64 / 135
63.崩落
しおりを挟む
グレイが魔石の採掘作業をするようになってすでに7年の月日が流れた。
暗い洞窟の中でグレイはジルドにいきなり殴られた。
「おい、魔石の量が減ってるじゃねぇか!ちゃんと働けよ!」
最近のジルドはかなりイライラしている。
何かにつけて怒鳴ったり殴ったりしてくる。
少し前にトトから聞いた話では、ここしばらく竜人との戦争で魔族軍は劣勢が続いているらしい。
今までトトが魔石の回収に来ていたが、近頃はジルド自らやって来て魔石を回収がてらグレイに暴力を振るって憂さ晴らしをしていくのだ。しかしグレイもやられっぱなしでは気が済まない。
殴られた頬を拭ってジルドを睨みつけた。
「もう7年も採掘してるんだ、そりゃ無くなるよ!魔石だって無限にあるわけじゃない。そんな事バカでも分かるだろ!?」
グレイが言い返すとジルドの眼光が鋭く光った。
「…何の役にも立たねぇ雑用が生意気な口利くんじゃねぇよ!!」
ジルドは何度もグレイを蹴りつけ、動かなくなったグレイに唾を吐き、「お前は黙って魔石集めてろ。」と言って去っていった。
グレイはジルドがいなくなったのを確認すると近くに転がっていた魔石で治癒魔法をかけた。
「クソっ、ジルドのやつ!俺はサンドバッグじゃないっつーの。」
蹴られた怪我が治っても一方的に蹴られたことが悔しくて涙が出そうになる。
毎日寒い暗闇でたった1人で採掘作業をしていると心も擦れていく。
グレイは心が折れそうな時、今だにルイの言葉を思い出す。
ー…「絶対また会いにくる!どこにいてもお前を探し出すから元気でいてくれ!」
グレイはゆっくり立ち上がり、光が差し込む洞窟の入り口へ移動した。
「ルイ、俺はここにいるよ。俺はここから出られないんだ。だから早く俺を見つけてよ…。」
グレイは祈るように呟いた。
その時、見上げた空に激しい光が走り、地下から突き上げてくるような地響きと共に爆発音が鳴り響いた。
そして大地が揺れ洞窟の入り口にある岩が崩れ始めた。
「え!?なになに!?く、崩れる…!」
グレイは慌てて洞窟の奥へ逃げようとしたが洞窟の中もどんどん崩れはじめ、逃げる場所がなくなった。
「ど、どうしよう…!あ、魔石!」
転がり落ちてきた魔石を拾いバリアを張った。
メキメキッと木が割れるような音が聞こえると洞窟の入り口から大量の瓦礫が落ちてきた。
これって時計台の建物だ!
建物が崩れているのか!?
入り口が埋まったらどうしよう!
