純粋で一途な命の恩人を50年放置してたらグレた。

そら。

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62.お気楽勇者(ルイ視点)

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勇者が現れたと聞いたルイはすぐに神殿に向かった。

これで戦争が終わるかもしれない…。


ルイが『勇者』の存在を知ったのは、モンド王国に保管されている闇魔法に関する1,000年以上前の文献からだった。

ー…闇魔法によって堕ちた世界を救ったのは、異世界から現れた勇者だった。
絶望的な力を持った闇魔法の使い手は、勇者の剣により全て払拭された。
その勇者は神殿より召喚され、世界が平和になるとまた元の世界へ戻っていった…ー

そんな内容の文献には、まるで魔王のような人物に立ち向かうひとりの人間の姿が描かれていた。
それ以外の詳しい情報はなかったが、ルイはモンド王国の神殿に勇者召喚の儀を掛け合ってみた。
すると神官たちからは意外にも簡単に了承を得ることができた。
しかし、大変だったのはそこからだった。

情報が少ないせいで召喚の儀に必要なものが全く分からず、ルイは寝る間も惜しんで『勇者』と『異世界召喚』について情報を集めた。
その情報をもとに神官たちも何度も召喚の儀を行い、失敗を繰り返していた。

そして今回やっと成功したのだ。

ルイが神殿に着くとすでに大勢の人々が集まっていた。
そして人々の中心には勇者と思われる異世界人がいた。

人を掻き分け、勇者に近付こうとすると一人の神官がルイの存在に気が付いた。

「ルインハルト殿!早速お越し下さったんですね!ついに召喚の儀が成功しました!!」

その神官は泣きながらルイに近寄った。

「ああ、そうですね。あなた方の努力のおかげです。これで魔族の暴徒化を止められるかもしれない。彼が『勇者』ですか?」

ルイの目線の先には、人間の青年がぽかんとした表情で座り込んでいた。
黒髪黒目の青年は体格は良い方だが、その体には傷跡などひとつもなく鍛えているようには見えない。
年齢はおそらく20代半ばだろうか…。
優しく穏やかな顔付きが、きっと平和な世界で生きてきたんだろうと思えてしまう。

ルイが想像していた勇者とはかけ離れた印象だが、召喚されてきたという事は勇者に間違いない。

ルイは青年の前に出て、跪いた。

「我が世界へお越し下さいまして厚く御礼申し上げます、勇者殿。」

「うわっ、すげぇイケメン外国人!しかも日本語上手いっすね。
つか、ここってどこ?さっきまで駅前歩いてたはずなんだけど…。つか、勇者って何の話っすか?」

辺りをキョロキョロと見回しながら青年は戸惑っている。

「まずは王宮へ案内致します。詳しい話はその時に。」

ルイはにっこり笑って青年に手を差しのべた。



モンド王国の城へ戻ると国王、司教、そしてルイが同席し『ヤマト』と名乗る勇者に全ての経緯を話した。

「なるほどね。じゃあ俺は異世界転移しちゃったわけだ。こんなゲームみたいなことが自分に起こるとは。すげぇなー。」

「ヤマト様、私たちの世界の都合であなたを召喚してしまい申し訳ありません。魔王の力さえ解決できればすぐに元の世界へ戻れるよう全力を尽くします。もちろんそれなりのお礼もご用意しておりますので、どうかご協力いただけないでしょうか。」

「いいっよ!でも俺、魔法はもちろん剣なんて使えないと思うけど。まっ、何とかなるか!」

ヤマトはニカッと笑った。
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