛んだところ、痣になってるな。この間は急に噛み付いてごめん…。」
「全然いいさ。むしろグレイが付けた痕は一生残しておきたいくらいだ。」
ルイは嬉しそうに、ふふっと笑う。
「よくそんな恥ずかしい事言えるな…。じゃあ噛むぞ?」
「ああ、好きなだけどうぞ。」
首筋をペロリと舐められた後、チクリと痛みが走る。
ああ、痛みさえ愛おしい。
ルイはこの時間が一生続いて欲しいと願った。
『グレイとシーラの店で飲んでくるから心配するな。まあ、グレイがお持ち帰りされても責任はとらないけどな。ガハハ。』
ルイはルーフの手紙を破り捨て、シーラの店に向かった。
シーラの店に着きドアノブに手をかけると、中からは陽気な笑い声が聞こえてきた。ルイは急に怖くなった。
今のグレイは私の事を好きじゃない。
むしろ拒絶されている。
もしかしたら、ルイのいない場所で心置きなく楽しんでいるかもしれない。
シーラの店には血液パックを扱う魔女もいるからそれを飲んでいるかもしれないし、誰かから血を貰っているかもしれない。
気の合う人が見つかって、2人で楽しく飲んでいるかもしれないし、そのままどこかに行くかもしれない。
「はぁー…。呼ばれてもない私が現れたら迷惑だよな…。」
ルイはドアノブから手を離し、入口の前から離れた。
やっぱり帰ろう。
せっかく自由になれたグレイの行動を制限することはしたくない。
でもきっと目の前で知らない奴とグレイが仲良く飲んでいたらきっと連れて帰ってきてしまう。
体調が良くなるまではルイの屋敷で過ごす事を約束してくれた。今日はどこかに泊まったとしても、きっと戻って来てくれるだろうし…。
誰かがグレイとホテルへ行く想像をすると胸が苦しくなった。すぐにでも自分のところへ帰ってきて欲しい。やっぱり今すぐにでも連れ戻したい。
帰ろうとした足はなかなか動かず、立ち尽くしているとカランカラン、と店の扉が開く音がした。
顔を上げればグレイが飛び立とうと羽をパタパタと広げている。
「どこに行くんだ?」
ルイは思い切って声を掛けた。
グレイはびっくりした顔をしてから目線を逸らし「お前の屋敷に帰るんだよ。」と言って自分の鼻を掻いた。
ルイは嬉しくてグレイを思い切り抱きしめたくなった。でもきっと嫌がると思い、なんとか我慢した。
「じゃあ一緒に帰ろう。執事からお前たちがシーラの店に行ったと聞いて迎えにきたんだ。邪魔したら悪いとは思ったんだけど…。」
なんだか勝手に言い訳をしてるな、と恥ずかしくなり、歯切れの悪い話し方をした。
「ルイは邪魔じゃないよ。それより早く屋敷へ帰ろう。…血をくれるんだろ?」
「ーっ!!」
ルイはもう我慢できず思いきりグレイに抱き付いた。
「うわっ!急になにするんだよっ!」
グレイがバタバタと暴れたが今は離したくない。
「ありがとう、グレイ。あげるよ。私の血なんかいくらでもあげる。だから一緒に帰ろう。」
「…うん。」
グレイが小さく返事をした。
ああ、なんて可愛いんだ。
ちょっとした言動でルイの気持ちを掻き乱し、最後は必ず幸せな気持ちにしてくれる。
可愛くて愛しい大切な存在だ。
自室に戻るとルイはグレイを膝に乗せ向き合ってソファに座った。
「なに、この格好。恥ずかしいんだけど…。」
グレイは恥ずかしそうに少し呆れながら言った。
「この体勢の方が血を飲みやすいだろ。ほら、好きなだけ飲んでくれ。」
ルイはシャツの襟を広げた。
グレイはドキドキしながら首筋に顔を近づけると、痣が残っていた。
「あ、前に噛んだところ、痣になってるな。この間は急に噛み付いてごめん…。」
「全然いいさ。むしろグレイが付けた痕は一生残しておきたいくらいだ。」
ルイは嬉しそうに、ふふっと笑う。
「よくそんな恥ずかしい事言えるな…。じゃあ噛むぞ?」
「ああ、好きなだけどうぞ。」
首筋をペロリと舐められた後、チクリと痛みが走る。
ああ、痛みさえ愛おしい。
ルイはこの時間が一生続いて欲しいと願った。
3
お気に入りに追加
640
あなたにおすすめの小説


主人公のライバルポジにいるようなので、主人公のカッコ可愛さを特等席で愛でたいと思います。
小鷹けい
BL
以前、なろうサイトさまに途中まであげて、結局書きかけのまま放置していたものになります(アカウントごと削除済み)タイトルさえもうろ覚え。
そのうち続きを書くぞ、の意気込みついでに数話分投稿させていただきます。
先輩×後輩
攻略キャラ×当て馬キャラ
総受けではありません。
嫌われ→からの溺愛。こちらも面倒くさい拗らせ攻めです。
ある日、目が覚めたら大好きだったBLゲームの当て馬キャラになっていた。死んだ覚えはないが、そのキャラクターとして生きてきた期間の記憶もある。
だけど、ここでひとつ問題が……。『おれ』の推し、『僕』が今まで嫌がらせし続けてきた、このゲームの主人公キャラなんだよね……。
え、イジめなきゃダメなの??死ぬほど嫌なんだけど。絶対嫌でしょ……。
でも、主人公が攻略キャラとBLしてるところはなんとしても見たい!!ひっそりと。なんなら近くで見たい!!
……って、なったライバルポジとして生きることになった『おれ(僕)』が、主人公と仲良くしつつ、攻略キャラを巻き込んでひっそり推し活する……みたいな話です。
本来なら当て馬キャラとして冷たくあしらわれ、手酷くフラれるはずの『ハルカ先輩』から、バグなのかなんなのか徐々に距離を詰めてこられて戸惑いまくる当て馬の話。
こちらは、ゆるゆる不定期更新になります。
Switch!〜僕とイケメンな地獄の裁判官様の溺愛異世界冒険記〜
天咲 琴葉
BL
幼い頃から精霊や神々の姿が見えていた悠理。
彼は美しい神社で、家族や仲間達に愛され、幸せに暮らしていた。
しかし、ある日、『燃える様な真紅の瞳』をした男と出逢ったことで、彼の運命は大きく変化していく。
幾重にも襲い掛かる運命の荒波の果て、悠理は一度解けてしまった絆を結び直せるのか――。
運命に翻弄されても尚、出逢い続ける――宿命と絆の和風ファンタジー。

【完結】ぎゅって抱っこして
かずえ
BL
幼児教育学科の短大に通う村瀬一太。訳あって普通の高校に通えなかったため、働いて貯めたお金で二年間だけでもと大学に入学してみたが、学費と生活費を稼ぎつつ学校に通うのは、考えていたよりも厳しい……。
でも、頼れる者は誰もいない。
自分で頑張らなきゃ。
本気なら何でもできるはず。
でも、ある日、金持ちの坊っちゃんと心の中で呼んでいた松島晃に苦手なピアノの課題で助けてもらってから、どうにも自分の心がコントロールできなくなって……。
【完結・ルート分岐あり】オメガ皇后の死に戻り〜二度と思い通りにはなりません〜
ivy
BL
魔術師の家門に生まれながら能力の発現が遅く家族から虐げられて暮らしていたオメガのアリス。
そんな彼を国王陛下であるルドルフが妻にと望み生活は一変する。
幸せになれると思っていたのに生まれた子供共々ルドルフに殺されたアリスは目が覚めると子供の頃に戻っていた。
もう二度と同じ轍は踏まない。
そう決心したアリスの戦いが始まる。

ボクが追放されたら飢餓に陥るけど良いですか?
音爽(ネソウ)
ファンタジー
美味しい果実より食えない石ころが欲しいなんて、人間て変わってますね。
役に立たないから出ていけ?
わかりました、緑の加護はゴッソリ持っていきます!
さようなら!
5月4日、ファンタジー1位!HOTランキング1位獲得!!ありがとうございました!
愛していた王に捨てられて愛人になった少年は騎士に娶られる
彩月野生
BL
湖に落ちた十六歳の少年文斗は異世界にやって来てしまった。
国王と愛し合うようになった筈なのに、王は突然妃を迎え、文斗は愛人として扱われるようになり、さらには騎士と結婚して子供を産めと強要されてしまう。
王を愛する気持ちを捨てられないまま、文斗は騎士との結婚生活を送るのだが、騎士への感情の変化に戸惑うようになる。
(誤字脱字報告は不要)
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる