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79.安堵と不安
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グレイは目が覚めると見知らぬ場所にいた。
白い天井にフカフカな広いベッド。
大きな窓にはレースカーテンから外の光が柔らかく差し込む。
鳥たちの囀りだけが聞こえる静かな空間。
ここはどこだー…。
ああ、もしかしたら天国かもしれない。
俺はついに死んだのか。
魔族でも天国に行けるんだなぁ。
ゆっくり寝返りをすると隣にはルイが眠っていた。
ルイの頬には長いまつ毛の影が落ちている。
きれいな顔だなぁー…。
グレイが無意識に手を伸ばし、頬を触ろうとするとルイの目が開いた。
澄んだ青い瞳は日の光が入り込みより美しい。
やはり夜明けの空のように煌めいている。
「…グレイ?」
まだ寝起きでぼんやりしていたルイの瞳孔がぱっと開いた。
「グレイっ!良かった…、目が覚めたんだな!」
ルイの胸元辺りに優しく引き寄せらた。
ルイの温かい体温がじんわり伝わってくる。
トクン、トクンーとルイの心臓の音も聞こえてきた。
グレイは不思議に思った。
妙にリアルだ。
天国はそういうものなのか?
レースカーテンが風でめくれて直射日光がグレイを差した。
「ーっ!!」
直射日光に弱いグレイは痛みと熱さで現実に引き戻された。
「グレイ!?大丈夫か!?
ああ、お前は日の光が苦手なのか…。痛かったよな。気付かなかくてごめん。遮光カーテンが必要だな。」
ルイはすぐに日の当たった箇所に治癒魔法をかけ治した。
そしてまたすぐグレイを引き寄せ抱きしめる。
「会いたかった…、グレイ。遅くなってごめんな。50年も経ってしまったがお前に会いに来たんだ。」
キィーッキィー!!
一気に目が覚めたグレイは叫び、ルイから逃げようとした。
ここはどこだ!?
何でルイがいるんだ!?
俺はまだ生きてるのか!?
体が…体が動かない!!
パニックになったグレイはキィキィと鳴きながら暴れ回る。
「グレイ!どうしたんだ!?まだそんなに動いたらダメだ。」
グレイの爪がルイの頬に当たり血が流れる。
久しぶりの血の匂いに頭がグラッとする。
飲みたい…。
欲しい…。
血をよこせ…。
グレイはルイの首元に思い切り噛み付いた。
「ーっ!!」
ルイの体が一瞬強張ったが、すぐにグレイの背中を優しく撫でながらグレイの好きなようにさせた。
温かく新鮮な血液が体に染み渡る。
しばらくすると急激に眠くなり、グレイはそのままパタリと眠ってしまった。
ルイは首元に噛み付いたまま寝てしまったグレイを複雑な思いでそっとベッドへ戻した。
グレイを見つけた後、大量の魔力を流しても目を覚まさなかった。
ルーフに「そのうち目を覚ますから大丈夫だ」と言われ、とりあえずルイの屋敷に連れてきた。
それから10日経ってもグレイは眠ったままだった。
このまま目を覚さないんじゃないかと不安になりながら毎日声をかけて看病を続けた。
グレイが目を覚ました時は安堵の涙が出た。
しかし別の心配事が増えた。
未だコウモリ姿のグレイは人の言葉を発しなかった。
何かを叫んでいたが、それはコウモリの鳴き声だった。
弱体化し力も言葉も失った魔族たちと同じように、このまま一生コウモリの姿なのだろうか。
錯乱状態のグレイに噛み付かれた事も気になる。
ルイはグレイに噛まれた首元を触った。
グレイのためならいくらでも血を与えたい。
しかし本能のまま誰にでも襲うようなら収容施設に送らなければならない。
昔のグレイに戻って欲しい。
だが、今のグレイにしてしまったのは自分のせいだ。
グレイは目が覚めた時、どんな気持ちだったのだろう。
戸惑いか、恐怖か、苦しみか…。
どうか次はグレイが穏やかな気持ちで目が覚ませるよう、グレイの頬に祈りのキスをした。
白い天井にフカフカな広いベッド。
大きな窓にはレースカーテンから外の光が柔らかく差し込む。
鳥たちの囀りだけが聞こえる静かな空間。
ここはどこだー…。
ああ、もしかしたら天国かもしれない。
俺はついに死んだのか。
魔族でも天国に行けるんだなぁ。
ゆっくり寝返りをすると隣にはルイが眠っていた。
ルイの頬には長いまつ毛の影が落ちている。
きれいな顔だなぁー…。
グレイが無意識に手を伸ばし、頬を触ろうとするとルイの目が開いた。
澄んだ青い瞳は日の光が入り込みより美しい。
やはり夜明けの空のように煌めいている。
「…グレイ?」
まだ寝起きでぼんやりしていたルイの瞳孔がぱっと開いた。
「グレイっ!良かった…、目が覚めたんだな!」
ルイの胸元辺りに優しく引き寄せらた。
ルイの温かい体温がじんわり伝わってくる。
トクン、トクンーとルイの心臓の音も聞こえてきた。
グレイは不思議に思った。
妙にリアルだ。
天国はそういうものなのか?
