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竜人嫌いの魔族、竜人の子供を育てる
6.学校
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翌日、ユーロンから登校初日はシロに同行するように言われていたルーフは、シロと一緒に学校へやって来た。
ミール王国が管理する教会に併設された学校には、10歳から15歳までの子供たちが通っている。
建物の規模は小さいが、教室や図書館など施設はしっかりした学校だ。
午前中は義務教育として一般教養や魔法を学び、午後は進学希望者は自由参加の授業を受け、稼業のある者達は家に帰って働きに出る。
ちなみにシロも午後はレニーの病院で働く事を希望している。
広い庭では人間、竜人そして魔族の子供たちが一緒に駆け回って遊んでいる。
ルーフの子供の頃ではありえない光景だった。
「はぁー、すげぇな。本当に種族間の隔たりがねぇんだなぁ」
改めて時代は変わったんだと実感しながらルーフはその様子を眺めていると、遠くから牧師の格好をした男性がやってきた。
貧相な体と顔によく似合うダサい眼鏡をかけたその牧師は、気弱そうな笑顔でルーフたちに話しかけてきた。
「こんにちは。シロくんとルーフさんですよね。お二人の事はユーロン師団長からお聞きしています。ようこそ我が学校へ。私は牧師と教師をやっているネイト・ハリスです。」
「こんにちは、ネイト先生。僕がシロです。よろしくお願いします」
「シロ君はしっかりしているんですね。こちらこそよろしくお願いします」
ルーフは牧師の顔をまじまじと見た。
(んー?この貼り付けたような笑顔の男はどこかで見たような…あ。)
「ああ、あんた、この前バーで会った奴じゃねぇか!」
思い出したルーフは指をパチンと鳴らし、ネイトの肩を組んだ。
「へ?」
ネイトは目をぱちぱちさせてから、顔を一気に真っ青にさせた。
「あ…」
ネイトと名乗る牧師は、ちょうどシロを拾った次の日にバーで出会い、その場限りの体の付き合いをした男だった。
「ほら、俺だよ。バーで飲んだ後、一緒にホテルに行った…」
「お、おいっ!!」
ネイトは慌ててルーフの口を手で押さえ「ひ、人違いじゃないですかぁ?」と言った後、シロに聞こえないよう小声で訴えた。
「あの夜のことは全て忘れたっ。あんたも後腐れのない付き合いを望んだろ?俺とあんたは今日初めて会った赤の他人だっ」
どうやらネイトは、あの夜の出来事は知られたくないらしい。
まあ、そりゃ聖職者で教師なら当然か。
ルーフは納得してネイトの肩をぱっと離した。
「ははっ、悪かった。うん、人違いだな。えーと、ネイト先生?だっけか。シロをよろしくな」
「い、いえ。こちらこそ、よろしくお願いします」
ネイトはズレた眼鏡を指で直して頭を下げた。
シロはそんな二人の様子を黙って見ていた。
「で、俺はもう帰っていいのか?」
ルーフが欠伸をしながら聞くと、ネイトは目を逸らしながら「ー…まだ保護者の方へ説明がございますのでシロ君を教室まで送り届けた後、ルーフさんは応接室へ行っていただけますか?」と早口で答えた。
言葉は丁寧だが、ネイトの顔には思いっきり「早く帰ってくれ」と書いてある。
よほどルーフとは関わりたくないのだろう。ルーフも一夜限りの相手とは関わるつもりはないので、こういう態度をされても気にしない。
「だって。行くぞ、シロ」
ルーフはすぐにネイトに背を向け、教室に向かって歩き出した。
「あ、はい」
シロはネイトに頭を下げて、ルーフの後を付いていった。
ミール王国が管理する教会に併設された学校には、10歳から15歳までの子供たちが通っている。
建物の規模は小さいが、教室や図書館など施設はしっかりした学校だ。
午前中は義務教育として一般教養や魔法を学び、午後は進学希望者は自由参加の授業を受け、稼業のある者達は家に帰って働きに出る。
ちなみにシロも午後はレニーの病院で働く事を希望している。
広い庭では人間、竜人そして魔族の子供たちが一緒に駆け回って遊んでいる。
ルーフの子供の頃ではありえない光景だった。
「はぁー、すげぇな。本当に種族間の隔たりがねぇんだなぁ」
改めて時代は変わったんだと実感しながらルーフはその様子を眺めていると、遠くから牧師の格好をした男性がやってきた。
貧相な体と顔によく似合うダサい眼鏡をかけたその牧師は、気弱そうな笑顔でルーフたちに話しかけてきた。
「こんにちは。シロくんとルーフさんですよね。お二人の事はユーロン師団長からお聞きしています。ようこそ我が学校へ。私は牧師と教師をやっているネイト・ハリスです。」
「こんにちは、ネイト先生。僕がシロです。よろしくお願いします」
「シロ君はしっかりしているんですね。こちらこそよろしくお願いします」
ルーフは牧師の顔をまじまじと見た。
(んー?この貼り付けたような笑顔の男はどこかで見たような…あ。)
「ああ、あんた、この前バーで会った奴じゃねぇか!」
思い出したルーフは指をパチンと鳴らし、ネイトの肩を組んだ。
「へ?」
ネイトは目をぱちぱちさせてから、顔を一気に真っ青にさせた。
「あ…」
ネイトと名乗る牧師は、ちょうどシロを拾った次の日にバーで出会い、その場限りの体の付き合いをした男だった。
「ほら、俺だよ。バーで飲んだ後、一緒にホテルに行った…」
「お、おいっ!!」
ネイトは慌ててルーフの口を手で押さえ「ひ、人違いじゃないですかぁ?」と言った後、シロに聞こえないよう小声で訴えた。
「あの夜のことは全て忘れたっ。あんたも後腐れのない付き合いを望んだろ?俺とあんたは今日初めて会った赤の他人だっ」
どうやらネイトは、あの夜の出来事は知られたくないらしい。
まあ、そりゃ聖職者で教師なら当然か。
ルーフは納得してネイトの肩をぱっと離した。
「ははっ、悪かった。うん、人違いだな。えーと、ネイト先生?だっけか。シロをよろしくな」
「い、いえ。こちらこそ、よろしくお願いします」
ネイトはズレた眼鏡を指で直して頭を下げた。
シロはそんな二人の様子を黙って見ていた。
「で、俺はもう帰っていいのか?」
ルーフが欠伸をしながら聞くと、ネイトは目を逸らしながら「ー…まだ保護者の方へ説明がございますのでシロ君を教室まで送り届けた後、ルーフさんは応接室へ行っていただけますか?」と早口で答えた。
言葉は丁寧だが、ネイトの顔には思いっきり「早く帰ってくれ」と書いてある。
よほどルーフとは関わりたくないのだろう。ルーフも一夜限りの相手とは関わるつもりはないので、こういう態度をされても気にしない。
「だって。行くぞ、シロ」
ルーフはすぐにネイトに背を向け、教室に向かって歩き出した。
「あ、はい」
シロはネイトに頭を下げて、ルーフの後を付いていった。
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