上 下
3 / 135

2.捕らえられた竜人

しおりを挟む
グレイが牢獄に行くと入口からすでに血の匂いがした。
コウモリ魔族のグレイは血の匂いを嗅ぎ分ける事が得意で、すぐに竜人の血だと分かった。

「うわぁー、すごく血の匂いがするなぁ。
まだ生きてるのかな。」


血の匂いがする牢屋の前に行くと両手足と胴体に大きな鎖で縛られた傷だらけの竜人がいた。
白に近い水色をした長い髪は血と泥でボサボサに固まり、筋肉がしっかり付いたガタイのいい体には無数の大きな傷がありポタポタと血が流れている。

気を失っているのか下を向いていて表情は分からない。

「なあ、あんた生きてるか?
俺の名前はグレイ。コウモリ魔族なんだ。
今日は俺が看守だからよろしくな。」

とりあえず話しかけてみたが、竜人の反応はない。

心配になったグレイは牢の鍵を開け、中に入った。

背丈はルーフと同じくらいだろうか。
かなり迫力があってかっこいい。

グレイは恐る恐る近づきながらも胸の高鳴りを感じながら、
竜人の口元に手を伸ばした。


うん、息はしてるな。


「良かった。まだ生きてるみたいだね。
俺の看守中にお前が死んだらルーフにおこられるから頑張って生きてくれよな。
ところで、すごい傷だけど痛くねぇの?」

グレイが竜人の腕の傷を触ろうすると、竜人の腕が僅かに動いた。

「…私に触るな。」

さっきまで下を向いていた竜人は、いつのまにか顔を上げ、真っ青な瞳でグレイを見下ろしていた。

竜人の威圧に一瞬怯んだグレイだったが、相手は鎖に繋がれた瀕死の竜人。

なにより竜人の澄んだ青い瞳に魅せられたグレイは、無意識に竜人の頬に手を触れた。

「…すごく綺麗な瞳だ。」

グレイがそう言うと、竜人は目を見開き思い切りグレイの手に噛み付いた。

「いたっ!!」

グレイは手を引いた勢いで尻もちをついた。
噛まれた手からは血が流れ出す。

「なにすんだよ!痛いじゃん!!」

グレイは泣きそうになりながら竜人を睨みつけたが、竜人はまた下を向き目を閉じた。

「…え?ねぇ、大丈夫?
もしかして死んじゃった?」

グレイは再び竜人に近づき頬を触ったが、今度は何の反応もなく竜人はそのまま動かなくなってしまった。

手を首筋に当てるとわずかに脈はある。

ルーフはなにもしなくていいって言ってたけど、このままだと死んじゃうよな。
…手当てぐらいしてもいいよね?

竜人は明らかに敵意のある目をしていたが、グレイはもう一度青いの瞳を見たいと思いながら優しく竜人の頬を撫でた。
しおりを挟む
感想 11

あなたにおすすめの小説

推しの完璧超人お兄様になっちゃった

紫 もくれん
BL
『君の心臓にたどりつけたら』というゲーム。体が弱くて一生の大半をベットの上で過ごした僕が命を賭けてやり込んだゲーム。 そのクラウス・フォン・シルヴェスターという推しの大好きな完璧超人兄貴に成り代わってしまった。 ずっと好きで好きでたまらなかった推し。その推しに好かれるためならなんだってできるよ。 そんなBLゲーム世界で生きる僕のお話。

魔界最強に転生した社畜は、イケメン王子に奪い合われることになりました

タタミ
BL
ブラック企業に務める社畜・佐藤流嘉。 クリスマスも残業確定の非リア人生は、トラックの激突により突然終了する。 死後目覚めると、目の前で見目麗しい天使が微笑んでいた。 「ここは天国ではなく魔界です」 天使に会えたと喜んだのもつかの間、そこは天国などではなく魔法が当たり前にある世界・魔界だと知らされる。そして流嘉は、魔界に君臨する最強の支配者『至上様』に転生していたのだった。 「至上様、私に接吻を」 「あっ。ああ、接吻か……って、接吻!?なんだそれ、まさかキスですか!?」 何が起こっているのかわからないうちに、流嘉の前に現れたのは美しい4人の王子。この4王子にキスをして、結婚相手を選ばなければならないと言われて──!?

