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竜人嫌いの魔族、竜人の子供を育てる
34.後悔しないか?
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「まあ、でもシロ君がルーフさんのそばで気遣ってあげる事だって立派な治療ですよ。ルーフさん1人だったら定期検診すらサボると思いますし」
スノウは医療道具を片付けながら呆れたように笑った。
「あはは、確かに。次回も必ずルーフを捕まえておきますので、よろしくお願いします」
「ふふ。こちらこそ、捕獲よろしくお願いします」
スノウは、ふざけて敬礼のポーズをした。
竜人聖騎士団の騎士たちは無表情で威圧的な雰囲気を持つ者が多いが、スノウだけはいつも穏やかで誰にでも優しく手を差し伸べる。
医療に関する知識も多く、治療、治癒魔法だけではなく医療技術の処置も正確で素早い。
(俺もスノウさんみたいな医者になりたいな…)
スノウに会うと、シロはいつもそう思う。
スノウが帰ってしばらくすると、ルーフが欠伸をしながら寝室から出てきた。
「あ、ルーフ。寝てたの?」
出掛ける準備をしていたシロは、手を止めてルーフに駆け寄った。
「ああ、あの治療魔法やらを受けると眠くなるんだよなぁ」
「そっか、治療お疲れさま。体調は大丈夫?」
「だから大丈夫だって。大袈裟だな。それよりお前出掛けるのか?」
「うん、これからレニー先生の手伝いに行くよ。お昼ご飯にビーフシチュー作ったんだ。お腹空いたら食べて」
「まじ?やったー」
ルーフはキッチンに向かい、鍋の蓋を開けて「おー、美味そう!」とご機嫌に笑った。
シロはそんなルーフの姿を見てほっこりした。
(あー、可愛い。好きな食べ物がある時のルーフって子犬みたいなんだよなぁ。癒される…)
できればルーフと一緒にお昼も食べたいところだが、レニーとの約束があるシロは後ろ髪を引かれる思いでルーフに抱きついた。
「たくさん食べてね。じゃあ、いってきます」
「…いちいち抱きつくな。早く行け」
ルーフに押し退けられ、シロは渋々出掛けた。
「今回の定期検診も問題なかったんだな。そりゃ良かったじゃねぇか」
「とりあえずね。やっぱりスノウさんの医療魔法は早いし正確ですごいよ。でも油断できない。対魔物用の聖剣って本当厄介な武器だよね」
レニーの手伝いをしているシロは、ルーフの治療についてレニーにも相談している。
「そうだな。100年戦争の時は、仲間の魔族がアレで何人もやられたよ。昔は当たり前のように使われていたが、今じゃ使用禁止になって武器は処分もされている。だが、まだ隠し持ってる奴はいるみたいだな」
レニーはお茶をすすりながら懐かしむように天井を見上げた。
「その中の1人が俺の祖父だったんだ。本当最低な竜人だよね。裁判では俺の監禁、虐待と聖剣の使用でかなり罪が重くなったって聞いたけどさ、あんな奴さっさと死刑にすればいいのに」
シロは吐き捨てるように言った。
祖父ゲイルは懲役800年の実刑が下ったとユーロンから聞いている。
「がははっ、竜人と人間の刑罰に死刑はないぞ。魔族の国にはあるけどな。シロの発想は魔族みてぇだな」
「そう?まあ、俺は竜人らしくない竜人だからね」
「性格はな。だが、見た目は随分立派な竜人になってきたぞ。そういえば学校も今年で卒業だろ。卒業後はどーするんだ?本当にここで働き続けるのか?」
「うん。レニー先生が良ければそうしたい」
「わしは構わないが、本当にそれでいいのか?」
ぶ厚い眼鏡をかけたレニーは、シロをじっと見つめた。
「え?」
「お前はこんな廃れた病院で満足できるのか?町医者のわしから学べる医療には限界がある。本当はそのスノウみたいにもっと医療の技術を身に付けたいじゃないのか?」
「自分の病院を悪く言わないでよ。俺、レニー先生の病院すごく好きだよ。みんなから頼りにされてるしさ。もちろんスノウさんは尊敬してるけど、俺はレニー先生だって尊敬してる。このまま一緒に働きたい」
「…そうか。まあ、お前はルーフのそばにいたいから、特にそう思うんだろう。
だがな、例えばルーフが致命傷を負ったとき、場合によっちゃ、ここでは助けられない可能性がある。だが、お前が竜人の医療を身に付けていたら助けられる可能性が広がる。
まあ、ルーフに限らず、お前の目の間に瀕死の誰かがいた時に、限界がある自分に後悔しないか?」
「…それは…」
レニーの言葉は、長年シロが目を背けてきた問題だった。
ルーフとは離れたくない。
でも竜人聖騎士学校で幅広い医療を学びたい。
でも竜人嫌いのルーフが、竜人の国に一緒に付いてきてくれるはずがない。
だったら今まで通り、ミール王国でルーフと暮らせばいい。
でもルーフの傷が酷くなったら?
竜人だからできる医療魔法があるのに、学びもせず諦めていいのか?