グレイは怖くなり目を閉じ、不安になりながらもバリアの中で揺れが収まるのを待った。
長い時間、爆発音がしたり、空に激しい光が飛び散ったりしていた。
どのくらいの時間が過ぎただろうか。
周りが静かになり、グレイが目を開けるとバリアの周りは岩と瓦礫で完全に埋まってしまっていた。
恐る恐るバリアを解くと少し石が崩れる程度でグレイのいるスペースは空洞が保っていた。
見上げれば崩れた岩の隙間から僅かに懐かしい青色が見える。
「あれって空…?」
それは地上に出た時に見た空と同じ色だった。
ドグライアスは魔王様の結界魔法で年中薄暗い空だったのに…。
もしかして…。
グレイは嫌な予感がした。
「魔王様が死んだのか…?」
だとしたら先ほどの崩落はドグライアスの結界が消えたことが原因なのではないだろうか。
いつもグレイが手入れをした庭園を「きれいだね。」と褒めてくれた魔王。
表情は分からなかったが、落ち着いた声のトーンはグレイを幸せな気持ちにさせてくれた。
怪我をした魔獣を保護していると噂があった魔王。
グレイはいつかその噂が本当かどうか魔王に聞きたいと思っていた。
魔王様が死んだなんて思いたくない。
外に出て確かめなくちゃ。
「誰かー!!助けてー!!ここから出してー!!」
もし結界が消えたのならルイが会いに来てくれるかもしれない。
ルイなら俺を助けてくれるばず。
「ルイー!俺はここだー!!助けてくれー!!!」
グレイは声が枯れるほど何度も何度も叫び続けた。
何度も何度も。
何年も何十年も。
声は枯れ、人間の姿も保てなくなったグレイは本来の姿のコウモリになっていた。
助けを呼ぶことを諦め、岩の隙間から空を見上げるだけの日々。
寒かった洞窟の中の温度さえ今では心地良い。
不思議とお腹は減らず、餓死することもない。
ただ寝て起きての繰り返し。
でも最近は眠っている時間の方が増えてきた。
ルイはもう俺の事忘れちゃったのかな…。
グレイは一粒の涙を流し、深い眠りについた。
暗い洞窟の中でグレイはジルドにいきなり殴られた。
「おい、魔石の量が減ってるじゃねぇか!ちゃんと働けよ!」
最近のジルドはかなりイライラしている。
何かにつけて怒鳴ったり殴ったりしてくる。
少し前にトトから聞いた話では、ここしばらく竜人との戦争で魔族軍は劣勢が続いているらしい。
今までトトが魔石の回収に来ていたが、近頃はジルド自らやって来て魔石を回収がてらグレイに暴力を振るって憂さ晴らしをしていくのだ。しかしグレイもやられっぱなしでは気が済まない。
殴られた頬を拭ってジルドを睨みつけた。
「もう7年も採掘してるんだ、そりゃ無くなるよ!魔石だって無限にあるわけじゃない。そんな事バカでも分かるだろ!?」
グレイが言い返すとジルドの眼光が鋭く光った。
「…何の役にも立たねぇ雑用が生意気な口利くんじゃねぇよ!!」
ジルドは何度もグレイを蹴りつけ、動かなくなったグレイに唾を吐き、「お前は黙って魔石集めてろ。」と言って去っていった。
グレイはジルドがいなくなったのを確認すると近くに転がっていた魔石で治癒魔法をかけた。
「クソっ、ジルドのやつ!俺はサンドバッグじゃないっつーの。」
蹴られた怪我が治っても一方的に蹴られたことが悔しくて涙が出そうになる。
毎日寒い暗闇でたった1人で採掘作業をしていると心も擦れていく。
グレイは心が折れそうな時、今だにルイの言葉を思い出す。
ー…「絶対また会いにくる!どこにいてもお前を探し出すから元気でいてくれ!」
グレイはゆっくり立ち上がり、光が差し込む洞窟の入り口へ移動した。
「ルイ、俺はここにいるよ。俺はここから出られないんだ。だから早く俺を見つけてよ…。」
グレイは祈るように呟いた。
その時、見上げた空に激しい光が走り、地下から突き上げてくるような地響きと共に爆発音が鳴り響いた。
そして大地が揺れ洞窟の入り口にある岩が崩れ始めた。
「え!?なになに!?く、崩れる…!」
グレイは慌てて洞窟の奥へ逃げようとしたが洞窟の中もどんどん崩れはじめ、逃げる場所がなくなった。
「ど、どうしよう…!あ、魔石!」
転がり落ちてきた魔石を拾いバリアを張った。
メキメキッと木が割れるような音が聞こえると洞窟の入り口から大量の瓦礫が落ちてきた。
これって時計台の建物だ!
建物が崩れているのか!?
入り口が埋まったらどうしよう!
