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竜人嫌いの魔族、竜人の子供を拾う。
20.一番好きな声
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立ち込める煙の中からシロは湖に向かって駆け出した。
自分の放った熱魔法は想像以上の威力だったが、瞬時に防御魔法を使い自爆を防いだ。
捨て駒として育てられていたシロは、ただひたすら攻撃魔法を叩き込まれ、己を守る防御魔法は教えられていなかった。
しかしルーフの戦い方を見て学び、自然と習得できていた。
「またルーフさんに助けられた…。」
ルーフが大怪我をしていたら、命を落としてしまっていたら、そんな恐怖と不安で涙が溢れ出しそうになるのを堪え、シロは全力疾走した。
「地下室に戻れ。」
背筋が凍るような低い声にシロが振り返ると、ローハン公爵が大剣を振りかざしていた。
「…っ!!」
ローハン公爵は先ほどの爆発で体中に火傷を負っているが、治癒魔法を使いどんどん元通りに治っていく。
「呪われたお前が外に出るな。」
稲妻が走る雷魔法を大剣に纏わせ、雷鳴と共にローハン公爵の斬撃がシロを襲った。
もうダメだー…。
防御魔法も間に合わないと覚悟したシロは、目を瞑った。しかし攻撃はいつになっても当たらず、代わりに腹を掴まれた。
「シロ、よく堪えたな。」
シロの1番好きな声が耳元で聞こえた。
目を開ければ、ずぶ濡れのルーフがシロを抱えて空高く飛び上がっていた。
「ルーフさんっ!大丈夫だったんですか!?」
「当たり前だ。回復したって言っただろ。シロ、竜になれ。竜の鱗は世界一硬度が高い。自分の身は自分で守るんだ。」
シロは言われた通り、すぐに竜の姿になった。しかし自分の身は守れてもルーフを守れない。
このまま公爵から逃げ切る事だって難しい。
「で、でもルーフさんは…?」
「だからあいつをぶっ飛ばしてやる。シロ、俺の背中に引っ付いてろよ!!」
ルーフは姿勢を変え、公爵目掛けて突っ込んだ。
「下等魔族がまだ生きていたかー…。」
ローハン公爵は再び大剣を構えて斬撃を放つ。
ルーフは空中で斬撃を避け、攻撃魔法を繰り出した。
2人の距離がどんどんと近づき、ルーフは拘束魔法でローハン公爵を締め上げ、鉤爪でとどめを刺そうとした。
しかしローハン公爵は無理やり拘束魔法を断ち切りすぐに大剣でルーフを切りつけ、ルーフの血が飛び散った。
「ぐあっー…!」
「ルーフさんっ!!」
瞬時に避けたルーフだったが、剣先が左目に当たりドクドクと血が流れ、治癒魔法をかけても中々治らない。
視界が真っ赤になり、ルーフは膝を付いた。
「ルーフさんっ!」
シロも人間の姿に戻り、ルーフに治癒魔法をかけた。しかし血が流れるばかりで全く治らない。
シロの手がルーフの血で真っ赤に染まっていく。
「これで最後だ。」
今度はローハン公爵がルーフにとどめを刺そうと構えをした瞬間、公爵の体が闇魔法で拘束されていた。
「ー…っ!」
あまりにも強力な闇魔法の拘束は、何をしても全く外れない。
それどころか公爵の首や体だけではなく、心臓、内臓までも締め上げていく。
ローハン公爵はあまりの苦しみに意識が飛びそうなり、人生で初めて死の恐怖を感じた。
こんなに禍々しい闇魔法は感じた事がない。こんな闇魔法を使えるのは魔王ぐらいだ。
目玉を必死に動かし、闇魔法を使った人物を探す。すぐにその人物と目が合い、誰か理解した。
怒りに満ちた鮮血の眼光が公爵を捉えている。
