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竜人嫌いの魔族、竜人の子供を育てる
7.喧嘩
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ルーフとシロは校内案内地図の前に立った。
「んーと、1年生のクラスはー…」
ルーフは指で地図を辿りながら教室の場所を探す。
「さっきネイト先生に聞けば良かったですね」
「だなー。あ、分かった、ここだ。西の一番奥だって。行くぞ」
ルーフが歩き出すと、シロもその後をとぼとぼと歩き出す。
二、三度ルーフの後ろ姿をチラチラと見て、少し悩んだ後シロは勇気を出して聞いた。
「…あの、ルーフさんとネイト先生はお知り合いなんですか?」
「いや、赤の他人だな。へへっ、でも小さい街だからすれ違った事くらいはあるかもな」
「…はは、そうなんですね。」
ルーフの適当な答えにシロは複雑な思いを抱いた。
ルーフのネイトに対する接し方は、レニーやユーロンとは明らかに違っていた。その違和感がどうしても気になってしまう。でもこれ以上ルーフに聞いても答えてくれないだろうし、そもそも一緒に暮らす条件としてルーフの行動に干渉するな、とも釘を刺されている。
(なんでこんなにモヤモヤするんだろう…。僕はルーフさんの側にいるだけでいいと思っていただけなのに。)
「あっれー?ルーフじゃん!よっ、久しぶり!」
「あ?」
二人を呼び止めたのは、小柄な体型で茶色い髪と金色の大きな瞳をしたエプロン姿の青年だった。
見た目はほぼ人間だが、頭には焦げ茶色の小さな耳とお尻にはクルンと丸まった尻尾が付いている。
「俺だよ、リス魔族のグリだ」
「うわっ、グリかよ!嘘だろっ、お前こんなとこで何やってんだよ!」
リス魔族のグリは、ドグライアス城で調理係として働いた魔族でルーフの飲み仲間だった。城で働いていた頃はよく飲みに出掛けていたが、城が崩壊後はお互いの安否も分からず疎遠になっていた。
グリは両手をブンブンと振って嬉しそうに近付いてきた。ルーフも珍しく笑顔で両手を広げた。
久し振りの再会に抱擁でも交わすのかとシロがつまらなそうな顔で見ていた瞬間、グリは走ってきた勢いでルーフに飛び蹴りをした。
ルーフは直ぐに両手で防御したが、小柄なグリの蹴りは重く、ルーフは壁まで飛ばされた。
「え!?ルーフさん!!な、なんで!?」
意味の分からないグリの行動にシロが叫ぶと、直ぐに戻ってきたルーフに「シロ、下がってろ」と言った。今度はルーフがグリを殴った。グリも直ぐに防御体勢を取ったが、ルーフの速さに勝てず拳が頬にヒットする。急に始まった喧嘩に戸惑うシロだったが、二人の表情は生き生きしていて楽しそうだ。
周りで遊んでいた生徒も二人の喧嘩の様子をみようと集まりワーワーと野次が飛交い、ルーフとグリの喧嘩は激しさを増す。予鈴のベルが鳴っても誰一人校舎へ戻らない。
「いい加減にしなさいっ!!」
よく響く怒鳴り声が学校中に聞こえた瞬間、ルーフとグリに大量の水が落ちた。ずぶ濡れになった二人の動きがやっと止まった。そして声の主を知っている生徒たちはあっという間に教室へ逃げていった。
現れたのは修道服を着た女性竜人。高身長と絹のような白く長い髪と水色の瞳で整った顔は怒りに満ちている。
「生徒同士ならまだしも、なぜ保護者と職員が喧嘩をしているのですか!頭を冷やしなさい!!」
かなり迫力のある怒鳴り声にも関わらず、ルーフとグリはキョトンとした顔をした。
「あ?職員って…、まさかグリお前、教会で働いてるのか!?うははっ!!ありえねぇ!こいつに信仰心なんか一切ないぞ!祈る時なんてせいぜい博打の時ぐらいだろ!!あひゃひゃひゃっ!!」
「ルーフこそ保護者!??ぜってぇ嘘だろ!!あははっ!こんな無関心野郎が子育てなんかするわけない!自分中心快楽主義の酒クズ野郎だぜぇ!?そいつが保護者ぁ?ありえねぇー!!」
笑い転げる二人に女性竜人は笑顔で剣を抜いた。
「頭が冷えないようなら、いっそ切り落としましょうか?」
命の危険を感じた二人は、あっという間に静かになり「じゃあまたな」と言ってグリはその場を去った。
