上 下
75 / 135

74.宴会

しおりを挟む
ドグライアスに着いたルイは孤児院に寄った。

「あ!ルイだー!」

ルイを見つけた魔族の子供たちが嬉しそうに駆け寄ってくる。
ルイは時間さえあれば顔を出すので、すっかり顔馴染みになっている。

「久しぶり。みんな元気にしてたか?困った事も無かったか?」

「元気だったよ!見て、魔法使えるようになったんだよ!」

「私は人間の姿になれるようになったの!見てて!」

「ルイ!俺と手合わせしようぜ!」

子供たちはルイと話したくて一斉に話し出す。
ルイもそんな子供たちが可愛くて長旅の疲れも吹き飛んだ。

「はいはい、みなさん!1人ずつお話ししないとルイさん困ってますよ。順番にお話しましょうねー。」

教養教育で派遣されている竜人のステフが子供たちに声をかけた。
彼女は800年以上竜人学校に勤めていたベテラン教師で、ルイの恩師でもある。
常に優しく時には厳しく子供たちに寄り添うので魔族の子供たちからも絶大な人気がある。

「ステフ先生、いつもありがとうございます。」

ルイがお礼を言うと、ステフは「気にしないで」と笑った。

ルイは子供たち全員と話をして、終わった時はすでに日は暮れていた。

「じゃあ、私はそろそろ行きますね。近いうちにまた寄ります。」

「ええ、いつも子供たちを気にかけてくれてありがとう。ところでグレイの事だけど、今回も特に情報はないわ。ごめんなさいね。」

情報通のステフにはグレイの話もしていて、何か情報があれば連絡するようにお願いをしている。

しかしグレイの情報は未だに何もない。

「いえ、気にしないでください。また何か情報があればよろしくお願いします。」

ステフと子供達に見送られルイは港町へ戻った。





港の居酒屋ではルイの貿易船の仲間達が既に宴会を始めていた。

「あっ、ルイさん!遅いっすよ!もー俺たち始めてますよ!ほら、ルイさんも飲んでー!」

「ルイさん、おかえりなさーい!会いたかったー!」

ほろ酔いのアークとリオはビールジョッキをルイに渡した。

「ああ、ありがとう。遅くなって悪かった。」

「みんなー!ルインハルトしゃちょー様が到着したぞ!乾杯するぞ~!」

ルイの登場で歓声が上がる。
乗組員だけかと思っていたが多くの令嬢や令息、政府関係もいるようだった。
まあ、人数は多い方が楽しいだろう。

「せーのっ、かんぱーい!!」

竜人、魔族、人間、みんなが一緒に乾杯をした。
種族関係なく楽しそうに騒いでる今の姿は、50年前は想像も出来なかった姿だ。

ルイは自然と笑みが溢れ、ビールを一気に飲み干した。



深夜を過ぎても宴会は続いていた。
ルイは話しかけてくる人々に丁寧な対応していたが流石に疲れてきたので、外の空気でも吸おうと席を立った。


外に出れば心地良い風が頬を撫でる。
夜空には無数の星が輝いている。
しばらく星を眺めていると「よお。」と聞き覚えのある声で話しかけられた。

そこにいたのは銀髪に金色の瞳で褐色の肌をした青年だった。
見覚えのない顔の青年だが、誰かの雰囲気によく似ている。

この声にこの雰囲気…、どこかで…。


「ああ、人間の姿で会うのは初めてか。俺だよ、ルーフだ。」

青年はニヤリと笑った。
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

【完結】神様はそれを無視できない

遊佐ミチル
BL
痩せぎすで片目眼帯。週三程度で働くのがせいっぱいの佐伯尚(29)は、誰が見ても人生詰んでいる青年だ。当然、恋人がいたことは無く、その手の経験も無い。 長年恨んできた相手に復讐することが唯一の生きがいだった。 住んでいたアパートの退去期限となる日を復讐決行日と決め、あと十日に迫ったある日、昨夜の記憶が無い状態で目覚める。 足は血だらけ。喉はカラカラ。コンビニのATMに出向くと爪に火を灯すように溜めてきた貯金はなぜか三桁。これでは復讐の武器購入や交通費だってままならない。 途方に暮れていると、昨夜尚を介抱したという浴衣姿の男が現れて、尚はこの男に江東区の月島にある橋の付近っで酔い潰れていて男に自宅に連れ帰ってもらい、キスまでねだったらしい。嘘だと言い張ると、男はその証拠をバッチリ録音していて、消して欲しいなら、尚の不幸を買い取らせろと言い始める。 男の名は時雨。 職業:不幸買い取りセンターという質屋の店主。 見た目:頭のおかしいイケメン。 彼曰く本物の神様らしい……。

