竜人嫌いの一匹狼魔族が拾った竜人を育てたらすごく愛された。

そら。

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竜人嫌いの魔族、竜人の子供を育てる

40.進学先

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「だーっ!もう離せっつーの」

ルーフは、ご主人の帰りを待ちわびていた犬のように引っ付いてくるシロの顔を両手で押し退けた。それでもシロは、嬉しそうに懲りずに引っ付いてくる。
こいつは竜人じゃなくて大型犬なんじゃないか、と思ったぐらいだ。

「だってルーフがやっとその気になってくれたんだもん。大好きだよ、ルーフ。今すぐ俺のものにしたい」

「ガキが盛ってんじゃねぇよ」

何度も押し退けるのも面倒臭くなったルーフは諦めて、シロに抱きつかれたまま酒を飲んだ。

「ガキガキ言うけどさ、俺だってもう大人だよ。魔族は15歳が成人なんでしょ?」

ルーフの腰回りを両手でホールドしているシロは、不満そうにルーフを見上げた。
顔立ちは随分大人っぽくなってきたが、こういう表情をする時はまだ子供っぽさが残っている。

「お前は竜人だろうが。竜人の成人は18歳だろ。大人が18歳以下の竜人に手出したら犯罪なんだとよ。俺は捕まりたくない」

「何それ。別にお互いが好き同士なら関係なくない?ルーフって意外と真面目だよね」

シロは眉間にしわを寄せて頬を膨らませた。

「自分は大人だ」というシロの子供っぽい仕草にルーフは思わず可笑しくなった。

「ふっ、やっぱりお前がまだまだガキだよ」

ルーフはシロの頭をガシガシと乱暴に撫でて笑った。

まだまだ可愛いガキのシロ。
あと数年経てばもっと男らしくなり、今よりもっと格好良くなるだろ。
顔も整っている方だし、性格も穏やかで優しいし料理も上手い。
男女問わずモテるだろう。
学校を卒業したらもっといろんな出会いがあって、いろんな経験をするだろう。

この世界には、自分より魅力的な奴はごまんといる。
大人になったシロは、ルーフ以外の相手と恋をするかもしれない。

いつか自分の元を離れる日が来るのかもしれない。
一緒に過ごせるのも、あと少しなのかもしれない。

そう思った瞬間、ルーフの心は嫌な感情でざわついた。

「…ルーフ?どうかしたの?」

急に無表情になったルーフを、シロが心配そうに見上げている。

「ん?ああ、なんでもない。それよりルカ達と夏祭りに行かないなら俺と行くか?」

ルーフは気持ちを切り替えて明るく話した。

「…え、いいの?」

シロは嬉しそうに顔を輝かせた。

「ああ、毎年楽しみにしてたイベントだろ。それにミール王国の夏祭りも当分行けなくなるかもしれないからな」

「え?なんで?」

「なんで、ってお前が進学したら…あ、そういや、まだ話してなかったな。この間ユーロンに会ってさ、シロの進学先について話してきたんだ」

シロの進学先については、ユーロンにも度々相談していた。学校の知識がないルーフが探すより、ユーロンに相談した方が早いと思ったからだ。

案の定、ユーロンもシロの進路を心配していたようで、話をするとすぐに学校のパンフレットを用意してくれたのだ。

ルーフはユーロンから預かった医療系の学校のパンフレットをカバンから取り出し、シロに渡した。

「お前は医療に興味があるんだろ?ユーロンのおすすめはアスディアの竜人騎士学校らしいけど、俺は付いていけない。竜人の国なんかで暮らせないからな。
でも隣国のモンド王国も医療技術が進んでて、良い学校も沢山あるんだってさ。そこなら俺も一緒に行けるし、仕事もあるだろうから丁度いいと思うんだ。レニーじいさんもちゃんと専門的な所で学んだ方がいいって言ってたぞ。ああ、あと金の事を気にすんな。俺が出世払いで貸してやる」

本当はシロの学費ぐらいいくらでも負担してもいいのだが、遠慮深いシロの事だからきっと断るだろう。
だからルーフはあえて「貸す」と言った。
ユーロンが持ってきた学校のパンフレットはどれもシロの興味がありそうな内容だったし、きっと喜んでくれるとルーフは思っていた。

「…そっか、色々調べてくれてたんだね。ありがとう。考えてみるよ!」

シロは少し戸惑い気味に笑顔で返事をした。

シロの微妙な反応を不思議に思ったルーフだったが、急な話で驚いただけだろうと深く気には留めなかった。
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