グレイは怖くなり目を閉じ、不安になりながらもバリアの中で揺れが収まるのを待った。
長い時間、爆発音がしたり、空に激しい光が飛び散ったりしていた。
どのくらいの時間が過ぎただろうか。
周りが静かになり、グレイが目を開けるとバリアの周りは岩と瓦礫で完全に埋まってしまっていた。
恐る恐るバリアを解くと少し石が崩れる程度でグレイのいるスペースは空洞が保っていた。
見上げれば崩れた岩の隙間から僅かに懐かしい青色が見える。
「あれって空…?」
それは地上に出た時に見た空と同じ色だった。
ドグライアスは魔王様の結界魔法で年中薄暗い空だったのに…。
もしかして…。
グレイは嫌な予感がした。
「魔王様が死んだのか…?」
だとしたら先ほどの崩落はドグライアスの結界が消えたことが原因なのではないだろうか。
いつもグレイが手入れをした庭園を「きれいだね。」と褒めてくれた魔王。
表情は分からなかったが、落ち着いた声のトーンはグレイを幸せな気持ちにさせてくれた。
怪我をした魔獣を保護していると噂があった魔王。
グレイはいつかその噂が本当かどうか魔王に聞きたいと思っていた。
魔王様が死んだなんて思いたくない。
外に出て確かめなくちゃ。
「誰かー!!助けてー!!ここから出してー!!」
もし結界が消えたのならルイが会いに来てくれるかもしれない。
ルイなら俺を助けてくれるばず。
「ルイー!俺はここだー!!助けてくれー!!!」
グレイは声が枯れるほど何度も何度も叫び続けた。
何度も何度も。
何年も何十年も。
声は枯れ、人間の姿も保てなくなったグレイは本来の姿のコウモリになっていた。
助けを呼ぶことを諦め、岩の隙間から空を見上げるだけの日々。
寒かった洞窟の中の温度さえ今では心地良い。
不思議とお腹は減らず、餓死することもない。
ただ寝て起きての繰り返し。
でも最近は眠っている時間の方が増えてきた。
ルイはもう俺の事忘れちゃったのかな…。
グレイは一粒の涙を流し、深い眠りについた。
13
お気に入りに追加
640
あなたにおすすめの小説
【完結】番(つがい)でした ~美しき竜人の王様の元を去った番の私が、再び彼に囚われるまでのお話~
tea
恋愛
かつて私を妻として番として乞い願ってくれたのは、宝石の様に美しい青い目をし冒険者に扮した、美しき竜人の王様でした。
番に選ばれたものの、一度は辛くて彼の元を去ったレーアが、番であるエーヴェルトラーシュと再び結ばれるまでのお話です。
ヒーローは普段穏やかですが、スイッチ入るとややドS。
そして安定のヤンデレさん☆
ちょっぴり切ない、でもちょっとした剣と魔法の冒険ありの(私とヒロイン的には)ハッピーエンド(執着心むき出しのヒーローに囚われてしまったので、見ようによってはメリバ?)のお話です。
別サイトに公開済の小説を編集し直して掲載しています。
【短編】乙女ゲームの攻略対象者に転生した俺の、意外な結末。
桜月夜
BL
前世で妹がハマってた乙女ゲームに転生したイリウスは、自分が前世の記憶を思い出したことを幼馴染みで専属騎士のディールに打ち明けた。そこから、なぜか婚約者に対する恋愛感情の有無を聞かれ……。
思い付いた話を一気に書いたので、不自然な箇所があるかもしれませんが、広い心でお読みください。
男子高校生だった俺は異世界で幼児になり 訳あり筋肉ムキムキ集団に保護されました。
カヨワイさつき
ファンタジー
高校3年生の神野千明(かみの ちあき)。
今年のメインイベントは受験、
あとはたのしみにしている北海道への修学旅行。
だがそんな彼は飛行機が苦手だった。
電車バスはもちろん、ひどい乗り物酔いをするのだった。今回も飛行機で乗り物酔いをおこしトイレにこもっていたら、いつのまにか気を失った?そして、ちがう場所にいた?!
