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竜人嫌いの魔族、竜人の子供を育てる
23.シロ、家を建てる
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「…お城は、その時に崩壊したんですか?」
シロは崩れた瓦礫を見回しながら聞いた。
「ああ、もともとドグライアス城は魔王の魔力によって維持されてたんだ。だから魔王がいなくなれば、城も魔力を失って崩壊する。でも新しい魔王が現れたらまた構築される。この100年間は魔王不在だからこんな状態になっちまったけどな」
ルーフはボトルの水を飲み干して深呼吸をした。
「話が長くなっちまったけど、ここからが本題。シロの闇魔力は、魔王の力を継承している。」
「え…何で…僕が?」
「んー、まあ、運が良かったというか、運が悪かったというか…。もらい事故みたいなもんだよ。
100年戦争で魔王様の魔力を分け与えられていた魔族達が、10年前に魔王復活の為に魔王の魔力を集めて放ったんだ。その力がたまたま妊娠していたシロの母親の腹に当たった。お前はその影響を受けて魔王の闇魔力を継承したんだ。その黒い髪と赤い目は『呪われた竜』なんかじゃない。魔王の継承者っていう立派な印だ」
淡々と話すルーフをよそにシロの頭は混乱し始めた。
「僕が魔王の継承者?竜人なのに?」
「魔王に種族は関係ないんだ。闇魔力が1番強い奴が魔王として認められるからな。あと、魔王の継承者っていうのはあくまでも魔王の候補者って話で、魔王にならなきゃいけないわけじゃない。シロはシロの好きなように生きればいいさ。でもな、闇魔力がコントロール出来ないと魔王様のように苦しむ事になる。だから闇魔力を自分のものにするんだ。お前ならきっと出来るよ」
ルーフは立ち上がって伸びをした。
「まあ、とりあえず寝泊まりする場所が必要だ。手始めにこの瓦礫を使って家を作ってみろ!闇魔力でな」
「え、そんな急に言われても…。闇魔力を意識して使った事なんてないですよ?」
「だからやってみるんだろ?魔力の元は心臓にある。心臓から魔力を練り出すイメージで建てたい家を想像するんだ。なんつーか…、うん。とにかくイメージだ!やってみろ!」
「えー…」
シロはよく分からないまま、言われた通りに建てたい家を想像した。
キッチンは広い方がいいよな、窓も大きい方がいい。天窓もあれば夜空が見えて素敵かも。
でも1番大事なのは居心地だよな。ルーフさんの家みたいな落ち着く家がいいな。
ルーフさんと一緒に過ごす家。ああ、なんだか想像するだけで楽しくなってくる。
シロはワクワクしながら目を閉じて両手を構える。
心臓の奥から魔力を練り出すイメージをする。
心臓から血液へ、そして体全身に熱い魔力が駆け巡るような感覚になる。
シロの構えた手の先からは魔力の風が流れ出した。
すると足元から瓦礫がガタガタと動き出す音が聞こえた。
シロの体は熱くなり、ゆっくり呼吸をする。
魔力を練り出す感覚が徐々に掴めてきた。
シロが魔力に集中していると「おお!いい感じだぞ、シロ!」とルーフの明るい声が聞こえた。
「そろそろ魔力を止めろ!こう…なんていうか、魔力をぎゅーってするんだよ!ぎゅーって!」
「ぎ、ぎゅー…?」
ルーフの抽象的すぎる説明を聞いて、シロは「ぎゅーっ!」と叫んで手を握った。
瓦礫のぶつかり合う音と魔力の風が止み、シロの体からどっと力が抜けた。シロがその場に座り込もうとすると、ルーフが体当たりするように抱きついてきた。
「やったな!成功だよ、シロ!ほら見ろっ、家が建った!!やっぱりお前はちゃんと闇魔力が使いこなせるんだ!」
頭をガシガシと撫でるルーフの肩越しには、小さな石レンガの家が見えた。
シロがイメージした家がちゃんと建っていたのだ。
「本当だ…。僕、成功したんですね!やったぁ
!僕の理想の家!!」
シロも嬉しくなってルーフにしがみついた。
「ああ。あとは常に闇魔力を流し続けて家の状態をキープさせるんだ。魔力を流さないと簡単に崩れるからな。最初は魔力を流す意識が必要だが、慣れてくれば寝ていても状態がキープ出来るぞ」
「はい!…へっくしょん!」
土埃のせいでシロがくしゃみをすると、シロの家はガラガラっと音を立てて崩れた。
「……っ!!」
「…ほらな。魔力を切らすと簡単に崩れるだろ」
ルーフは、放心状態になったシロの肩を慰めるように叩いた。
シロは崩れた瓦礫を見回しながら聞いた。
「ああ、もともとドグライアス城は魔王の魔力によって維持されてたんだ。だから魔王がいなくなれば、城も魔力を失って崩壊する。でも新しい魔王が現れたらまた構築される。この100年間は魔王不在だからこんな状態になっちまったけどな」
ルーフはボトルの水を飲み干して深呼吸をした。
「話が長くなっちまったけど、ここからが本題。シロの闇魔力は、魔王の力を継承している。」
「え…何で…僕が?」
「んー、まあ、運が良かったというか、運が悪かったというか…。もらい事故みたいなもんだよ。
100年戦争で魔王様の魔力を分け与えられていた魔族達が、10年前に魔王復活の為に魔王の魔力を集めて放ったんだ。その力がたまたま妊娠していたシロの母親の腹に当たった。お前はその影響を受けて魔王の闇魔力を継承したんだ。その黒い髪と赤い目は『呪われた竜』なんかじゃない。魔王の継承者っていう立派な印だ」
淡々と話すルーフをよそにシロの頭は混乱し始めた。
「僕が魔王の継承者?竜人なのに?」
「魔王に種族は関係ないんだ。闇魔力が1番強い奴が魔王として認められるからな。あと、魔王の継承者っていうのはあくまでも魔王の候補者って話で、魔王にならなきゃいけないわけじゃない。シロはシロの好きなように生きればいいさ。でもな、闇魔力がコントロール出来ないと魔王様のように苦しむ事になる。だから闇魔力を自分のものにするんだ。お前ならきっと出来るよ」
ルーフは立ち上がって伸びをした。
「まあ、とりあえず寝泊まりする場所が必要だ。手始めにこの瓦礫を使って家を作ってみろ!闇魔力でな」
「え、そんな急に言われても…。闇魔力を意識して使った事なんてないですよ?」
「だからやってみるんだろ?魔力の元は心臓にある。心臓から魔力を練り出すイメージで建てたい家を想像するんだ。なんつーか…、うん。とにかくイメージだ!やってみろ!」
「えー…」
シロはよく分からないまま、言われた通りに建てたい家を想像した。
キッチンは広い方がいいよな、窓も大きい方がいい。天窓もあれば夜空が見えて素敵かも。
でも1番大事なのは居心地だよな。ルーフさんの家みたいな落ち着く家がいいな。
ルーフさんと一緒に過ごす家。ああ、なんだか想像するだけで楽しくなってくる。
シロはワクワクしながら目を閉じて両手を構える。
心臓の奥から魔力を練り出すイメージをする。
心臓から血液へ、そして体全身に熱い魔力が駆け巡るような感覚になる。
シロの構えた手の先からは魔力の風が流れ出した。
すると足元から瓦礫がガタガタと動き出す音が聞こえた。
シロの体は熱くなり、ゆっくり呼吸をする。
魔力を練り出す感覚が徐々に掴めてきた。
シロが魔力に集中していると「おお!いい感じだぞ、シロ!」とルーフの明るい声が聞こえた。
「そろそろ魔力を止めろ!こう…なんていうか、魔力をぎゅーってするんだよ!ぎゅーって!」
「ぎ、ぎゅー…?」
ルーフの抽象的すぎる説明を聞いて、シロは「ぎゅーっ!」と叫んで手を握った。
瓦礫のぶつかり合う音と魔力の風が止み、シロの体からどっと力が抜けた。シロがその場に座り込もうとすると、ルーフが体当たりするように抱きついてきた。
「やったな!成功だよ、シロ!ほら見ろっ、家が建った!!やっぱりお前はちゃんと闇魔力が使いこなせるんだ!」
頭をガシガシと撫でるルーフの肩越しには、小さな石レンガの家が見えた。
シロがイメージした家がちゃんと建っていたのだ。
「本当だ…。僕、成功したんですね!やったぁ
!僕の理想の家!!」
シロも嬉しくなってルーフにしがみついた。
「ああ。あとは常に闇魔力を流し続けて家の状態をキープさせるんだ。魔力を流さないと簡単に崩れるからな。最初は魔力を流す意識が必要だが、慣れてくれば寝ていても状態がキープ出来るぞ」
「はい!…へっくしょん!」
土埃のせいでシロがくしゃみをすると、シロの家はガラガラっと音を立てて崩れた。
「……っ!!」
「…ほらな。魔力を切らすと簡単に崩れるだろ」
ルーフは、放心状態になったシロの肩を慰めるように叩いた。
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