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87.雨と涙
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寝室から出たルイはソファに倒れ込んだ。
「大嫌いかー…。」
その一言がこんなに傷付く言葉だとは思わなかった。気持ちが沈んで力が出ない。
悲しくて辛くて消えたくなる。
「昔私もグレイに対して“嫌いだ”と言ってしまったが、グレイはこんな気持ちだったのかな…。」
ルイは右手を天井に伸ばした。
魔王との戦いで一度切断された右腕は、グレイがいなければ失っていただろう。
未だに痛みを感じる時もあるが、同時にグレイの事を思い出し今では愛しい痛みに変わっていた。
もしグレイが私の元を離れたいのなら、その時は快く手放すべきだ。
嫌がるグレイを無理矢理そばに置いておくことなんてしたくない。
でも、もう二度とグレイを手放したくない。
ルイは上げたままの右手を握りしめた。
カタンー…
寝室の中から小さな物音が聞こえた。
「グレイ?」
ルイはソファから起き上がり寝室の前で声をかけた。
何か落としたのだろうか…。
もう物音は聞こえない。
すでにグレイが寝ているのなら寝室に入るのは失礼な気がして気が引ける。
しかしなんとも言えない胸騒ぎがする。
ルイはノックし扉を開け、声を掛けた。
「グレイ、大丈…」
寝室の窓は開けられていて、外からの風がカーテンを大きく揺らした。
ベッドにグレイの姿はない。
ルイは呆然と立ち尽くした。
グレイは街の明かりを目指し、真っ暗な空を飛んでいた。
すでに20分程度は飛んだだろうか。
昔は何時間でも飛べたのに、もう体が疲れてきてしまった。
少し羽を休めようと、公園の木に留まった。
「はあー…疲れた。」
久しぶりの飛行はやっぱり気持ちいい。
夜風がグレイの頬を優しく撫でる。
「ルイ、心配してるかな…。いや、呆れてるかもな。」
グレイは夜空を見上げた。
今日は曇り空で星は見えない。
もうすぐ雨も降ってきそうだ。
グレイはこれからの事を考えた。
人間の街へ行っても働くあてはない。
ドグライアスへ戻って森で1人で暮らそうか。
孤独かもしれないけど、もう誰かを想う事もなく傷付く事もない静かで平和な暮らしができるかもな。
そんな事を思いながら、ぼーっと休んでいると、ポツリ、ポツリと雨が降り出した。
「わあ、雨がひどくなる前ドグライアスへ向かわなきゃ。」
グレイは再び羽を広げ、飛び立った。
しかし力が入らず、そのまま落下した。
地面はコンクリート。
ぶつかると覚悟し目を閉じた。
潰れるほどの衝撃が来ると思ったが、優しい温もりがグレイを包み込んだ。
目を閉じていても、その温もりとグレイの大好きな匂いで誰が受け止めてくれたのかすぐに分かった。
「危ないじゃないかー…。」
グレイはそっと目を開いた。
ルイだ。
やっぱりルイが受け止めてくれた。
雨は本格的に降り出しルイをどんどん濡らしていく。しかしルイの胸に抱き締められているグレイには一滴の雨もかからない。
「…頼む、グレイ。勝手にいなくならないでくれ。
またお前を失ったと思って死ぬほど苦しかった。俺はお前が好きなんだ。もうこの手を離したくない…。」
ルイが強く抱きしめてくるので、ちょっと苦しいのになんだか心地良い。
ルイを見上げれば、ポタリと雫が落ちてグレイの頬を濡らした。
それは雨ではなくルイの涙だった。
「大嫌いかー…。」
その一言がこんなに傷付く言葉だとは思わなかった。気持ちが沈んで力が出ない。
悲しくて辛くて消えたくなる。
「昔私もグレイに対して“嫌いだ”と言ってしまったが、グレイはこんな気持ちだったのかな…。」
ルイは右手を天井に伸ばした。
魔王との戦いで一度切断された右腕は、グレイがいなければ失っていただろう。
未だに痛みを感じる時もあるが、同時にグレイの事を思い出し今では愛しい痛みに変わっていた。
もしグレイが私の元を離れたいのなら、その時は快く手放すべきだ。
嫌がるグレイを無理矢理そばに置いておくことなんてしたくない。
でも、もう二度とグレイを手放したくない。
ルイは上げたままの右手を握りしめた。
カタンー…
寝室の中から小さな物音が聞こえた。
「グレイ?」
ルイはソファから起き上がり寝室の前で声をかけた。
何か落としたのだろうか…。
もう物音は聞こえない。
すでにグレイが寝ているのなら寝室に入るのは失礼な気がして気が引ける。
しかしなんとも言えない胸騒ぎがする。
ルイはノックし扉を開け、声を掛けた。
「グレイ、大丈…」
寝室の窓は開けられていて、外からの風がカーテンを大きく揺らした。
ベッドにグレイの姿はない。
ルイは呆然と立ち尽くした。
グレイは街の明かりを目指し、真っ暗な空を飛んでいた。
すでに20分程度は飛んだだろうか。
昔は何時間でも飛べたのに、もう体が疲れてきてしまった。
少し羽を休めようと、公園の木に留まった。
「はあー…疲れた。」
久しぶりの飛行はやっぱり気持ちいい。
夜風がグレイの頬を優しく撫でる。
「ルイ、心配してるかな…。いや、呆れてるかもな。」
グレイは夜空を見上げた。
今日は曇り空で星は見えない。
もうすぐ雨も降ってきそうだ。
グレイはこれからの事を考えた。
人間の街へ行っても働くあてはない。
ドグライアスへ戻って森で1人で暮らそうか。
孤独かもしれないけど、もう誰かを想う事もなく傷付く事もない静かで平和な暮らしができるかもな。
そんな事を思いながら、ぼーっと休んでいると、ポツリ、ポツリと雨が降り出した。
「わあ、雨がひどくなる前ドグライアスへ向かわなきゃ。」
グレイは再び羽を広げ、飛び立った。
しかし力が入らず、そのまま落下した。
地面はコンクリート。
ぶつかると覚悟し目を閉じた。
潰れるほどの衝撃が来ると思ったが、優しい温もりがグレイを包み込んだ。
目を閉じていても、その温もりとグレイの大好きな匂いで誰が受け止めてくれたのかすぐに分かった。
「危ないじゃないかー…。」
グレイはそっと目を開いた。
ルイだ。
やっぱりルイが受け止めてくれた。
雨は本格的に降り出しルイをどんどん濡らしていく。しかしルイの胸に抱き締められているグレイには一滴の雨もかからない。
「…頼む、グレイ。勝手にいなくならないでくれ。
またお前を失ったと思って死ぬほど苦しかった。俺はお前が好きなんだ。もうこの手を離したくない…。」
ルイが強く抱きしめてくるので、ちょっと苦しいのになんだか心地良い。
ルイを見上げれば、ポタリと雫が落ちてグレイの頬を濡らした。
それは雨ではなくルイの涙だった。
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