あれ?身の危険?!でも、夢の中だよな?
急死に一生?と思ったら、筋肉ムキムキのワイルドなイケメンに拾われたチアキ。
さらに、何かがおかしいと思ったら3歳児になっていた?!
変なレアスキルや神具、
八百万(やおよろず)の神の加護。
レアチート盛りだくさん?!
半ばあたりシリアス
後半ざまぁ。
訳あり幼児と訳あり集団たちとの物語。
〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜
北海道、アイヌ語、かっこ良さげな名前
お腹がすいた時に食べたい食べ物など
思いついた名前とかをもじり、
なんとか、名前決めてます。
***
お名前使用してもいいよ💕っていう
心優しい方、教えて下さい🥺
悪役には使わないようにします、たぶん。
ちょっとオネェだったり、
アレ…だったりする程度です😁
すでに、使用オッケーしてくださった心優しい
皆様ありがとうございます😘
読んでくださる方や応援してくださる全てに
めっちゃ感謝を込めて💕
ありがとうございます💞
愛していた王に捨てられて愛人になった少年は騎士に娶られる
彩月野生
BL
湖に落ちた十六歳の少年文斗は異世界にやって来てしまった。
国王と愛し合うようになった筈なのに、王は突然妃を迎え、文斗は愛人として扱われるようになり、さらには騎士と結婚して子供を産めと強要されてしまう。
王を愛する気持ちを捨てられないまま、文斗は騎士との結婚生活を送るのだが、騎士への感情の変化に戸惑うようになる。
(誤字脱字報告は不要)
精霊の港 飛ばされたリーマン、体格のいい男たちに囲まれる
風見鶏ーKazamidoriー
BL
秋津ミナトは、うだつのあがらないサラリーマン。これといった特徴もなく、体力の衰えを感じてスポーツジムへ通うお年ごろ。
ある日帰り道で奇妙な精霊と出会い、追いかけた先は見たこともない場所。湊(ミナト)の前へ現れたのは黄金色にかがやく瞳をした美しい男だった。ロマス帝国という古代ローマに似た巨大な国が支配する世界で妖精に出会い、帝国の片鱗に触れてさらにはドラゴンまで、サラリーマンだった湊の人生は激変し異なる世界の動乱へ巻きこまれてゆく物語。
※この物語に登場する人物、名、団体、場所はすべてフィクションです。

【完結】国に売られた僕は変態皇帝に育てられ寵妃になった
cyan
BL
陛下が町娘に手を出して生まれたのが僕。後宮で虐げられて生活していた僕は、とうとう他国に売られることになった。
一途なシオンと、皇帝のお話。
※どんどん変態度が増すので苦手な方はお気を付けください。
男装の麗人と呼ばれる俺は正真正銘の男なのだが~双子の姉のせいでややこしい事態になっている~
さいはて旅行社
BL
双子の姉が失踪した。
そのせいで、弟である俺が騎士学校を休学して、姉の通っている貴族学校に姉として通うことになってしまった。
姉は男子の制服を着ていたため、服装に違和感はない。
だが、姉は男装の麗人として女子生徒に恐ろしいほど大人気だった。
その女子生徒たちは今、何も知らずに俺を囲んでいる。
女性に囲まれて嬉しい、わけもなく、彼女たちの理想の王子様像を演技しなければならない上に、男性が女子寮の部屋に一歩入っただけでも騒ぎになる貴族学校。
もしこの事実がバレたら退学ぐらいで済むわけがない。。。
周辺国家の情勢がキナ臭くなっていくなかで、俺は双子の姉が戻って来るまで、協力してくれる仲間たちに笑われながらでも、無事にバレずに女子生徒たちの理想の王子様像を演じ切れるのか?
侯爵家の命令でそんなことまでやらないといけない自分を救ってくれるヒロインでもヒーローでも現れるのか?

ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる