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竜人嫌いの魔族、竜人の子供を育てる
39.考えてやる
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「はあー、スッキリしたぁ」
夕食後、ソファに座って新聞を読んでいたシロのもとに、風呂上がりのルーフが酒を片手に持ってもたれかかってきた。
ルーフはバスローブを羽織って、首にタオルを掛けている。
石鹸の香りが漂う髪はまだ少し濡れていて、シロの腕にぽたっと雫が落ちた。
(…生殺しだ)
シロはごくりと唾を飲み込んだ。
ゆるく着ているバスローブの胸元からは、ルーフの滑らかな褐色の肌が際どい所まで見えそうだ。
無防備なルーフが密着し、新聞に集中出来なくなる。
「…ルーフ、もしかして誘ってる?あんまり無防備だと俺、我慢できないよ。髪だってまだ濡れてるし」
シロはルーフの首に掛かったタオルを取って、髪をカシカシと拭いた。
「けっ、ガキのお前を誘うかよ。それよりさっきのルカの話を詳しく聞かせろよ」
ルーフはニヤニヤしながらシロを見上げた。金の瞳は興味津々で輝いている。
夕食の時に「今年の夏祭りは行かないと思う」とルーフに伝えた時にルカの話をしたのだ。
「だからルカがアリスを夏祭りに誘うってだけだよ。…魔族にとって人間は恋愛対象外だから告白はしないんだって。でもアリスだってルカの事、好きだと思うんだけどなぁ」
シロは風魔法でルーフの髪を乾かした。
「へへっ、恋の悩みってやつか。人間の言葉じゃそれを『青春』って言うらしいぜ。
人間と竜人は1人のツガイを作りたがるよな。俺たち魔族には、そもそも『恋愛』自体どうでもいいんだよ。ヤリたい時にヤレる相手がいりゃいいんだもん」
ルーフはカッカッ、と笑って酒を飲んでいる。
確かに魔族で恋愛や結婚をしている者は少数だ。でも全くいないわけではない。
ルーフが特定の相手を作らず遊び歩いている事は知っているが、こうして言葉にされると腹が立つ。
「うっわ、最低だね」
シロは低い声で非難して、タオルを投げ捨てた。
そして、もたれかかっていたルーフを後ろから抱きしめた。
「でもルーフも俺のこと好きになれば、その考えも変わるかもよ。たった1人を一生愛して愛されるって素敵じゃない?俺は一生ルーフだけが好きだよ。ねぇ、俺と恋愛してよ」
こういうことを言うと、いつもルーフに「うぜぇ」と言われて拒否される。それを分かっていても気持ちは伝えたくなる。
いつもだったらすぐに押し退けてくるルーフが、今日は何故か動かない。呆れて無視しているのだろうか。だったらもう少しくっついていよう。
全然動かないルーフから呟くような声が聞こえた。
「……たら、考えてやる」
「へ?」
「…だから、お前がもうちょい大人になったら、考えてやる」
そっぽを向いたルーフが早口で答えた。
それでも今度はしっかり聞き取れた。
今までどんなに好きだと伝えても拒否していたルーフからの初めて前向きな返事だ。
「え?えっ!?本当!?いいの!?」
シロはルーフの肩を掴み、向かい合わせにした。
「うわっ、痛ぇよ!何すんだよ急に!」
少し頬が赤いルーフは、シロと目を合わせずに文句を言う。
(うわっ!ルーフが照れてる!!可愛いっ!!)
シロはたまらなくなり、今度は正面からルーフを抱きしめた。
「ルーフ!好きっ、大好きっ!一生大切にする!キスしていい!?ううん、キスだけじゃ足りない。エッチしよっ!」
「ばっ、馬鹿かお前!!大人になったら考えてやるっつってんだろうが!ガキはもう寝ろっ!」
ルーフは抱きつくシロを蹴飛ばした。
結局、いつものように拒否されてしまったシロだったが、嬉しくてまたルーフに抱きついた。
夕食後、ソファに座って新聞を読んでいたシロのもとに、風呂上がりのルーフが酒を片手に持ってもたれかかってきた。
ルーフはバスローブを羽織って、首にタオルを掛けている。
石鹸の香りが漂う髪はまだ少し濡れていて、シロの腕にぽたっと雫が落ちた。
(…生殺しだ)
シロはごくりと唾を飲み込んだ。
ゆるく着ているバスローブの胸元からは、ルーフの滑らかな褐色の肌が際どい所まで見えそうだ。
無防備なルーフが密着し、新聞に集中出来なくなる。
「…ルーフ、もしかして誘ってる?あんまり無防備だと俺、我慢できないよ。髪だってまだ濡れてるし」
シロはルーフの首に掛かったタオルを取って、髪をカシカシと拭いた。
「けっ、ガキのお前を誘うかよ。それよりさっきのルカの話を詳しく聞かせろよ」
ルーフはニヤニヤしながらシロを見上げた。金の瞳は興味津々で輝いている。
夕食の時に「今年の夏祭りは行かないと思う」とルーフに伝えた時にルカの話をしたのだ。
「だからルカがアリスを夏祭りに誘うってだけだよ。…魔族にとって人間は恋愛対象外だから告白はしないんだって。でもアリスだってルカの事、好きだと思うんだけどなぁ」
シロは風魔法でルーフの髪を乾かした。
「へへっ、恋の悩みってやつか。人間の言葉じゃそれを『青春』って言うらしいぜ。
人間と竜人は1人のツガイを作りたがるよな。俺たち魔族には、そもそも『恋愛』自体どうでもいいんだよ。ヤリたい時にヤレる相手がいりゃいいんだもん」
ルーフはカッカッ、と笑って酒を飲んでいる。
確かに魔族で恋愛や結婚をしている者は少数だ。でも全くいないわけではない。
ルーフが特定の相手を作らず遊び歩いている事は知っているが、こうして言葉にされると腹が立つ。
「うっわ、最低だね」
シロは低い声で非難して、タオルを投げ捨てた。
そして、もたれかかっていたルーフを後ろから抱きしめた。
「でもルーフも俺のこと好きになれば、その考えも変わるかもよ。たった1人を一生愛して愛されるって素敵じゃない?俺は一生ルーフだけが好きだよ。ねぇ、俺と恋愛してよ」
こういうことを言うと、いつもルーフに「うぜぇ」と言われて拒否される。それを分かっていても気持ちは伝えたくなる。
いつもだったらすぐに押し退けてくるルーフが、今日は何故か動かない。呆れて無視しているのだろうか。だったらもう少しくっついていよう。
全然動かないルーフから呟くような声が聞こえた。
「……たら、考えてやる」
「へ?」
「…だから、お前がもうちょい大人になったら、考えてやる」
そっぽを向いたルーフが早口で答えた。
それでも今度はしっかり聞き取れた。
今までどんなに好きだと伝えても拒否していたルーフからの初めて前向きな返事だ。
「え?えっ!?本当!?いいの!?」
シロはルーフの肩を掴み、向かい合わせにした。
「うわっ、痛ぇよ!何すんだよ急に!」
少し頬が赤いルーフは、シロと目を合わせずに文句を言う。
(うわっ!ルーフが照れてる!!可愛いっ!!)
シロはたまらなくなり、今度は正面からルーフを抱きしめた。
「ルーフ!好きっ、大好きっ!一生大切にする!キスしていい!?ううん、キスだけじゃ足りない。エッチしよっ!」
「ばっ、馬鹿かお前!!大人になったら考えてやるっつってんだろうが!ガキはもう寝ろっ!」
ルーフは抱きつくシロを蹴飛ばした。
結局、いつものように拒否されてしまったシロだったが、嬉しくてまたルーフに抱きついた。
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