レースカーテンが風でめくれて直射日光がグレイを差した。
「ーっ!!」
直射日光に弱いグレイは痛みと熱さで現実に引き戻された。
「グレイ!?大丈夫か!?
ああ、お前は日の光が苦手なのか…。痛かったよな。気付かなかくてごめん。遮光カーテンが必要だな。」
ルイはすぐに日の当たった箇所に治癒魔法をかけ治した。
そしてまたすぐグレイを引き寄せ抱きしめる。
「会いたかった…、グレイ。遅くなってごめんな。50年も経ってしまったがお前に会いに来たんだ。」
キィーッキィー!!
一気に目が覚めたグレイは叫び、ルイから逃げようとした。
ここはどこだ!?
何でルイがいるんだ!?
俺はまだ生きてるのか!?
体が…体が動かない!!
パニックになったグレイはキィキィと鳴きながら暴れ回る。
「グレイ!どうしたんだ!?まだそんなに動いたらダメだ。」
グレイの爪がルイの頬に当たり血が流れる。
久しぶりの血の匂いに頭がグラッとする。
飲みたい…。
欲しい…。
血をよこせ…。
グレイはルイの首元に思い切り噛み付いた。
「ーっ!!」
ルイの体が一瞬強張ったが、すぐにグレイの背中を優しく撫でながらグレイの好きなようにさせた。
温かく新鮮な血液が体に染み渡る。
しばらくすると急激に眠くなり、グレイはそのままパタリと眠ってしまった。
ルイは首元に噛み付いたまま寝てしまったグレイを複雑な思いでそっとベッドへ戻した。
グレイを見つけた後、大量の魔力を流しても目を覚まさなかった。
ルーフに「そのうち目を覚ますから大丈夫だ」と言われ、とりあえずルイの屋敷に連れてきた。
それから10日経ってもグレイは眠ったままだった。
このまま目を覚さないんじゃないかと不安になりながら毎日声をかけて看病を続けた。
グレイが目を覚ました時は安堵の涙が出た。
しかし別の心配事が増えた。
未だコウモリ姿のグレイは人の言葉を発しなかった。
何かを叫んでいたが、それはコウモリの鳴き声だった。
弱体化し力も言葉も失った魔族たちと同じように、このまま一生コウモリの姿なのだろうか。
錯乱状態のグレイに噛み付かれた事も気になる。
ルイはグレイに噛まれた首元を触った。
グレイのためならいくらでも血を与えたい。
しかし本能のまま誰にでも襲うようなら収容施設に送らなければならない。
昔のグレイに戻って欲しい。
だが、今のグレイにしてしまったのは自分のせいだ。
グレイは目が覚めた時、どんな気持ちだったのだろう。
戸惑いか、恐怖か、苦しみか…。
どうか次はグレイが穏やかな気持ちで目が覚ませるよう、グレイの頬に祈りのキスをした。
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