美少年に転生したらヤンデレ婚約者が出来ました

SEKISUI
BL
 ブラック企業に勤めていたOLが寝てそのまま永眠したら美少年に転生していた  見た目は勝ち組  中身は社畜  斜めな思考の持ち主  なのでもう働くのは嫌なので怠惰に生きようと思う  そんな主人公はやばい公爵令息に目を付けられて翻弄される    

公爵に買われた妻Ωの愛と孤独

金剛@キット
BL
オメガバースです。  ベント子爵家長男、フロルはオメガ男性というだけで、実の父に嫌われ使用人以下の扱いを受ける。  そんなフロルにオウロ公爵ディアマンテが、契約結婚を持ちかける。  跡継ぎの子供を1人産めば後は離婚してその後の生活を保障するという条件で。  フロルは迷わず受け入れ、公爵と秘密の結婚をし、公爵家の別邸… 白亜の邸へと囲われる。  契約結婚のはずなのに、なぜか公爵はフロルを運命の番のように扱い、心も身体もトロトロに溶かされてゆく。 後半からハードな展開アリ。  オメガバース初挑戦作なので、あちこち物語に都合の良い、ゆるゆる設定です。イチャイチャとエロを多めに書きたくて始めました♡ 苦手な方はスルーして下さい。

美貌の騎士候補生は、愛する人を快楽漬けにして飼い慣らす〜僕から逃げないで愛させて〜

飛鷹
BL
騎士養成学校に在席しているパスティには秘密がある。 でも、それを誰かに言うつもりはなく、目的を達成したら静かに自国に戻るつもりだった。 しかし美貌の騎士候補生に捕まり、快楽漬けにされ、甘く喘がされてしまう。 秘密を抱えたまま、パスティは幸せになれるのか。 美貌の騎士候補生のカーディアスは何を考えてパスティに付きまとうのか……。 秘密を抱えた二人が幸せになるまでのお話。

ヒロイン不在の異世界ハーレム

藤雪たすく
BL
男にからまれていた女の子を助けに入っただけなのに……手違いで異世界へ飛ばされてしまった。 神様からの謝罪のスキルは別の勇者へ授けた後の残り物。 飛ばされたのは神がいなくなった混沌の世界。 ハーレムもチート無双も期待薄な世界で俺は幸せを掴めるのか?

親友と同時に死んで異世界転生したけど立場が違いすぎてお嫁さんにされちゃった話

gina
BL
親友と同時に死んで異世界転生したけど、 立場が違いすぎてお嫁さんにされちゃった話です。 タイトルそのままですみません。

沈黙の護衛騎士と盲目の聖女

季邑 えり
恋愛
 先見の聖女と呼ばれるユリアナのところに護衛騎士が来た。彼は喋ることができず、鈴の音で返事をする。目の見えないユリアナは次第に彼に心を開くようになり、二人は穏やかな日々を過ごす。  だが約束の十日間が迫った頃、ユリアナは彼の手に触れた瞬間に先見をする。彼の正体はユリアナが目の光を失う代償を払って守った、かつて婚約する寸前であった第二王子、――レオナルドだった。  愛する人を救った代償に盲目となった令嬢と、彼女を犠牲にしたことを後悔しながらも一途に愛し続ける王子の純愛物語。

王子様のご帰還です

小都
BL
目が覚めたらそこは、知らない国だった。 平凡に日々を過ごし無事高校3年間を終えた翌日、何もかもが違う場所で目が覚めた。 そして言われる。「おかえりなさい、王子」と・・・。 何も知らない僕に皆が強引に王子と言い、迎えに来た強引な婚約者は・・・男!? 異世界転移 王子×王子・・・? こちらは個人サイトからの再録になります。 十年以上前の作品をそのまま移してますので変だったらすみません。

処理中です...