強大な殺意を持った闇魔力のオーラが公爵の周りを取り囲む。
「ひっ…!!」
その人物は、目の前にいる自分の孫だった。
自分の放った熱魔法は想像以上の威力だったが、瞬時に防御魔法を使い自爆を防いだ。
捨て駒として育てられていたシロは、ただひたすら攻撃魔法を叩き込まれ、己を守る防御魔法は教えられていなかった。
しかしルーフの戦い方を見て学び、自然と習得できていた。
「またルーフさんに助けられた…。」
ルーフが大怪我をしていたら、命を落としてしまっていたら、そんな恐怖と不安で涙が溢れ出しそうになるのを堪え、シロは全力疾走した。
「地下室に戻れ。」
背筋が凍るような低い声にシロが振り返ると、ローハン公爵が大剣を振りかざしていた。
「…っ!!」
ローハン公爵は先ほどの爆発で体中に火傷を負っているが、治癒魔法を使いどんどん元通りに治っていく。
「呪われたお前が外に出るな。」
稲妻が走る雷魔法を大剣に纏わせ、雷鳴と共にローハン公爵の斬撃がシロを襲った。
もうダメだー…。
防御魔法も間に合わないと覚悟したシロは、目を瞑った。しかし攻撃はいつになっても当たらず、代わりに腹を掴まれた。
「シロ、よく堪えたな。」
シロの1番好きな声が耳元で聞こえた。
目を開ければ、ずぶ濡れのルーフがシロを抱えて空高く飛び上がっていた。
「ルーフさんっ!大丈夫だったんですか!?」
「当たり前だ。回復したって言っただろ。シロ、竜になれ。竜の鱗は世界一硬度が高い。自分の身は自分で守るんだ。」
シロは言われた通り、すぐに竜の姿になった。しかし自分の身は守れてもルーフを守れない。
このまま公爵から逃げ切る事だって難しい。
「で、でもルーフさんは…?」
「だからあいつをぶっ飛ばしてやる。シロ、俺の背中に引っ付いてろよ!!」
ルーフは姿勢を変え、公爵目掛けて突っ込んだ。
「下等魔族がまだ生きていたかー…。」
ローハン公爵は再び大剣を構えて斬撃を放つ。
ルーフは空中で斬撃を避け、攻撃魔法を繰り出した。
2人の距離がどんどんと近づき、ルーフは拘束魔法でローハン公爵を締め上げ、鉤爪でとどめを刺そうとした。
しかしローハン公爵は無理やり拘束魔法を断ち切りすぐに大剣でルーフを切りつけ、ルーフの血が飛び散った。
「ぐあっー…!」
「ルーフさんっ!!」
瞬時に避けたルーフだったが、剣先が左目に当たりドクドクと血が流れ、治癒魔法をかけても中々治らない。
視界が真っ赤になり、ルーフは膝を付いた。
「ルーフさんっ!」
シロも人間の姿に戻り、ルーフに治癒魔法をかけた。しかし血が流れるばかりで全く治らない。
シロの手がルーフの血で真っ赤に染まっていく。
「これで最後だ。」
今度はローハン公爵がルーフにとどめを刺そうと構えをした瞬間、公爵の体が闇魔法で拘束されていた。
「ー…っ!」
あまりにも強力な闇魔法の拘束は、何をしても全く外れない。
それどころか公爵の首や体だけではなく、心臓、内臓までも締め上げていく。
ローハン公爵はあまりの苦しみに意識が飛びそうなり、人生で初めて死の恐怖を感じた。
こんなに禍々しい闇魔法は感じた事がない。こんな闇魔法を使えるのは魔王ぐらいだ。
目玉を必死に動かし、闇魔法を使った人物を探す。すぐにその人物と目が合い、誰か理解した。
怒りに満ちた鮮血の眼光が公爵を捉えている。
強大な殺意を持った闇魔力のオーラが公爵の周りを取り囲む。
「ひっ…!!」
その人物は、目の前にいる自分の孫だった。
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