本当に今のままで後悔しない?
そんな思いがシロの頭の中をぐるぐる駆け巡った。
スノウは医療道具を片付けながら呆れたように笑った。
「あはは、確かに。次回も必ずルーフを捕まえておきますので、よろしくお願いします」
「ふふ。こちらこそ、捕獲よろしくお願いします」
スノウは、ふざけて敬礼のポーズをした。
竜人聖騎士団の騎士たちは無表情で威圧的な雰囲気を持つ者が多いが、スノウだけはいつも穏やかで誰にでも優しく手を差し伸べる。
医療に関する知識も多く、治療、治癒魔法だけではなく医療技術の処置も正確で素早い。
(俺もスノウさんみたいな医者になりたいな…)
スノウに会うと、シロはいつもそう思う。
スノウが帰ってしばらくすると、ルーフが欠伸をしながら寝室から出てきた。
「あ、ルーフ。寝てたの?」
出掛ける準備をしていたシロは、手を止めてルーフに駆け寄った。
「ああ、あの治療魔法やらを受けると眠くなるんだよなぁ」
「そっか、治療お疲れさま。体調は大丈夫?」
「だから大丈夫だって。大袈裟だな。それよりお前出掛けるのか?」
「うん、これからレニー先生の手伝いに行くよ。お昼ご飯にビーフシチュー作ったんだ。お腹空いたら食べて」
「まじ?やったー」
ルーフはキッチンに向かい、鍋の蓋を開けて「おー、美味そう!」とご機嫌に笑った。
シロはそんなルーフの姿を見てほっこりした。
(あー、可愛い。好きな食べ物がある時のルーフって子犬みたいなんだよなぁ。癒される…)
できればルーフと一緒にお昼も食べたいところだが、レニーとの約束があるシロは後ろ髪を引かれる思いでルーフに抱きついた。
「たくさん食べてね。じゃあ、いってきます」
「…いちいち抱きつくな。早く行け」
ルーフに押し退けられ、シロは渋々出掛けた。
「今回の定期検診も問題なかったんだな。そりゃ良かったじゃねぇか」
「とりあえずね。やっぱりスノウさんの医療魔法は早いし正確ですごいよ。でも油断できない。対魔物用の聖剣って本当厄介な武器だよね」
レニーの手伝いをしているシロは、ルーフの治療についてレニーにも相談している。
「そうだな。100年戦争の時は、仲間の魔族がアレで何人もやられたよ。昔は当たり前のように使われていたが、今じゃ使用禁止になって武器は処分もされている。だが、まだ隠し持ってる奴はいるみたいだな」
レニーはお茶をすすりながら懐かしむように天井を見上げた。
「その中の1人が俺の祖父だったんだ。本当最低な竜人だよね。裁判では俺の監禁、虐待と聖剣の使用でかなり罪が重くなったって聞いたけどさ、あんな奴さっさと死刑にすればいいのに」
シロは吐き捨てるように言った。
祖父ゲイルは懲役800年の実刑が下ったとユーロンから聞いている。
「がははっ、竜人と人間の刑罰に死刑はないぞ。魔族の国にはあるけどな。シロの発想は魔族みてぇだな」
「そう?まあ、俺は竜人らしくない竜人だからね」
「性格はな。だが、見た目は随分立派な竜人になってきたぞ。そういえば学校も今年で卒業だろ。卒業後はどーするんだ?本当にここで働き続けるのか?」
「うん。レニー先生が良ければそうしたい」
「わしは構わないが、本当にそれでいいのか?」
ぶ厚い眼鏡をかけたレニーは、シロをじっと見つめた。
「え?」
「お前はこんな廃れた病院で満足できるのか?町医者のわしから学べる医療には限界がある。本当はそのスノウみたいにもっと医療の技術を身に付けたいじゃないのか?」
「自分の病院を悪く言わないでよ。俺、レニー先生の病院すごく好きだよ。みんなから頼りにされてるしさ。もちろんスノウさんは尊敬してるけど、俺はレニー先生だって尊敬してる。このまま一緒に働きたい」
「…そうか。まあ、お前はルーフのそばにいたいから、特にそう思うんだろう。
だがな、例えばルーフが致命傷を負ったとき、場合によっちゃ、ここでは助けられない可能性がある。だが、お前が竜人の医療を身に付けていたら助けられる可能性が広がる。
まあ、ルーフに限らず、お前の目の間に瀕死の誰かがいた時に、限界がある自分に後悔しないか?」
「…それは…」
レニーの言葉は、長年シロが目を背けてきた問題だった。
ルーフとは離れたくない。
でも竜人聖騎士学校で幅広い医療を学びたい。
でも竜人嫌いのルーフが、竜人の国に一緒に付いてきてくれるはずがない。
だったら今まで通り、ミール王国でルーフと暮らせばいい。
でもルーフの傷が酷くなったら?
竜人だからできる医療魔法があるのに、学びもせず諦めていいのか?
本当に今のままで後悔しない?
そんな思いがシロの頭の中をぐるぐる駆け巡った。
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