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竜人の子、旅立つ

37.卒業式

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新緑の季節がやってきた。青い空は雲ひとつなく、爽やかな風が吹く。
そして今日は教会学校の卒業式だ。

「おーい、シロ!!」

「あ、ルカ!」

ルカに呼ばれてシロが駆け寄る。教室に向かう途中でアリスとも合流した。
卒業式と言っても服装が自由な教会学校では、皆普段と変わらない格好をしている。

「あーあ、いよいよ俺たちも卒業かぁ。5年間あっという間だったよな」

ルカは少し寂しそうに呟き、頭の後ろで手を組んだ。

「最初は長いと思ってたけど、思い返すと一瞬で終わっちゃったわ」

やはりアリスも少し寂しそうに話す。

この2人と教室に向かって歩くのも今日で最後か。シロは寂しさもあったが、充実感の方が大きかった。

「うん、本当に一瞬だった。だけどいろんな経験ができたし、何より俺は初めて親友が出来た。ルカとアリスのおかげで学校がすごく楽しかったよ。2人に出会えて本当に良かった。ありがとう」

シロは純粋に感謝の気持ちを伝えると、ルカとアリスがブワッと涙目になった。

「や、やめろよ!シロ!!くそっ、泣きたくないのに涙が出る…!」

「わぁーんっ!シロ大好き!!私だってあなたがこの学校に来てくれて嬉しかったわ。正直、竜人なんて嫌いだったけどシロのおかげで竜人に対する印象が変わったのよ」

ルカとアリスに抱きつかれ、戸惑いながらシロは「アリスも竜人嫌いだったの?」と驚いた。

一息ついてルカがシロを見た。

「これからも3人で集まりたいけど、シロはアスディアに行っちまうんだろ?」

「…うん」

シロは笑って答えた。


シロが入学試験を終えた1ヶ月後、竜人聖騎士学校の合格通知と共に特待生承認通知が届いた。
つまりシロは特待生として、竜人聖騎士学校に合格したのだ。

通知が届いた日、シロは嬉しい気持ち以上に、ルーフと離れなければならない現実に心が苦しくなった。
ルーフはどんな反応をするだろうと思いながら、合格通知を見せると「俺が魔法を教えてやったんだから落ちるはずないんだよ。感謝しろ。それにお前がいなくなれば、俺の家に竜人どもが集まらなくなるから清々するぜ」と笑われた。

シロが聖騎士学校へ行きたいと打ち明けた日、ルーフにたった一度だけ「行くな」と止められた。
しかしそれ以降、シロが決めた事には否定せず「お前の好きにすればいい」と言うだけだった。シロの生き方を肯定しているようにも見えるが、シロに対して関心がなくなったようにも思える。

そして、あの日からルーフとの間に出来てしまった微妙な距離感をいまだに縮められずにいる。
シロがどんなにルーフにくっ付いたり、好きだと伝えても適当にあしらわれる。
ルーフのそっけない態度がすごく悲しい。

だが、シロもすでに覚悟は決めている。

目標だった特待生として入学できれば、あとは治療魔法と聖剣治療を身に付け、選抜実習生になって、さらに聖剣治療の完治を目指す。
もちろん飛び級を見据えて、期間は3年。

全てを終えたら必ずルーフを迎えに行く。
ルーフがどこにいても見つけ出すし、ルーフが嫌だと言っても絶対離れない。
それに今は『まて』の状態だが、18歳になったら『よし』の許可が出る。
その時は思う存分、ルーフをどろどろになるまで愛したい。


「…ロっ。シロってば!」

「へ?」

ルカに呼ばれて、シロは我に戻った。

「どこまで行くんだ。教室、過ぎてるぞ」

「ああ、本当だ」

戻って来たシロの顔を見て、ルカは怪訝な表情をした。

「シロ。お前の目、なんか怖いんだけど…。欲にまみれた目、みたいな」

「うん。俺、今、煩悩まみれなんだ」

シロは笑って答えると、ルカは小さな声で「シロって顔は良いのに、時々発言が残念なんだよな」と呆れるように呟いた。
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