僕がハーブティーを淹れたら、筆頭魔術師様(♂)にプロポーズされました

楠結衣
BL
貴族学園の中庭で、婚約破棄を告げられたアルフォン伯爵令息。可愛らしい見た目に加え、ハーブと刺繍を愛する彼は、女よりも女の子らしいと言われていた。女騎士を目指す婚約者に「妹みたい」とバッサリ切り捨てられ、婚約解消されてしまう。 ショックのあまり実家のハーブガーデンに引きこもっていたところ、王宮魔術塔で働く兄から助手に誘われる。 喜ぶ家族を見たら断れなくなったエリオットは筆頭魔術師のジェラール様の執務室へ向かう。そこでエリオットがいつものようにハーブティーを淹れたところ、なぜかプロポーズされてしまい……。   「エリオット・ハワード――俺と結婚しよう」 契約結婚の打診からはじまる男同士の恋模様。 アルフォンのハーブティーと刺繍に特別な力があることは、まだ秘密──。

身代わりになって推しの思い出の中で永遠になりたいんです!

冨士原のもち
BL
桜舞う王立学院の入学式、ヤマトはカイユー王子を見てここが前世でやったゲームの世界だと気付く。ヤマトが一番好きなキャラであるカイユー王子は、ゲーム内では非業の死を遂げる。 「そうだ!カイユーを助けて死んだら、忘れられない恩人として永遠になれるんじゃないか?」 前世の死に際のせいで人間不信と恋愛不信を拗らせていたヤマトは、推しの心の中で永遠になるために身代わりになろうと決意した。しかし、カイユー王子はゲームの時の印象と違っていて…… 演技チャラ男攻め×美人人間不信受け ※最終的にはハッピーエンドです ※何かしら地雷のある方にはお勧めしません ※ムーンライトノベルズにも投稿しています

期待外れの後妻だったはずですが、なぜか溺愛されています

ぽんちゃん
BL
 病弱な義弟がいじめられている現場を目撃したフラヴィオは、カッとなって手を出していた。  謹慎することになったが、なぜかそれから調子が悪くなり、ベッドの住人に……。  五年ほどで体調が回復したものの、その間にとんでもない噂を流されていた。  剣の腕を磨いていた異母弟ミゲルが、学園の剣術大会で優勝。  加えて筋肉隆々のマッチョになっていたことにより、フラヴィオはさらに屈強な大男だと勘違いされていたのだ。  そしてフラヴィオが殴った相手は、ミゲルが一度も勝てたことのない相手。  次期騎士団長として注目を浴びているため、そんな強者を倒したフラヴィオは、手に負えない野蛮な男だと思われていた。  一方、偽りの噂を耳にした強面公爵の母親。  妻に強さを求める息子にぴったりの相手だと、後妻にならないかと持ちかけていた。  我が子に爵位を継いで欲しいフラヴィオの義母は快諾し、冷遇確定の地へと前妻の子を送り出す。  こうして青春を謳歌することもできず、引きこもりになっていたフラヴィオは、国民から恐れられている戦場の鬼神の後妻として嫁ぐことになるのだが――。  同性婚が当たり前の世界。  女性も登場しますが、恋愛には発展しません。

平民男子と騎士団長の行く末

きわ
BL
 平民のエリオットは貴族で騎士団長でもあるジェラルドと体だけの関係を持っていた。  ある日ジェラルドの見合い話を聞き、彼のためにも離れたほうがいいと決意する。  好きだという気持ちを隠したまま。  過去の出来事から貴族などの権力者が実は嫌いなエリオットと、エリオットのことが好きすぎて表からでは分からないように手を回す隠れ執着ジェラルドのお話です。  第十一回BL大賞参加作品です。

【完結】《BL》溺愛しないで下さい!僕はあなたの弟殿下ではありません!

白雨 音
BL
早くに両親を亡くし、孤児院で育ったテオは、勉強が好きだった為、修道院に入った。 現在二十歳、修道士となり、修道院で静かに暮らしていたが、 ある時、強制的に、第三王子クリストフの影武者にされてしまう。 クリストフは、テオに全てを丸投げし、「世界を見て来る!」と旅に出てしまった。 正体がバレたら、処刑されるかもしれない…必死でクリストフを演じるテオ。 そんなテオに、何かと構って来る、兄殿下の王太子ランベール。 どうやら、兄殿下と弟殿下は、密な関係の様で…??  BL異世界恋愛:短編(全24話) ※魔法要素ありません。※一部18禁(☆印です) 《完結しました》

家庭菜園物語

コンビニ
ファンタジー
お人好しで動物好きな最上 悠(さいじょう ゆう)は肉親であった祖父が亡くなり、最後の家族であり姉のような存在でもある黒猫の杏(あんず)も静かに息を引き取ろうとする中で、助けたいなら異世界に来てくれないかと、少し残念な神様に提案される。 その転移先で秋田犬の大福を助けたことで、能力を失いそのままスローライフをおくることとなってしまう。 異世界で新しい家族や友人を作り、本人としてはほのぼのと家庭菜園を営んでいるが、小さな畑が世界には大きな影響を与えることになっていく。

処理中です...