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竜人嫌いの魔族、竜人の子供を育てる

10.魔力と魔法

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ー…『こんな暮らしで満足していないでもっと外に目を向けてみろよ』

ルーフにその話をされてからすでに2週間ほど経っているのに、シロはまだその言葉に落ち込んでいた。

(ずっとルーフさんと一緒に暮らしたいと思っていたけど、いつかは外に出ろって事だよな…)

シロは教室の窓から外の景色を眺めながらため息をついた。

「シローっ、元気ない?疲れちゃったの?」

「今日もレニー先生の所に行くのか?たまには一緒に遊ぼうぜ!」

話しかけてきたのはアリスとルカ。
転入して暫くはいろんな生徒に話しかけられていたシロだったが、結局この2人と話す事が1番多かった。

「ううん、ちょっと考え事してた。今日はレニー先生の病院はお休みだから僕も休みなんだ。でも夕食の準備をしたいから帰るよ」

「夕食の準備なんて後でいいだろ?これからアリスと学校の庭で魔法の練習するんだ!シロも付き合えよ」

「そうよ。たまには私たちと一緒に過ごしましょうよ」

ルーフも今日は出掛けると言っていたから帰りは遅いだろう。確かに夕食の準備は後でもいい。

「んー…じゃあ少しだけ」

どんな魔法を練習するのか気になったシロは2人に付き合う事にした。

「人間はあまり魔法が使えないって聞いたんだけど、ルカは使えるの?」

「俺は全然使えない。でも魔石があれば一般魔法レベルは人間でも使えるんだ。」

そう言ってルカは青い石が付いたネックレスをシロに見せた。海のように真っ青な石は、水面のようにキラキラと輝いている。

「きれいな石だね。これが魔石?」

「そう。魔力の石だから魔石。これを使って魔法の練習をするんだ。」

「シロはもう一般魔法は使えるんでしょう?私たちにコツを教えてよ!」

「僕も一般魔法は最近習得したばかりだから教えられるほど上手くないよ?」

「じゃあ3人で練習しようぜ!」

ルカはシロとアリスの肩を組みスキップしながら中庭へと向かった。

庭にはすでに授業を終えた生徒たちが日向ぼっこをしたりスポーツをしたりして過ごしている。
中には魔法の練習をしている生徒もいて、所々で炎や水が勢いよく現れては消えていく。

シロたちはなるべく他の生徒から離れた場所を探して腰を下ろした。

「ところでシロの魔力は何?やっぱり竜人だから光魔力かしら?ちなみに私は雷魔力よ」

そう言ってアリスが指を鳴らすと小さな稲妻が現れた。稲妻はバチバチと音を立てながらアリスの周りを一周して消えた。

「わあ、すごいね」

シロが感心して拍手をするとアリスは「えへへっ。でもまだしっかり操れないんだ」と照れくさそうに笑った。

「僕、自分の魔力を意識して使った事ないんだ。そもそも魔力と魔法ってどう違うの?」

「えー、シロはそんな事も知らないで魔法を使ってたのか?魔力は魔法を使う時にベースになる属性みたいなものだよ。アリスだったら雷魔力をベースに火魔法や水魔法を使うんだ。自分の魔力を知る事でより正確な魔法が使えるようになるんだよ」

「そうそう。だから私は火や熱や光の魔法は得意なんだけど、水や土の魔法は苦手なの。持ってる魔力によって魔法の向き不向きがあるのよ。その点、光魔力と闇魔力ははどんな魔法にも対応できるから憧れよね」

シロは今まで感覚だけで魔法を使っていた。祖父やジンからも魔力の説明はなく、とにかくいかに威力のある攻撃魔法を使えるかを教えられてきた。
シロ自身も魔法は使えればいいと思っていたが、同い年のルカたちがちゃんと魔法の仕組みを理解しているのに、自分はまったく理解していなかった事が恥ずかしくなり、カバンの中から魔法学の教科書を出した。

「2人はよく知ってるんだね。僕もちゃんと勉強しなくちゃ」

そう言ってシロが教科書を開いた瞬間、突風が吹き教科書は遠くまで飛ばされた。
周りを見ると離れた場所で年上の魔族達が風魔法で遊んでいた。彼らの放った風魔法がシロたちに直撃したのだった。彼らは謝る事はせず、シロたちを見てニヤニヤしている。

「なんだアイツら。わざと俺たちに魔法を放ったみたいじゃないか」

ルカは怒った顔で魔族たちを睨んだ。

「ルカ、睨まないで。上級生に目を付けられたら厄介だわ」

アリスは冷静な態度でルカを宥めながら「場所を移動しましょう」と言って立ち上がった。

「ちょっと待ってて。僕、教科書を拾ってくる」

シロは遠くまで飛ばされてしまった教科書を取りに走った。
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