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竜人嫌いの魔族、竜人の子供を育てる

43.捨てた選択肢

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「もうお前に魔力の特訓は必要ないな。ミール王国に戻るか?」

食事をしながらルーフはシロを見た。

「…え」

さっきドグライアスに来たばかりなのに、ルーフの突然の提案に、シロはフォークで刺した肉をポトリと皿に落とした。

「おい、肉、落ちたぞ。だって、闇魔力であれだけ立派な城を建てられるなら、もう俺が教えられる事なんかねぇよ。魔力のコントロールもしっかり出来てるし、もう魔力暴走の心配もないと思う。ここで魔力の特訓したけりゃしてもいいけど、もう俺は必要なさそうだな」

シロは落ちた肉をまたフォークに刺そうとして俯いた。食欲が急になくなり、フォークが動かない。
ルーフの言葉に不安が広がる。

シロにとってルーフは絶対必要だ。
それなのにルーフが「俺は必要なさそうだ」なんて悲しい事を言ってくる。

どうしよう。
そんな事、思ってほしくない。
ルーフにも自分は必要だと思って欲しい。

「…えー、そうかな。でもまだまだ魔法は下手クソだと思うよ。だからルーフがもっと教えてよ」

シロは取り繕うように笑ってみせた。

「まあ、それもそうか。んじゃ魔法の特訓でもするか」

ルーフはあっさり納得して、パクパクと食事を進めていく。

(…あ、もしかしてそこまで深い意味じゃなかったのかな?)

シロは少し安堵して、「うん、よろしくー」と笑った。

「あ、そういえば進学先は決めたか?」

食事を先に終えたルーフは、腹を撫でながらシロに聞いた。

「え?」

「え、じゃねぇよ。この間、進学先のパンフレット渡しただろ?あの中じゃ行きたい学校はなかったのか?」

シロは休み前にルーフから渡された学校のパンフレットの事を思い出した。
あれからシロも専攻など調べて行きたい学校をピックアップしていた。

「ああ、ううん。気になる学校は何校かあったよ。本当は働くつもりだったけど、パンフレットみたらやっぱりもっと医療の勉強したくなった。だから進学しようと思う。色々調べてくれてありがとう…」

シロはお礼を言った後、本当は竜人騎士学校にも興味がある事を伝えた方がいいのか迷った。

一度は捨てた選択肢だったが、こうして進学先について聞かれると、この選択肢が頭をよぎってしまうのだ。
このまま相談もせず諦めていいのだろうか。
竜人の国アスディアで暮らす魔族もいると聞く。ルーフにもちゃんと話せば、案外付いて来てくれるかもしれない。

シロは勇気を出して話そうとした瞬間、ルーフの方が先に話し出した。

「調べたのはユーロンだけどな。じゃあ夏休みの後半は学校見学に行くか。ついでに住む場所も決めちまうか。モンド王国はでかい港があって海鮮が美味いんだ。おすすめの酒屋があるから連れてってやるよ」

ルーフは嬉しそうにニシシッと笑った。その顔を見てシロは何も言えなくなった。
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