竜人嫌いの一匹狼魔族が拾った竜人を育てたらすごく愛された。

そら。

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竜人嫌いの魔族、竜人の子供を拾う。

21.闇魔法

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懐かしい闇魔力のオーラを感じ取り、ルーフは言葉を失った。

ローハン公爵を闇魔法で締め上げ、殺気立った闇魔力のオーラを放っているのは間違いなくシロだ。

普通、竜人は光魔力に特化し、魔族は闇魔力に特化している。

竜人のシロがここまで強大な闇魔力を放つ事なんてあり得ない。

しかも同じ闇魔力といえど、使う者によってオーラの色や気配にはそれぞれの個性があり、同じモノはない。しかし今、シロが放っているオーラは、ルーフが以前仕えていた魔王と全く同じモノだった。

「…うそだろ。なんでシロが…。」

100年ぶりに肌に感じた魔王のオーラに、ルーフの瞳から自然と涙が溢れ出した。




ローハン公爵の顔はすでに土色になり、口から泡を吹き出した。動揺する目に冷たさは消え、恐怖で血走っている。

シロは公爵より自分が優位に立った事を理解した。
自分があと少し拘束を強めれば、彼は簡単に死ぬだろう。

ー…こんなにも簡単に殺せるものだったのか。

「僕はずっとあなたが怖かった。絶対的に服従すべき主だと思っていたし、あの地下室が僕の世界だったから。外に出て自分の無力さを知ったけど、あなたも愚かな弱者だったんだね。」

シロは無表情で魔力を強めようとした瞬間、大量の光魔法の雨が降り注いだ。
まるで炎を沈下させるように、シロの闇魔力のオーラは消え、ローハン公爵は拘束が解かれ、その場に倒れ込んだ。

シロが空を見上げれば、数名の竜人たちがこちらへ向かって来る。

「シロっ!!」

ルーフの声でシロが我に返ると、そのまま抱き抱えられた。

「ルーフさんっ!大丈夫ですか!?」

「ああ、それより逃げるぞっ!ありゃ竜人聖騎士だ。お前が闇魔法を使ったのがバレたら捕まるぞ。」

シロを抱いて逃げようとしたルーフの足元の草が伸び両足を固定された。

「くそっ!」

「安心しろ。捕まえにきたのはお前たちじゃない。」

「あぁ?」

そう言って2人の前に降り立ったのは、黒髪、黒目で強面をした竜人だった。
ルーフはそっとシロの顔を腕で隠した。

「俺の名前はユーロン・シェン。竜人聖騎士団長だ。そこで伸びてるゲイル・ローハン公爵を捕まえにきたんだ。」

ユーロンがローハン公爵を指差すと、すでに他の竜人聖騎士たちによって縄をかけられていた。

「へぇ。あのおっさん、何かやらかしたのか?」

ルーフは警戒しながらユーロンに尋ねた。

「まあな。それより随分派手に暴れたみたいだな。さっきの闇魔法を使ったのはその子か?」

ユーロンがルーフに一歩近づき、シロを指差した。ルーフはさらにシロをきつく抱きしめ、ユーロンを近づけさせないように肩を向けた。

「どうかな。俺は竜人聖騎士お前らに協力しねぇぞ」

「はぁ。そう警戒するなよ。俺たちの目的は…」

ユーロンが頭を掻きながら説明しようとした時、ローハン公爵が目を覚まし暴れ出した。

「そのガキだ!そのガキは強大な闇魔力を持っている!!そいつは『呪われた竜』なんだっ!だから私は地下室に閉じ込めていたんだっ!!竜人世界の平和のためになっ!」

ローハン公爵の言葉に騎士たちの視線がシロに集まった。

『呪われた竜』なんて屋敷では散々言われてきた言葉だ。だからもう慣れている。慣れていても、シロの心を冷たく突き刺した。
シロの体が少し強張ったのを感じたルーフは、シロの背中をぽんぽんと叩き、血で汚れた顔でニカッと笑った。

「大丈夫だ。俺が守ってやる」

「…ルーフさん」

ルーフの優しさがじんわりと心を温めてくれる。しかし左目の傷を見て、シロは罪悪感で苦しくなった。

ー…僕は本当に『呪われた竜』だ。
ルーフさんは僕と関わったせいでこんなに傷付いてしまった。全部、僕のせいだ。
公爵の言うとおり、僕はこれからも地下室で暮らすべきなんじゃないだろうか。そうすればもう誰も傷付けない。

シロは掴んでいたルーフの腕をゆっくり離した。

するとユーロンがため息をついて、ローハン公爵の前に立った。

「黙れ、ゲイル・ローハン公爵。いや、ゲイル・ローハン。お前を虐待・監禁の罪で身柄を確保する。もちろん爵位も剥奪だ。俺たちがここへ来た目的はお前を捕まえるためだ。」
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