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49.地下水路
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地下水路は特に目印もなく多くの分けれ道になって巨大迷路のようだった。
しかし、グレイは迷うことなく目的地へ走り続ける。
何十年とはいえ城の掃除をしているだけで、これほど巨大で複雑な水路を全て把握することは簡単じゃないだろう。
「グレイはすごいな。こんな複雑な造りの城内を全て把握しているのか。」
ルイは感心しながら言った。
「す、すごくないだろ!!何十年も毎日掃除してりゃ誰だって覚えるさ!」
前を走るグレイの表情は見れないが、耳が少し赤くなっている。
言葉はぶっきらぼうだが、おそらく照れているのだろう。
ルイは思わず笑みが溢れる。
「いや、すごいよ。尊敬する。」
「…今さらおだてても遅いっての。」
グレイは素直にルイの言葉を聞き入れることが恥ずかしくて、つい嫌な返しをしてしまう。
「本心だよ。信じなくてもいいけど。」
後ろからルイの穏やかな声が聞こえる。
きっと笑っているんだろうな。
本当は振り返ってどんな顔をしているのか見てみたいが、ルイと目が合ったらもっと恥ずかしくなる。
グレイは何も言わず、前を見て走り続けた。
しばらく走ると、人ひとりがやっと通れるほどの細い螺旋階段に着いた。
「しばらく階段を登るけど大丈夫か?」
先ほどより息が上がり、顔色の悪いルイが心配になる。やはりまだ安静が必要だったのだ。
「ああ、大丈夫だよ。」
ルイは笑って見せたが、かなり辛そうだ。
グレイは緊急時用の高濃縮吸血パックを取り出した。
通常の物より魔力と体力も急激に回復させ、すぐに輸血もできる。
しかし摂取した魔族は、効果が切れると一時的に体が動かせなくなる副作用もある。
ただ、輸血した相手にはそういった影響は一切でない。
「…なあ、ルイ、輸血していいか?まだしばらく走らなくちゃいけないし、地上へ行くには高速飛行で結界を突破しなくちゃいけない。ほかの魔族やジルドと鉢合わせて戦う可能性もある。…お前が嫌ならしないけど。」
断られる事を覚悟し、グレイは吸血パックを握りしめた。
「ああ、いいよ。グレイの考えに従う。」
ルイの答えはあっさりしたものだった。
「ほ、本当にいいのか?吸血パックは魔女が錬金したものだから人間の血は使ってないけど、俺が吸収して輸血すれば魔族の血と一緒だ。お前の嫌いな魔族の血だ。まあ、前に輸血しちゃってるから今更ってとこもあるけど…。」
グレイが言い終わらないうちにルイに抱き寄せられた。
「大丈夫だよ、グレイ。種族の血なんて関係ない。いや、そもそも種族の違いで偏見を持つべきじゃないんだ。私は古いしきたりを持った聖騎士団に所属して戦争ばかりしていたから、そんな大事なことに気付けなかった。グレイがそれを教えてくれたんだ。グレイが私のために輸血が必要だと思うなら私からもお願いしたい。」
ルイの心臓の音が伝わる。
グレイの心臓の音も伝わっているのだろうか。
この音にずっと包まれていたいな、とグレイは目を閉じルイの背中に手を回した。
ひとつ深呼吸して目を開ける。
「分かった、じゃあ始めるね。」と言って2人は体をそっと離した。
グレイは血液パックを飲み干した。
身体中に魔力が急激に巡り、グレイの瞳がゆらりと金色から濃いオレンジに変わった。
しかし、グレイは迷うことなく目的地へ走り続ける。
何十年とはいえ城の掃除をしているだけで、これほど巨大で複雑な水路を全て把握することは簡単じゃないだろう。
「グレイはすごいな。こんな複雑な造りの城内を全て把握しているのか。」
ルイは感心しながら言った。
「す、すごくないだろ!!何十年も毎日掃除してりゃ誰だって覚えるさ!」
前を走るグレイの表情は見れないが、耳が少し赤くなっている。
言葉はぶっきらぼうだが、おそらく照れているのだろう。
ルイは思わず笑みが溢れる。
「いや、すごいよ。尊敬する。」
「…今さらおだてても遅いっての。」
グレイは素直にルイの言葉を聞き入れることが恥ずかしくて、つい嫌な返しをしてしまう。
「本心だよ。信じなくてもいいけど。」
後ろからルイの穏やかな声が聞こえる。
きっと笑っているんだろうな。
本当は振り返ってどんな顔をしているのか見てみたいが、ルイと目が合ったらもっと恥ずかしくなる。
グレイは何も言わず、前を見て走り続けた。
しばらく走ると、人ひとりがやっと通れるほどの細い螺旋階段に着いた。
「しばらく階段を登るけど大丈夫か?」
先ほどより息が上がり、顔色の悪いルイが心配になる。やはりまだ安静が必要だったのだ。
「ああ、大丈夫だよ。」
ルイは笑って見せたが、かなり辛そうだ。
グレイは緊急時用の高濃縮吸血パックを取り出した。
通常の物より魔力と体力も急激に回復させ、すぐに輸血もできる。
しかし摂取した魔族は、効果が切れると一時的に体が動かせなくなる副作用もある。
ただ、輸血した相手にはそういった影響は一切でない。
「…なあ、ルイ、輸血していいか?まだしばらく走らなくちゃいけないし、地上へ行くには高速飛行で結界を突破しなくちゃいけない。ほかの魔族やジルドと鉢合わせて戦う可能性もある。…お前が嫌ならしないけど。」
断られる事を覚悟し、グレイは吸血パックを握りしめた。
「ああ、いいよ。グレイの考えに従う。」
ルイの答えはあっさりしたものだった。
「ほ、本当にいいのか?吸血パックは魔女が錬金したものだから人間の血は使ってないけど、俺が吸収して輸血すれば魔族の血と一緒だ。お前の嫌いな魔族の血だ。まあ、前に輸血しちゃってるから今更ってとこもあるけど…。」
グレイが言い終わらないうちにルイに抱き寄せられた。
「大丈夫だよ、グレイ。種族の血なんて関係ない。いや、そもそも種族の違いで偏見を持つべきじゃないんだ。私は古いしきたりを持った聖騎士団に所属して戦争ばかりしていたから、そんな大事なことに気付けなかった。グレイがそれを教えてくれたんだ。グレイが私のために輸血が必要だと思うなら私からもお願いしたい。」
ルイの心臓の音が伝わる。
グレイの心臓の音も伝わっているのだろうか。
この音にずっと包まれていたいな、とグレイは目を閉じルイの背中に手を回した。
ひとつ深呼吸して目を開ける。
「分かった、じゃあ始めるね。」と言って2人は体をそっと離した。
グレイは血液パックを飲み干した。
身体中に魔力が急激に巡り、グレイの瞳がゆらりと金色から濃いオレンジに変わった。
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