竜人嫌いの一匹狼魔族が拾った竜人を育てたらすごく愛された。

そら。

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竜人の子、旅立つ

29.学園都市セレイスナ

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竜の姿になったスノウの背に乗って、シロはアスディアにある竜人聖騎士学校を目指した。
向かっている道中でスノウは騎士学校について詳しく教えてくれた。

「今向かっている先は、騎士学校が管理する学園都市セレイスナ。武道場、図書館、病院、自然公園、ショッピングモールなんでも揃っているから便利な場所なんだ。今夜泊まる場所も騎士学校内にある宿泊施設なんだよ。受験生はアスディアに住む竜人が多いから前泊する子は少ないと思うけど、他国から来る子も数十人いるから友達ができるかもしれないね。まあ、受験前でみんなそれどころじゃないかもしれないけど」

「受験生はみんな竜人なんですか?」

「一昔前は竜人に限定されていたけど、今は人間や混血の子も結構いるよ。まあ流石に魔族の子は稀だね。魔族はアスディアの環境が体に合わないっていうのもあるけど、規律の厳しい騎士団に入りたいっていう子がそもそもいないみたい。騎士団僕たちは魔族も一緒に仕事ができたら良いなって思うんだけどね」

スノウは残念そうに笑った。

「魔族は自由気ままに暮らしたいって考え方が多いですもんね。俺は魔族のそういうところが好きですけどね」

シロはドグライアスで知り合った陽気な魔族たちを思い出し、自然と顔が綻んだ。

「あー、分かる!僕も実はすごく憧れてる。自由だし楽しそうで羨ましいよ。竜人は正義や忠義を重んじる種族だからね。もちろん僕は竜人の生き方も好きなんだ。誰かの役に立てた時は嬉しいし、生きがいも感じるからね」

スノウは一呼吸置いて話を続けた。

「…僕ね、シロ君が騎士学校に進学するって聞いてすごく嬉しかった。でも同時に心配なんだ」

「心配ですか?」

スノウは躊躇いながら申し訳なさそうに話した。

「…うん。君はルーフさんと一緒にのびのびと自由に暮らしていた。竜人の世界は規律に厳しいし、自由がきかない部分も沢山ある。アスディアは平和で住みやすい国だと思うけど、君にとって窮屈に感じる場所かもしれない。それに時代は変わったとはいえ、己の正義にとらわれ過ぎて偏った考えを持つ者もいる。…君のおじいさんのようにね。その…だから、君の事を差別する者もいるかもしれない」

シロの祖父、ゲイル・ローハンは竜人至上主義で魔族というだけで嫌悪感を持つ者だった。赤い瞳を持つ黒竜だったシロを「呪われた竜」だと罵り、10歳になるまで虐待と監禁を続けた。そしてルーフに聖剣の傷を残した張本人。今はアスディアの監獄にいると聞いたが、シロにとってもうどうでもいい存在だ。
それにもうシロは無抵抗だった10歳の自分とは違う。

「お気遣いありがとうございます。でも俺、ルーフからイタズラ魔法や嫌がらせができる植物の見つけ方も教わったんです。何かあった時はこっそりやり返す自信ありますよ」

シロが不敵に笑うと、スノウは一瞬固まった後に大笑いした。

「あははっ!!それは怖いね!っていうか嫌がらせができる植物ってなに?僕も知りたい!!」

「へへっ、『鼻歌草』っていうドグライアスの植物なんです」


シロがルーフから教わった事を話していると、大きな雲を抜けた先には、太陽の光を浴びて美しく輝く学園都市セレイスナが見えてきた。

「シロ君、あの建物が竜人聖騎士学校だよ」

スノウが指差す先には、白亜の城のような竜人聖騎士学校が建っていた。敷地内には騎士学校の制服を着た学生達が楽しそうに話していたり、魔法の練習をしたりしている。学校の裏には広大な森が広がり、訓練をしている竜人の姿も見える。
校舎から少し離れた人気のない場所には、ガラス張りの大きな建物が建っている。一瞬、誰かが動いたように見えた。シロは何となくその場所が気になった。

「スノウさん、あのガラス張りの建物は何ですか?」

「ああ、あれは植物園だよ。貴重な植物や薬草なんかを研究しているんだ。もしかしたら鼻歌草もあるかもね。珍しい植物がたくさんあって面白いから、時間があれば覗いてみてごらん」

そしてスノウは「でもまずは宿泊施設に行こう」と言って急降下した。
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