57 / 112
竜人嫌いの魔族、竜人の子供を育てる
31.友達
しおりを挟む
ミール王国の夜空に大輪の花火が次々と咲き乱れる。
「すっげー!花火って本当綺麗だよな。人間ってすげぇよな。こんな綺麗なものを魔法も使わずに作っちゃうんだからさ」
ルーフの隣でグレイが目を輝かせながら花火を見上げている。
「そうか?俺には火薬が爆発してるだけにしか見えねぇけど」
「もー。ルーフは本当にドライだよね。…まあ、でもそんなお前がまさか竜人の子供と一緒に暮らしてるなんてな。正直、俺は今だに信じられない。シロっだけ?いい子だよな。ルーフの事、すごく心配してる」
そう言って穏やかに笑うグレイは、少し離れた場所で話をしているシロとルイの方に視線を移した。つられてルーフもシロたちを見る。きっとまだルーフの傷跡について話しているのだろう。それとも竜人同士、積もる話でもあるのだろうか。
(何をそんなに話すことがあるのかねぇ…)
ルーフはため息をついて酒を飲んだ。
花火を見るため酒場の屋上に移動したルーフたちや他の客は、皆、酒を片手に適当にくつろぎながら花火を見ている。
ルカとアリスは買ってきたお菓子を食べながら、次はどんな花火が上がるのか予想して、きゃっきゃっと楽しそうに騒いでいる。
その中でシロとルイは、花火も見ずに真剣に話をしている。
「…シロってさ、魔王様にすごく似てるよね」
グレイがポツリと呟いた。
「…髪と目の色だけな」
「魔力だって魔王様と同じ匂いがする」
「へぇ、お前にそんなことが分かるのか。確かにシロは魔王様の魔力を継承している。まあ、魔王になるかならないかはシロ次第だけどな」
「そっか。竜人嫌いだったルーフがシロと暮らしているのは、それが理由?」
普段なら「お前に関係ないだろ」と返すルーフだったが、酒を飲みすぎたせいか、美しすぎる花火を見ているせいか、素直に本音がこぼれ出した。
「…ああ。魔王様と同じ特徴を持つあいつをほっとけなかった。竜人だと気付いた時は、さっさと孤児院にでも連れて行こうと思ったよ。だけど魔王様と同じ瞳のシロの顔を見ていると、俺がそばにいてやらなきゃ、なんて思ったんだ。俺も大概バカだよな。俺は魔王様に必要とされていなかったのに、今だに引きずってシロに魔王様を重ねて、守ってやらなきゃなんて思ってるんだ。シロだって、本当は竜人に預けた方が幸せに決まってる。…ははっ、誰も俺を求めてねぇよって話だよな」
ルーフは自嘲気味に笑うと、グレイはひどく驚いた顔でルーフを見た。
「…ルーフ、お前、どうしちゃったの?無責任で無遠慮で酒クズ…は今もか。無責任で無遠慮で無関心で無駄に自信家だったくせに!しかも1人になりたがっていた魔王様の願いを無視して、勝手に側に居座りづつけて、雑用は全部俺に押し付けて悪びれもせず遊び歩いていた、あのルーフがしおらしくなっちゃってさ!シロを竜人に預けた方が幸せ?誰も求めてない?強気なルーフはどこ行っちゃたんだよ!?」
「…てめぇ、グレイ!おちょくりやがって!調子乗んなよ!!」
ルーフは恥ずかしくなってグレイの胸ぐらを掴んだ。しかしグレイは涙を流しながら大笑いした。
「あはははっ!ごめん、ごめん。ルーフが本音で話してくれた事が嬉しくてさ。ルーフって自分では気付いてないかもしれないけど、結構世話焼きだし優しいんだよ。自分の思うように生きろ、って人の背中を押すくせに、お前自身は本音を隠して、傷付いても平気なフリして何事にも興味なさそうに振る舞ってる」
「おい、いい加減やめろ。まるで俺が思春期のガキみてぇな性格じゃねえか」
「ああ、まさにそんな感じ!というか、傷付きたくなくて警戒している野良犬みたい!」
「もう、いい。黙れ、グレイ。お前、マジでぶっ飛ばす」
目の据わったルーフは拳を振り上げた。しかし、グレイは平然と話し続ける。
「だから俺はルーフが好きなんだ」
「あ?」
「興味なさそうにしてるけど、困ったときは助けてくれる。俺とルイが今一緒にいれるのは、ルーフのおかげなんだ。お前がいなかったら俺は死んでいたし、ルイもどうなっていたか分からない。魔王様だって1人になりたがっていたけど、困ったときは真っ先にお前に相談していただろ?それにお前以外を絶対そばに置かせなかった。魔王様にとってもお前は特別だったんだ。シロは魔王様に似ているけど、ただの竜人だったとしてもルーフは助けていたよ。お前の不器用な優しさがちゃんと伝わってるからシロもお前が好きなんだ」
