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1.下っ端雑用係のコウモリ魔族グレイ
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「グレイ、お前今日休みだよな?看守の仕事を代わってくれないか?」
ドグライアス城の牢獄看守係の狼魔族のルーフに突然声を掛けられ、コウモリ魔族のグレイは嬉しくなった。
「やあ、ルーフ!君が俺の名前を知ってるなんて感激だ!
ほら、俺ってただの雑用係だし下っ端だろ?しかも存在感も薄いから…」
「はいはい、もちろん知ってるさ。それより明日の仕事は代わってくれるんだろ?」
ルーフはグレイの話を遮り、面倒臭そうに頭を掻いた。
魔族は『本来の姿』と『人間の姿』になる事が出来るため、皆それぞれ自分の好きな姿で暮らしている。
ルーフは狼魔族の『本来の姿』であるオオカミの姿をしていて、身長が2メートル近くあり、見事な銀の毛並みを持ち、ガタイのいい体をしていて、立っているだけで威圧感がある。
一方グレイのコウモリ魔族『本来の姿』は手のひらサイズのコウモリで、他の魔族から馬鹿にされるため普段は『人間の姿』をしている。
人間の姿でもかなり小柄で細いグレイは魔力も少なく、内向的で嫌とは言えない性格のため、度々こうして仕事を押し付けられる。
「…えーっと、そうだね…。うん、いいよ!」
今日は3ヶ月ぶりの休みだったグレイは、部屋の掃除をしたり街へ出掛けたりとやりたい事が沢山あった。
それでも自分の名前を覚えてくれていたルーフの役に立ちたいと思い引き受ける事にした。
「今、牢獄にいるのは例の竜人だ。飯はやらなくていいから監視だけしてりゃいい。」
「例の竜人って…1ヶ月前に捕まえたヤツ?」
1ヶ月前に捕らえられた竜人は魔力、体力、知力に長けた聖騎士の師団長だった。
通常、捕らえた竜人はすぐに殺してしまうが、師団長を捕らえた事は魔族たちにとって名誉な事であり、しばらくの間、勝利品の観賞用として牢獄に閉じ込める事にしたのだ。
いつも城にこもって雑用ばかりしているグレイは外で起きている戦争の状況には疎いが、その竜人を捕らえた日は城の中もその話で持ちきりだったので、なんとなく知っていた。
「そう、その竜人。じゃ、あとは頼むなー。」
ルーフはグレイの頭を雑に撫でて、すぐに歩き出した。
「うん、まかせてよ!」
グレイの返事はルーフにはもう聞こえてないようで、少し離れた所で待っていた魔族たちと合流し、楽しそうに何処かへ出掛けていった。
ルーフは一度も振り返らなかったが、グレイは小さく手を振ってルーフたちを見送った。
ドグライアス城の牢獄看守係の狼魔族のルーフに突然声を掛けられ、コウモリ魔族のグレイは嬉しくなった。
「やあ、ルーフ!君が俺の名前を知ってるなんて感激だ!
ほら、俺ってただの雑用係だし下っ端だろ?しかも存在感も薄いから…」
「はいはい、もちろん知ってるさ。それより明日の仕事は代わってくれるんだろ?」
ルーフはグレイの話を遮り、面倒臭そうに頭を掻いた。
魔族は『本来の姿』と『人間の姿』になる事が出来るため、皆それぞれ自分の好きな姿で暮らしている。
ルーフは狼魔族の『本来の姿』であるオオカミの姿をしていて、身長が2メートル近くあり、見事な銀の毛並みを持ち、ガタイのいい体をしていて、立っているだけで威圧感がある。
一方グレイのコウモリ魔族『本来の姿』は手のひらサイズのコウモリで、他の魔族から馬鹿にされるため普段は『人間の姿』をしている。
人間の姿でもかなり小柄で細いグレイは魔力も少なく、内向的で嫌とは言えない性格のため、度々こうして仕事を押し付けられる。
「…えーっと、そうだね…。うん、いいよ!」
今日は3ヶ月ぶりの休みだったグレイは、部屋の掃除をしたり街へ出掛けたりとやりたい事が沢山あった。
それでも自分の名前を覚えてくれていたルーフの役に立ちたいと思い引き受ける事にした。
「今、牢獄にいるのは例の竜人だ。飯はやらなくていいから監視だけしてりゃいい。」
「例の竜人って…1ヶ月前に捕まえたヤツ?」
1ヶ月前に捕らえられた竜人は魔力、体力、知力に長けた聖騎士の師団長だった。
通常、捕らえた竜人はすぐに殺してしまうが、師団長を捕らえた事は魔族たちにとって名誉な事であり、しばらくの間、勝利品の観賞用として牢獄に閉じ込める事にしたのだ。
いつも城にこもって雑用ばかりしているグレイは外で起きている戦争の状況には疎いが、その竜人を捕らえた日は城の中もその話で持ちきりだったので、なんとなく知っていた。
「そう、その竜人。じゃ、あとは頼むなー。」
ルーフはグレイの頭を雑に撫でて、すぐに歩き出した。
「うん、まかせてよ!」
グレイの返事はルーフにはもう聞こえてないようで、少し離れた所で待っていた魔族たちと合流し、楽しそうに何処かへ出掛けていった。
ルーフは一度も振り返らなかったが、グレイは小さく手を振ってルーフたちを見送った。
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