竜人嫌いの一匹狼魔族が拾った竜人を育てたらすごく愛された。

そら。

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竜人嫌いの魔族、竜人の子供を育てる

38.最後の思い出

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そうか、ルカはそんな風に自分を見ていてくれたのか。

シロは気恥ずかしさと嬉しさで頭を掻いて笑った。

「えへへ、そうだったんだ。でも俺もルカの事すごく尊敬してる。誰とでもすぐに仲良くなれるし、統率力があるけど優しいし。誰かが困ってたらすぐ助けてるし。コミュニケーション能力も高いよね。それから…」

ルカの尊敬できる所なんて上げだしたらキリがない。シロは指を折りながら思い付くものを言っていくと、ルカに「わーっ、聞いてらんねぇ!」と止められた。

「もーっ、やめてくれ!何だよ、急に。恥ずかしいだろ!」

ルカは手で自分の顔を仰ぎながら照れている。

「急に…って、ルカから言い出したんだろ?いいから聞けよ。まだあるんだから。えーっと、場を和ませるのが上手くて…」

「もういいって!本当!恥ずかしくて死ねる!!」

とうとうルカは顔を伏せてしまった。

「えー…まだあるのにー」

シロは口を尖らせ不満を表した。

「分かったって!ありがとな。…って、なんだよ、この空気!告白大会かよっ!」

真っ赤な顔をしたルカは、顔を上げてシロを見る。

今日のルカは表情がコロコロ変わって面白いし、なんだかすごく可愛い。
シロは頬杖を付いて笑顔で聞いた。

「あははっ、本当だね。ところで、アリスにはいつ告白するの?」

ゴンー!!

シロの質問にまたルカは勢いよく顔を伏せた。思い切りテーブルにおでこをぶつけたようだが大丈夫だろうか。

「そ、そこまでお見通しかよ…」

「そんな事ないけど、話の流れ的にそうかなって。…おでこ大丈夫?すごい音したけど」

ルカは赤くなったおでこをさすりながら顔を上げた。

「…うん、大丈夫。そうだよな。まあ、告白っつーか…今年の夏祭りなんだけどさ…」

ミール王国の夏祭りは3人で行く事が恒例になっていた。まだ約束はしていなかったが、きっと今年も3人で行くだろうと思ってたシロは「ああ、そういう事か」と察しがついた。

「…アリスと2人で行きたいんだけど、いい?」

ルカは気まずそうにシロを見上げた。

「もちろん、いいに決まってる。え、それを言うためにわざわざ俺の仕事が終わるまで待っててくれたの?」

「当たり前だろ。だって夏祭りは毎年3人で行ってたからさ。2人で行くなんてシロを仲間外れにするみたいで悩んでたんだよ。…でも俺たち最終学年だろ?学校を卒業したらアリスもギルドの仕事をするって言ってたし、俺も仕事だから今みたいに気軽に会えなくなる。だからアリスと最後の思い出を作りたいんだ」

「俺の事なんか気にしなくていいのに。でも何で最後の思い出になるんだよ?アリスと付き合えば、夏祭りなんてこれから何回でも行けるだろ?」

たぶんアリスもルカの事が好きだと思う。ルカが告白すれば、アリスはきっと喜んで返事をするだろう。

「付き合えるわけないだろ。俺たち人間と魔族だぞ?」

「うん、知ってるよ。それが何?」

ルカはため息をついた。

「それが何って、そこが問題なんだよ。1000年以上生きる竜人や魔族と違って、人間の寿命は80年程度だろ。結婚しても一緒にいられる時間は僅かなんだ。だから竜人と魔族は、すぐ老いて死ぬ人間とは結婚したがらない。そもそも恋愛対象外なんだよ。きっとアリスに告白したって困らせるだけだ。だから告白はしない。情けねぇけどな」

気付けばルカの顔からは赤みが引き、寂しそうな目をしてニカッと笑った。

(無理して笑わなくていいのに…)

シロは悲しい気持ちになった。
自分たちと比べて短すぎる人間の寿命。ルカもあっという間にこの世からいなくなってしまうだろう。想像しただけで胸が苦しくなる。
変えられない運命に慰めの言葉が見つからない。

『それが何?』なんて無神経な事を言ってしまった。

シロが「ごめん」と謝ると、ルカは明るい声で「俺の方がごめん。シロまで困らせちゃったな!気にすんなよ」と笑った。

本当にルカは優しい。
こんな時まで気を遣わなくていいのに…。

シロもなるべく明るい声でからかうように笑った。

「でも2人で夏祭り行こうって誘ったら、ほぼ告白してるようなもんだと思うけど?」

「ははっ。まあ、そうなんだけどな。いや、そもそも夏祭り自体断られるかもしれないし」

「うーん、確かに。そうしたら俺と行こうよ、親友」

シロは拳をルカに向けた。

「それも絶対楽しいよな。じゃあその時はよろしく、親友」

2人は拳を合わせた後、「恥ずっ!!」っと言ってゲラゲラ笑った。
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