「…うざ」
ルーフはグレイを離しそっぽを向いた。グレイはくしゃくしゃになった服を整え、ルーフの背中に寄りかかった。
「ルーフは俺の大事な友達だ。だからさ、ルーフも自分の事、もっと大事にしろよ。目の検査もちゃんと受けろ。誰も求めてないなんて思うなよ。もっと俺たちを頼ってよ」
グレイはニシシッと笑った。
「…クッソ生意気」
ルーフはグレイの頬をつねった。
「すっげー!花火って本当綺麗だよな。人間ってすげぇよな。こんな綺麗なものを魔法も使わずに作っちゃうんだからさ」
ルーフの隣でグレイが目を輝かせながら花火を見上げている。
「そうか?俺には火薬が爆発してるだけにしか見えねぇけど」
「もー。ルーフは本当にドライだよね。…まあ、でもそんなお前がまさか竜人の子供と一緒に暮らしてるなんてな。正直、俺は今だに信じられない。シロっだけ?いい子だよな。ルーフの事、すごく心配してる」
そう言って穏やかに笑うグレイは、少し離れた場所で話をしているシロとルイの方に視線を移した。つられてルーフもシロたちを見る。きっとまだルーフの傷跡について話しているのだろう。それとも竜人同士、積もる話でもあるのだろうか。
(何をそんなに話すことがあるのかねぇ…)
ルーフはため息をついて酒を飲んだ。
花火を見るため酒場の屋上に移動したルーフたちや他の客は、皆、酒を片手に適当にくつろぎながら花火を見ている。
ルカとアリスは買ってきたお菓子を食べながら、次はどんな花火が上がるのか予想して、きゃっきゃっと楽しそうに騒いでいる。
その中でシロとルイは、花火も見ずに真剣に話をしている。
「…シロってさ、魔王様にすごく似てるよね」
グレイがポツリと呟いた。
「…髪と目の色だけな」
「魔力だって魔王様と同じ匂いがする」
「へぇ、お前にそんなことが分かるのか。確かにシロは魔王様の魔力を継承している。まあ、魔王になるかならないかはシロ次第だけどな」
「そっか。竜人嫌いだったルーフがシロと暮らしているのは、それが理由?」
普段なら「お前に関係ないだろ」と返すルーフだったが、酒を飲みすぎたせいか、美しすぎる花火を見ているせいか、素直に本音がこぼれ出した。
「…ああ。魔王様と同じ特徴を持つあいつをほっとけなかった。竜人だと気付いた時は、さっさと孤児院にでも連れて行こうと思ったよ。だけど魔王様と同じ瞳のシロの顔を見ていると、俺がそばにいてやらなきゃ、なんて思ったんだ。俺も大概バカだよな。俺は魔王様に必要とされていなかったのに、今だに引きずってシロに魔王様を重ねて、守ってやらなきゃなんて思ってるんだ。シロだって、本当は竜人に預けた方が幸せに決まってる。…ははっ、誰も俺を求めてねぇよって話だよな」
ルーフは自嘲気味に笑うと、グレイはひどく驚いた顔でルーフを見た。
「…ルーフ、お前、どうしちゃったの?無責任で無遠慮で酒クズ…は今もか。無責任で無遠慮で無関心で無駄に自信家だったくせに!しかも1人になりたがっていた魔王様の願いを無視して、勝手に側に居座りづつけて、雑用は全部俺に押し付けて悪びれもせず遊び歩いていた、あのルーフがしおらしくなっちゃってさ!シロを竜人に預けた方が幸せ?誰も求めてない?強気なルーフはどこ行っちゃたんだよ!?」
「…てめぇ、グレイ!おちょくりやがって!調子乗んなよ!!」
ルーフは恥ずかしくなってグレイの胸ぐらを掴んだ。しかしグレイは涙を流しながら大笑いした。
「あはははっ!ごめん、ごめん。ルーフが本音で話してくれた事が嬉しくてさ。ルーフって自分では気付いてないかもしれないけど、結構世話焼きだし優しいんだよ。自分の思うように生きろ、って人の背中を押すくせに、お前自身は本音を隠して、傷付いても平気なフリして何事にも興味なさそうに振る舞ってる」
「おい、いい加減やめろ。まるで俺が思春期のガキみてぇな性格じゃねえか」
「ああ、まさにそんな感じ!というか、傷付きたくなくて警戒している野良犬みたい!」
「もう、いい。黙れ、グレイ。お前、マジでぶっ飛ばす」
目の据わったルーフは拳を振り上げた。しかし、グレイは平然と話し続ける。
「だから俺はルーフが好きなんだ」
「あ?」
「興味なさそうにしてるけど、困ったときは助けてくれる。俺とルイが今一緒にいれるのは、ルーフのおかげなんだ。お前がいなかったら俺は死んでいたし、ルイもどうなっていたか分からない。魔王様だって1人になりたがっていたけど、困ったときは真っ先にお前に相談していただろ?それにお前以外を絶対そばに置かせなかった。魔王様にとってもお前は特別だったんだ。シロは魔王様に似ているけど、ただの竜人だったとしてもルーフは助けていたよ。お前の不器用な優しさがちゃんと伝わってるからシロもお前が好きなんだ」
「…うざ」
ルーフはグレイを離しそっぽを向いた。グレイはくしゃくしゃになった服を整え、ルーフの背中に寄りかかった。
「ルーフは俺の大事な友達だ。だからさ、ルーフも自分の事、もっと大事にしろよ。目の検査もちゃんと受けろ。誰も求めてないなんて思うなよ。もっと俺たちを頼ってよ」
グレイはニシシッと笑った。
「…クッソ生意気」
ルーフはグレイの頬をつねった。
0
お気に入りに追加
336
あなたにおすすめの小説
転生令息は冒険者を目指す!?
葛城 惶
BL
ある時、日本に大規模災害が発生した。
救助活動中に取り残された少女を助けた自衛官、天海隆司は直後に土砂の崩落に巻き込まれ、意識を失う。
再び目を開けた時、彼は全く知らない世界に転生していた。
異世界で美貌の貴族令息に転生した脳筋の元自衛官は憧れの冒険者になれるのか?!
とってもお馬鹿なコメディです(;^_^A
そばかす糸目はのんびりしたい
楢山幕府
BL
由緒ある名家の末っ子として生まれたユージン。
母親が後妻で、眉目秀麗な直系の遺伝を受け継がなかったことから、一族からは空気として扱われていた。
ただ一人、溺愛してくる老いた父親を除いて。
ユージンは、のんびりするのが好きだった。
いつでも、のんびりしたいと思っている。
でも何故か忙しい。
ひとたび出張へ出れば、冒険者に囲まれる始末。
いつになったら、のんびりできるのか。もう開き直って、のんびりしていいのか。
果たして、そばかす糸目はのんびりできるのか。
懐かれ体質が好きな方向けです。今のところ主人公は、のんびり重視の恋愛未満です。
全17話、約6万文字。
恋のキューピットは歪な愛に招かれる
春於
BL
〈あらすじ〉
ベータの美坂秀斗は、アルファである両親と親友が運命の番に出会った瞬間を目の当たりにしたことで心に深い傷を負った。
それも親友の相手は自分を慕ってくれていた後輩だったこともあり、それからは二人から逃げ、自分の心の傷から目を逸らすように生きてきた。
そして三十路になった今、このまま誰とも恋をせずに死ぬのだろうと思っていたところにかつての親友と遭遇してしまう。
〈キャラクター設定〉
美坂(松雪) 秀斗
・ベータ
・30歳
・会社員(総合商社勤務)
・物静かで穏やか
・仲良くなるまで時間がかかるが、心を許すと依存気味になる
・自分に自信がなく、消極的
・アルファ×アルファの政略結婚をした両親の元に生まれた一人っ子
・両親が目の前で運命の番を見つけ、自分を捨てたことがトラウマになっている
養父と正式に養子縁組を結ぶまでは松雪姓だった
・行方をくらますために一時期留学していたのもあり、語学が堪能
二見 蒼
・アルファ
・30歳
・御曹司(二見不動産)
・明るくて面倒見が良い
・一途
・独占欲が強い
・中学3年生のときに不登校気味で1人でいる秀斗を気遣って接しているうちに好きになっていく
・元々家業を継ぐために学んでいたために優秀だったが、秀斗を迎え入れるために誰からも文句を言われぬように会社を繁栄させようと邁進してる
・日向のことは家族としての好意を持っており、光希のこともちゃんと愛している
・運命の番(日向)に出会ったときは本能によって心が惹かれるのを感じたが、秀斗の姿がないのに気づくと同時に日向に向けていた熱はすぐさま消え去った
二見(筒井) 日向
・オメガ
・28歳
・フリーランスのSE(今は育児休業中)
・人懐っこくて甘え上手
・猪突猛進なところがある
・感情豊かで少し気分の浮き沈みが激しい
・高校一年生のときに困っている自分に声をかけてくれた秀斗に一目惚れし、絶対に秀斗と結婚すると決めていた
・秀斗を迎え入れるために早めに子どもをつくろうと蒼と相談していたため、会社には勤めずにフリーランスとして仕事をしている
・蒼のことは家族としての好意を持っており、光希のこともちゃんと愛している
・運命の番(蒼)に出会ったときは本能によって心が惹かれるのを感じたが、秀斗の姿がないのに気づいた瞬間に絶望をして一時期病んでた
※他サイトにも掲載しています
ビーボーイ創作BL大賞3に応募していた作品です
真実の愛とは何ぞや?
