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竜人の子、旅立つ
4.美味い酒でも奢れ
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ルーフは、ルカとアリスを両脇に抱えてルカの家に戻ってきた。
ルカの家の周辺は、衝撃波の影響で崩壊したり火事になった建物もあったが、竜人たちの救助活動によって鎮火し、怪我人は全て助けられていた。
2人の帰りを待っていたルカの両親は、煤だらけの顔に涙を溜めて駆け寄った。
「ルカっ、アリスっ!ああ、無事で良かった!怪我はない?2人とも顔をちゃんと見せて!!」
ルカの母親が2人を抱きしめた。
アリスは「ルーフが治癒魔法をかけてくれたから大丈夫よ。それにルカも私を守ってくれたの」と笑った。
ルカは「母さんは大袈裟だなぁ。まあ、ルーフがいなきゃ死んでたかもれないけど」と照れながら笑ってルーフを見た。
ルカと目が合ったルーフは、腕を組んで首をすくめた。
ルカの父親はルーフに頭を下げた。
「ルーフ、2人を助けてくれてありがとう!この恩は一生かけて必ず返す…。いや、きっと返しきれないな…。とにかく、本当に…、本当にありがとう…」
ルカの父親の肩が揺れ、足元には雫がボタボタと落ちる。
「おっさんの恩なんていらねぇから、今度美味い酒でも奢れよ」
湿っぽい雰囲気が苦手なルーフがその場を去ろうとすると、煤と涙と鼻水まみれのルカの父親が顔を上げ、ルーフに抱きついた。
「うわっ。なんだよっ、離れろ!」
「そんなものいくらでも奢ってやる!!ルーフ、お前の事ただの酒クズだと思っていたが、本当は頼りになる奴なんだなぁ!いつでもお前の為に美味い酒を用意して待っている!美味い飯も用意する!!酒が飲みたくなったらいつでも来いっ!」
ルカの父親は、ルーフに頬擦りしながら頭をガシガシと撫でた。
「やめろっ!もういいから離れろって!お前の鼻水が付くだろうが!うわっ、汚ねえ!!」
2人のやり取りを笑って見ていたルカたちの頭上を竜人騎士団が飛んでいった。
それを見上げたルカは「シロは大丈夫かな…」と呟いた。
爆発事故から1時間後ー…。
ユーロンの妻サハラは、駐屯所のテントの中で魔力不足になった竜人騎士たちに聖水と果物を食べさせ、手当てをしていた。
ぐったりした竜人騎士に聖水を飲ませ、額をタオルで拭く。
「まだ魔力が回復していませんね。貴方はまだ休んでいてください」
「はは、サハラさんに手当てしてもらえるなんて光栄です。でも後でユーロンさんに嫉妬されそうだなぁ…」
そう言って騎士は小さく笑った。
「ふふ、冗談が言えるなら大丈夫そうですね。でも少し仮眠を取った方がいいと思います。目が覚める頃、きっと魔力も回復してますよ」
サハラは騎士の目に手を当て、回復睡眠の魔法をかけた。
騎士が眠ったのを確認し、サハラは顔を上げた。
駐屯所には、魔力不足になった騎士たちが次々と運ばれてくる。荷台に積んで待ってきた大量の聖水も残り僅かになってしまった。
「ユーロンさんは大丈夫かしら…」
サハラは外の様子を確認するため、テントから出た。
その時、ちょうど救助活動を終えたユーロンが、騎士に抱えられながら戻ってきてた。
「ユーロンさん!大丈夫?」
サハラが駆け寄ると、ユーロンは視線を逸らし「…問題ない」と答えた。するとユーロンを抱えていた騎士がため息をついた。
「団長、サハラさんの前だからって強がらないでくださいよ。さっき魔力不足でぶっ倒れたじゃないですか」
「…強がってなどいない」
ユーロンは小さな声で反論した。
ルカの家の周辺は、衝撃波の影響で崩壊したり火事になった建物もあったが、竜人たちの救助活動によって鎮火し、怪我人は全て助けられていた。
2人の帰りを待っていたルカの両親は、煤だらけの顔に涙を溜めて駆け寄った。
「ルカっ、アリスっ!ああ、無事で良かった!怪我はない?2人とも顔をちゃんと見せて!!」
ルカの母親が2人を抱きしめた。
アリスは「ルーフが治癒魔法をかけてくれたから大丈夫よ。それにルカも私を守ってくれたの」と笑った。
ルカは「母さんは大袈裟だなぁ。まあ、ルーフがいなきゃ死んでたかもれないけど」と照れながら笑ってルーフを見た。
ルカと目が合ったルーフは、腕を組んで首をすくめた。
ルカの父親はルーフに頭を下げた。
「ルーフ、2人を助けてくれてありがとう!この恩は一生かけて必ず返す…。いや、きっと返しきれないな…。とにかく、本当に…、本当にありがとう…」
ルカの父親の肩が揺れ、足元には雫がボタボタと落ちる。
「おっさんの恩なんていらねぇから、今度美味い酒でも奢れよ」
湿っぽい雰囲気が苦手なルーフがその場を去ろうとすると、煤と涙と鼻水まみれのルカの父親が顔を上げ、ルーフに抱きついた。
「うわっ。なんだよっ、離れろ!」
「そんなものいくらでも奢ってやる!!ルーフ、お前の事ただの酒クズだと思っていたが、本当は頼りになる奴なんだなぁ!いつでもお前の為に美味い酒を用意して待っている!美味い飯も用意する!!酒が飲みたくなったらいつでも来いっ!」
ルカの父親は、ルーフに頬擦りしながら頭をガシガシと撫でた。
「やめろっ!もういいから離れろって!お前の鼻水が付くだろうが!うわっ、汚ねえ!!」
2人のやり取りを笑って見ていたルカたちの頭上を竜人騎士団が飛んでいった。
それを見上げたルカは「シロは大丈夫かな…」と呟いた。
爆発事故から1時間後ー…。
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ぐったりした竜人騎士に聖水を飲ませ、額をタオルで拭く。
「まだ魔力が回復していませんね。貴方はまだ休んでいてください」
「はは、サハラさんに手当てしてもらえるなんて光栄です。でも後でユーロンさんに嫉妬されそうだなぁ…」
そう言って騎士は小さく笑った。
「ふふ、冗談が言えるなら大丈夫そうですね。でも少し仮眠を取った方がいいと思います。目が覚める頃、きっと魔力も回復してますよ」
サハラは騎士の目に手を当て、回復睡眠の魔法をかけた。
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駐屯所には、魔力不足になった騎士たちが次々と運ばれてくる。荷台に積んで待ってきた大量の聖水も残り僅かになってしまった。
「ユーロンさんは大丈夫かしら…」
サハラは外の様子を確認するため、テントから出た。
その時、ちょうど救助活動を終えたユーロンが、騎士に抱えられながら戻ってきてた。
「ユーロンさん!大丈夫?」
サハラが駆け寄ると、ユーロンは視線を逸らし「…問題ない」と答えた。するとユーロンを抱えていた騎士がため息をついた。
「団長、サハラさんの前だからって強がらないでくださいよ。さっき魔力不足でぶっ倒れたじゃないですか」
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ユーロンは小さな声で反論した。
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