女性竜人はため息をつき「私は一年担当教師のアリーと申します。シロ君は私が教室へ連れて行きますので、ルーフさんは応接室へ行ってください」と呆れた顔で言った。
「んーと、1年生のクラスはー…」
ルーフは指で地図を辿りながら教室の場所を探す。
「さっきネイト先生に聞けば良かったですね」
「だなー。あ、分かった、ここだ。西の一番奥だって。行くぞ」
ルーフが歩き出すと、シロもその後をとぼとぼと歩き出す。
二、三度ルーフの後ろ姿をチラチラと見て、少し悩んだ後シロは勇気を出して聞いた。
「…あの、ルーフさんとネイト先生はお知り合いなんですか?」
「いや、赤の他人だな。へへっ、でも小さい街だからすれ違った事くらいはあるかもな」
「…はは、そうなんですね。」
ルーフの適当な答えにシロは複雑な思いを抱いた。
ルーフのネイトに対する接し方は、レニーやユーロンとは明らかに違っていた。その違和感がどうしても気になってしまう。でもこれ以上ルーフに聞いても答えてくれないだろうし、そもそも一緒に暮らす条件としてルーフの行動に干渉するな、とも釘を刺されている。
(なんでこんなにモヤモヤするんだろう…。僕はルーフさんの側にいるだけでいいと思っていただけなのに。)
「あっれー?ルーフじゃん!よっ、久しぶり!」
「あ?」
二人を呼び止めたのは、小柄な体型で茶色い髪と金色の大きな瞳をしたエプロン姿の青年だった。
見た目はほぼ人間だが、頭には焦げ茶色の小さな耳とお尻にはクルンと丸まった尻尾が付いている。
「俺だよ、リス魔族のグリだ」
「うわっ、グリかよ!嘘だろっ、お前こんなとこで何やってんだよ!」
リス魔族のグリは、ドグライアス城で調理係として働いた魔族でルーフの飲み仲間だった。城で働いていた頃はよく飲みに出掛けていたが、城が崩壊後はお互いの安否も分からず疎遠になっていた。
グリは両手をブンブンと振って嬉しそうに近付いてきた。ルーフも珍しく笑顔で両手を広げた。
久し振りの再会に抱擁でも交わすのかとシロがつまらなそうな顔で見ていた瞬間、グリは走ってきた勢いでルーフに飛び蹴りをした。
ルーフは直ぐに両手で防御したが、小柄なグリの蹴りは重く、ルーフは壁まで飛ばされた。
「え!?ルーフさん!!な、なんで!?」
意味の分からないグリの行動にシロが叫ぶと、直ぐに戻ってきたルーフに「シロ、下がってろ」と言った。今度はルーフがグリを殴った。グリも直ぐに防御体勢を取ったが、ルーフの速さに勝てず拳が頬にヒットする。急に始まった喧嘩に戸惑うシロだったが、二人の表情は生き生きしていて楽しそうだ。
周りで遊んでいた生徒も二人の喧嘩の様子をみようと集まりワーワーと野次が飛交い、ルーフとグリの喧嘩は激しさを増す。予鈴のベルが鳴っても誰一人校舎へ戻らない。
「いい加減にしなさいっ!!」
よく響く怒鳴り声が学校中に聞こえた瞬間、ルーフとグリに大量の水が落ちた。ずぶ濡れになった二人の動きがやっと止まった。そして声の主を知っている生徒たちはあっという間に教室へ逃げていった。
現れたのは修道服を着た女性竜人。高身長と絹のような白く長い髪と水色の瞳で整った顔は怒りに満ちている。
「生徒同士ならまだしも、なぜ保護者と職員が喧嘩をしているのですか!頭を冷やしなさい!!」
かなり迫力のある怒鳴り声にも関わらず、ルーフとグリはキョトンとした顔をした。
「あ?職員って…、まさかグリお前、教会で働いてるのか!?うははっ!!ありえねぇ!こいつに信仰心なんか一切ないぞ!祈る時なんてせいぜい博打の時ぐらいだろ!!あひゃひゃひゃっ!!」
「ルーフこそ保護者!??ぜってぇ嘘だろ!!あははっ!こんな無関心野郎が子育てなんかするわけない!自分中心快楽主義の酒クズ野郎だぜぇ!?そいつが保護者ぁ?ありえねぇー!!」
笑い転げる二人に女性竜人は笑顔で剣を抜いた。
「頭が冷えないようなら、いっそ切り落としましょうか?」
命の危険を感じた二人は、あっという間に静かになり「じゃあまたな」と言ってグリはその場を去った。
女性竜人はため息をつき「私は一年担当教師のアリーと申します。シロ君は私が教室へ連れて行きますので、ルーフさんは応接室へ行ってください」と呆れた顔で言った。
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