白雪の雫
BL
ガブリエラ王国のエルグラード公爵家は天使の血を引いていると言われているからなのか、産まれてくる子供は男女問わず身体能力が優れているだけではなく魔力が高く美形が多い。
そこに目を付けた王家が第一王女にして次期女王であるローザリアの補佐役&婿として次男のエカルラートを選ぶ。
だが、自分よりも美形で全てにおいて完璧なエカルラートにコンプレックスを抱いていたローザリアは自分の生誕祭の日に婚約破棄を言い渡してしまう。
この婚約は政略的なものと割り切っていたが、我が儘で癇癪持ちの王女の子守りなどしたくなかったエカルラートは、ローザリアから言い渡された婚約破棄は渡りに船だったので素直に受け入れる。
晴れて自由の身になったエカルラートに、辺境伯の跡取りにして幼馴染みのカルディナーレが提案してきた。
「ローザリアと男爵子息に傷つけられた心を癒す名目でいいから、リヒトシュタインに遊びに来てくれ」
「お前が迷惑でないと思うのであれば・・・。こちらこそよろしく頼む」
王女から婚約破棄を言い渡された事で、これからどうすればいいか悩んでいたエカルラートはカルディナーレの話を引き受ける。
少しだけですが、性的表現が出てきます。
過激なものではないので、R-15にしています。
瞳の代償 〜片目を失ったらイケメンたちと同居生活が始まりました〜
Kei
BL
昨年の春から上京して都内の大学に通い一人暮らしを始めた大学2年生の黒崎水樹(男です)。無事試験が終わり夏休みに突入したばかりの頃、水樹は同じ大学に通う親友の斎藤大貴にバンドの地下ライブに誘われる。熱狂的なライブは無事に終了したかに思えたが、……
「え!?そんな物までファンサで投げるの!?」
この物語は何処にでもいる(いや、アイドル並みの可愛さの)男子大学生が流れに流されいつのまにかイケメンの男性たちと同居生活を送る話です。
流血表現がありますが苦手な人はご遠慮ください。また、男性同士の恋愛シーンも含まれます。こちらも苦手な方は今すぐにホームボタンを押して逃げてください。
もし、もしかしたらR18が入る、可能性がないこともないかもしれません。
誤字脱字の指摘ありがとうございます
『収納』は異世界最強です 正直すまんかったと思ってる
農民
ファンタジー
「ようこそおいでくださいました。勇者さま」
そんな言葉から始まった異世界召喚。
呼び出された他の勇者は複数の<スキル>を持っているはずなのに俺は収納スキル一つだけ!?
そんなふざけた事になったうえ俺たちを呼び出した国はなんだか色々とヤバそう!
このままじゃ俺は殺されてしまう。そうなる前にこの国から逃げ出さないといけない。
勇者なら全員が使える収納スキルのみしか使うことのできない勇者の出来損ないと呼ばれた男が収納スキルで無双して世界を旅する物語(予定
私のメンタルは金魚掬いのポイと同じ脆さなので感想を送っていただける際は語調が強くないと嬉しく思います。
ただそれでも初心者故、度々間違えることがあるとは思いますので感想にて教えていただけるとありがたいです。
他にも今後の進展や投稿済みの箇所でこうしたほうがいいと思われた方がいらっしゃったら感想にて待ってます。
なお、書籍化に伴い内容の齟齬がありますがご了承ください。
記憶の欠けたオメガがヤンデレ溺愛王子に堕ちるまで
橘 木葉
BL
ある日事故で一部記憶がかけてしまったミシェル。
婚約者はとても優しいのに体は怖がっているのは何故だろう、、
不思議に思いながらも婚約者の溺愛に溺れていく。
---
記憶喪失を機に愛が重すぎて失敗した関係を作り直そうとする婚約者フェルナンドが奮闘!
次は行き過ぎないぞ!と意気込み、ヤンデレバレを対策。
---
記憶は戻りますが、パッピーエンドです!
⚠︎固定カプです
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる