純粋で一途な命の恩人を50年放置してたらグレた。

39.ユーロンとエドワード

１時間程度で城に戻ると、ルイはまた地下牢へと監禁された。
しかし今回は簡易的なベッドが設置された牢だった。
鎖で全身を縛られることもなく、食事は聖水と新鮮な果物が用意された。
どうやら魔王の命令でルーフが用意したらしい。

ルイは牢へ戻ると泥のように眠ってしまった。
竜人は限界まで魔力を使うとどんなに自然の精気を吸っても一時的に動けなくなるらしい。
おそらく魔王はその事を知っていたからドグライアスへ戻るように言ったのだろう。

グレイの首輪も城に戻った時に直ぐに外された。
本当はルイのそばに居たかったが、いつも通り城の仕事に励んだ。
昼頃にはコウモリ姿になり再び地上へ出て、リリィの家に向かった。
今後の話をリリィに聞いて欲しかったのだ。

しかし果樹園に向かう途中の森でグレイの全身が雷で打たれたような衝撃が走った。
全身が痙攣し、翼は動かせなくなり、そのまま地面に落下した。
コウモリ姿のままでは飛ぶことし出来ないグレイは、人間の姿に戻ったが体は痺れたままだった。

「っく…。な、なんだ…っ。体が動かない…。」

グレイの前に現れたのは、ユーロンとエドワードだった。

「お前がグレイか。」

ユーロンは怒りに満ちた刺すような視線でグレイを見下ろしている。

「ユーロンさん、魔法解いてあげないと感電死しちゃいますよ？」

エドワードの口調は穏やかだが、やはりグレイをみる瞳には怒りが宿っている。

騎士の格好をした大きな2人の竜人はルイの格好とよく似ていた。

「…もしかしてルイの仲間か？」

グレイがルイの名前を出した瞬間、ユーロンは剣を抜きグレイの目の前に突き刺した。

「黙れ、魔族。俺たちの質問にだけ答えろ。お前がグレイか。」

「…っそう…だ…。」

体を流れる電流がより一層強くなった。息をするのも困難だと感じていると、ユーロンはグレイの腹を思い切り蹴飛ばした。

「っぐふ！！ゲホッゲホッ！！」

夜から何も食べていなかったグレイは胃液を吐いた。
するとまた近くに来たユーロンはグレイの首元を掴み、グレイの首を絞めた。

「ルイに…ルインハルト師団長に何をしたっ！？」

「ぅっ！っはぁ、っはぁ！！」

「そんなに首を絞めたら話せないですよー？」

エドワードに言われ、ユーロンは「ちっ」と舌打ちをして力を緩め、グレイを感電させている魔法も少し緩めた。

「ルインハルトと魔王が戦うと聞いた。お前の知っている事を全て吐け。」

「…はぁっ、はぁ…お前らこそ誰だ…！知らない相手にベラベラ話すかよ！！」

ユーロンの威圧に恐怖を感じたグレイだったが、負けずに睨み返した。
いくらなんでも急に暴力を振るう者に「はい、そうですか。」と従うことなんてしたくない。

「こいつっ！！」

ユーロンは再びグレイの首を掴んだ手に力を入れたが、エドワードに止められた。

「まあまあ、ユーロンさん。確かに彼のいう通りですよ。俺たちもちゃんと挨拶しなきゃ。その後でどんな手を使ってでもしっかり話してもらいましょう。」

エドワードの顔から笑みは消え、グレイに向かって銃を向けた。

グレイは解放された首を摩りながら息を飲んだ。