純粋で一途な命の恩人を50年放置してたらグレた。

そら。

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24.魔王の出した条件(ルイ視点)

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ルイはグレイの言葉に固まった。

「え、グレイ。今なんて言った?」

「だから魔王様にルイが外に出れるようにお願いしたんだってば。」

グレイは今日も果物と聖水を持ってきてルイの足元に並べ始めた。


何で余計な事をするんだ。


グレイの行動に思わず怒りを覚えたが、自分の部下でもないグレイを怒るのはさすがに自分勝手だ。

ルイはなるべく穏やかに優しい口調でグレイに聞いた。

「それで、魔王は何て言ってたんだ?」

「外に出ていいよ、だって。」

「…え、いいのか?」

あまりにも拍子抜けな返答に思わず聞き返す。

「うん、でも条件を出されちゃった。」

グレイは少し気まずそうにルイを見上げる。

「条件?なんだ?」

「魔王様と戦って欲しいんだって。」

「え?」

魔王と戦う?

それはルイにとって願ったり叶ったりだが、なぜ魔王はわざわざ自分と戦いたいのだろうか。
何か裏があるのか、ルイを殺したいだけなのか。

しかしルイも今まで厳しい訓練に耐え、何度も死線を超えて戦ってきた。
腕には自信がある。
魔王と一対一で戦えるなら勝てる可能性があるかもしれない。
いや、この戦争を止めるには絶対に勝たなければいけない。
これはチャンスだ。
自分は死んだっていい。
とにかく魔王を倒せば世界は変わる。


「グレイ、その条件引き受けよう。私はそもそも魔王を倒したいんだ。」

「えー、ダメだよ。ルイが死んじゃう。」

「…お前は私が負けると思っているのか?」

「うん。魔王様はものすごく強いもん。ルイは魔王様の強さを知ってるのか?
それに今のルイは弱ってるだろ。ルイがどれだけ強いか知らないけど、少し前まで死にそうだったじゃん。そんなヤツが魔王様に勝てるとは思えない。」

確信をついてきたグレイの言葉にルイは何も言えなくなる。

確かに魔王の力がどれほどのものか分からない状況で戦いを挑むのは危ない。
本調子ならまだしも体力は少し戻ってきたが、魔力はほとんどない。
長い間拘束され、筋力も落ちている。
勝てる見込みはかなり低いだろう。

じゃあこのまま牢で繋がれているだけか。
勝算が限りなく低いからといって諦めるのか。

目を瞑れば幼いルイを魔族の攻撃から庇って命を落とした母の姿を鮮明に思い出す。
あの時から魔族はルイにとって憎むべき存在になった。

「…それでも私は魔王を倒したい。」

「ダメだ。」

グレイが少し強い口調で言った。
金の瞳には強い意志が宿っている。

ー…ああ、やっぱり。

「所詮魔族だな。魔王を守りたいか。」

ルイが冷たく鼻で笑う。

「だから魔王様は強いから今のルイじゃ勝てないよ。…俺が守りたいのは、ルイだ。」

「お前に何が分かる!!私は死んでもいい!!!こんな牢の中で無駄に生きているぐらいなら今すぐにでも死んだほうがマシだ!お前の意見は聞いてない!グレイ、魔王と戦わせろ!!」

ルイは怒りに任せ怒鳴り付けた。

ルイはずっと焦っていた。

1ヶ月以上ドグライアス城の地下牢にただ拘束されているだけで何もできない自分の弱さに。
今まで見つける事が出来なかった魔王と同じ空間にいるのに何もできない自分の無力さに。
ただただ悔しくてしょうがない。

ふっと我に返ると、グレイは今にも泣きそうな顔でルイを見つめていた。

ああ、これはただの八つ当たりだ。
グレイは本気で自分の心配をしているだけだ。
グレイに当たってもしょうがないのに、自分の器の小ささにうんざりする。

ルイはため息をついて、力無く笑った。

「ごめん。言い過ぎたな。私はグレイを泣かせてばかりだ。」
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