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22.鱗の行方(ルイ視点)

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昼時、居眠り中のルーフのいびきがこだまする地下牢でルイはそっと目を開けた。


ー…鱗がユーロンの手に渡ったな。


グレイに預けた鱗が、無事ユーロンに渡った事をルイは察知した。
必要最低限の情報は伝わったはずだ。
ユーロンなら少ない情報だけでも魔王討伐に向け準備を整えてくれるだろう。

グレイに鱗を3枚渡したのは賭けだった。

もし、グレイが〝鱗の掟〟を知っていれば、そのまま逃げてしまうだろうし、農園の人間に渡さず自分のものにしてしまう可能性もあった。
他の魔族に奪われることもあるだろうし、最悪ジルドに見つかれば次こそルイを殺しに来るかもしれない。
グレイが人間に渡したとしても、その人間が聖騎士団に連絡しないかもしれない。

最悪の想定をしながら、ルイを好きだと慕うグレイなら上手く動いてくれるのではないかと賭けてみた。

監視対象という意味がある3枚目の鱗を『お守り』だと偽りグレイに身に付けるように言った時は、グレイのあまりの喜びように少し良心が痛んだ。
しかもペンダントにして首にぶら下げた時はグレイの純粋さに思わず笑いそうになった。
聖騎士の魔力なら鱗を常に身に付けていなくても監視対象者が1回でも鱗に触れば、鱗に流れる微弱な魔力を読み取って監視対象者だと分かるようになっている。しかし、そんな目立つような付け方をすれば聖騎士でなくても竜人全員に「私は監視対象者ですよ」とアピールしているようなものだ。

しかし、これだけ素直なグレイなら必ず農園の人間に鱗を渡すだろうと期待も高まった。

世間知らずで魔力の弱いグレイがどこまで使えるのか不安もあったが、結果は期待以上のものだった。

魔族のグレイが人間に会いにいって大ごとになる事を避けるため、鱗は置いて来るだけでいいと言ったが、グレイはちゃんと〝鱗の掟〟に理解ある人間に渡してくれた。

グレイが話すリリィという女性はかなり察しのいい人物だった。
聖水は魔族にとって魔力を奪う水だが、竜人にとっては魔力を与える水だ。
鱗の意味も理解した上で、鱗を渡した〝誰か〟のためにグレイに聖水も預けたのだろう。

ドグライアス城の地下牢では自然の精気も吸えず、食事も与えられない環境でルイの魔力も体力もかなり弱まっていた。しかしグレイが持ってきた聖水と自然の恵みを十分に蓄えた果物を取り、体力は随分と回復した。

しかし、魔力はあまり回復しなかった。
思った以上に魔力を消費してしまっているのだろう。

やはり一度外に出て自然の精気を直接吸わないと魔力の完全回復は難しそうだ。

聖水を持ってきたグレイを優しく見つめ、お礼を言えば嬉しそう照れながら笑う。

グレイがルイに好意を寄せていることは手に取るほど分かる。
魔族とは思えないほど素直で従順なグレイ。

グレイを上手く使えばきっと外にも出れるだろう。
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