純粋で一途な命の恩人を50年放置してたらグレた。

そら。

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52.ルイのお守り

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グレイはルイが地上に向かって飛んでいく姿を見送ると、ルイが飛び立っていったバルコニーの頑丈な扉をすぐに閉めた。すると、一斉に城中の扉が閉まった。

これでジルドが来ても時間が稼げる。

グレイが残った理由はこの扉を閉めるためだった。

内側からしか閉める事の出来ないこの扉は、一度閉めるとドグライアス城の全ての扉が閉まる仕組みになっている。
3時間経てば扉はまた開くようになるが、それまではどんな方法を使っても開くことが出来ない。
本来は、城内に侵入した者を外に逃さないための仕掛けだ。
グレイは、この仕掛けを利用してルイを追いかけるジルドを城に閉じ込めてしまえば多少の足止めになるだろうと思ったのだ。


ルイはもう地上へ出たかな。
俺もジルドに見つからない場所に隠れなきゃ。


グレイが移動しようと動いた瞬間、炎を纏った斬撃が飛んできた。
グレイはギリギリ躱すことが出来たが、足に力が入らなくなり膝を突いた。
さっき飲んだ吸血パックの効果が切れたのだ。

「あーあ、あの竜人はもう逃げちまったか。まあ、また捕まえりゃいいか。それより雑用コウモリの分際でずいぶん舐めたマネしてくれたなぁ。ご丁寧に城の扉まで閉めやがって。」

グレイの前に不気味に笑うジルドが現れた。

「別に舐めてない。ルイが好きだから助けただけだ!」

グレイが声を上げるとジルドの蹴りが脇腹に命中した。
グレイはその場で咳き込みながら倒れた。

「ぐぅっ…!!ゲホッゲホッ!!」

「だーかーら、それが舐めてるっつてんだよ。俺の許可なく勝手なことしてんじゃねぇぞ!それに好きになっただぁ?馬鹿じゃねぇの。いつも魔族を下に見ている竜人あいつらをよく好きだなんて言えるな。あいつらは魔族の事をゴミ以下だと思ってるぜ?」

「それはジルドたちが地上で好き勝手に暴れるからだろ!嫌われて当然だ!」

「あのな、破壊と暴力は魔族の性だぞ。暴れて何が悪い。」

「悪いよ!暴れなくったて俺たちは生きていけるだろ?」

「…吸血系魔族がよく言うぜ。俺は綺麗事が一番嫌いだ。」

目付きが怒りへと変わったジルドはグレイの首を掴み持ち上げた。

「っぐ…!」

息が出来ず暴れるグレイの首元には鱗のペンダントが光る。

「あの竜人の鱗か?竜人の鱗は高く売れるらしいぞ。」

そう言ってジルドはペンダントを引きちぎった。

「か、かえ…っせ!」

グレイはペンダントを取り返そうとさらに暴れるが、ジルドはびくともしない。
そしてペンダントを握りしめて楽しそうに笑った。

「まあ、俺は欲がないから興味ないけどな。」

グレイはペンダントを握っていた手に炎を出し鱗を焼き尽くした。

「あっ!!」

監視のための鱗とはいえ、グレイが初めてもらったプレゼントはあっという間に灰になって舞い散った。

ルイから貰った唯一のプレゼントだったのに…。

グレイは悲しさと悔しさで涙が溢れた。

「泣くな、うぜぇ。」

ジルドがさらに手に力を入れた時、ジルドの手下のワシ魔族のトトがやって来た。

「ジルド!こんな所にいたのか!城の扉が閉まっちまってつまんねぇからってサキュバスたちが食堂でストリップショー始めたぞ!見に来いよ!」

「ギャハハッ!なんだそりゃ、面白そうだな!すぐ行くからちょっと待ってろ!」

ジルドは足元に落ちていた鎖をグレイに巻きつけ力任せに柱に括り付けた。

「お前の始末は後でしてやる。おとなしく待ってろ。」

それだけ言い残し、ジルドとトトはその場を後にした。

グレイは鎖から抜けようとコウモリの姿になったがきつく巻かれた鎖からは抜け出すことは出来なかった。

「う…うっ…ルイのお守りが…。」

グレイのすすり泣く声は誰もいない時計台に小さく響き渡った。

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