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竜人嫌いの魔族、竜人の子供を拾う。
16.守りたい
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ジンが消え、湖畔は再び静寂を取り戻すとルーフはドサっと倒れ込んだ。
「ルーフさん!!」
シロは慌てて駆け寄った。ルーフの腕からはドクドクと血が流れている。
「ルーフさん、血が…。どうしよう、僕、治癒魔法使えない…。ごめん、ごめんなさいっ。僕のせいで…。」
「つ、疲れた…。」
撃たれた腕も痛むが、魔力を消費しすぎた。
正直ジンはかなり強かった。長期戦になったら勝てないと思ったルーフは、とにかく短時間で決着をつけるため、ありったけの魔力を使って応戦したのだ。
拘束魔法を放った時からルーフの体力は限界だった。ほぼ意地と強がりで立っていたようなものだ。
「俺も体力なくなったなぁ…。」
「ルーフさんっ!死なないでぇー!」
シロは大泣きしながらルーフに抱きついた。
「あほ、死なねぇよ。でもさすがに魔力残ってないから治癒魔法は使えねぇや。シロぉ、俺の腕治してくれ。」
「だから僕、治癒魔法使えないんですよぉ…。」
「使った事がない、だろ?大丈夫だ、お前なら出来る。お前に治癒魔法使ってやった事あるだろ。あれ思い出してさ、やってみろよ。」
ルーフは目を開けている事も億劫になり、目を閉じた。
シロはこのままルーフが目を開けなくなったらどうしよう、という恐怖感で覚悟を決めた。
「ううっ…、はいっ。」
涙を拭って、ルーフの肩に手をかざす。
レニーやルーフに怪我を治してもらった時、温かくて優しい魔力を感じた。あの時の事をイメージさせるんだ。
ー…『大丈夫だ、お前なら出来る。』
ルーフの言葉を反芻させて、シロは魔力を使った。
血が止まり、傷口が徐々に小さくなり、弾傷は跡形もなく消えた。
「で、出来た…。ルーフさん、治癒魔法出来ました!」
ルーフの方を向くと、すでに寝息を立てて爆睡していた。
(僕のために必死で戦ってくれたんだ。それなのに、僕はただ守られてるだけで何も出来なかった…。)
シロはルーフの胸に顔を埋めて抱きついた。
ジンの洗脳魔法を断ち切った頼もしい背中を思い出す。
ー…『こいつの名前はシロだ。クズじゃねぇ。』
唯一、僕を名前で呼んでくれる人。
ー…『俺と一緒にいたいなら、絶対離れるなよ。』
僕の肩を引き寄せ守ってくれる人。
ー…『シロ、大丈夫か?』
僕の背中を支えてくれる人。
助けてもらってばかりじゃダメだ。僕だってこの人を守りたい。心も体も強くならなくちゃ。
「ルーフさん!!」
シロは慌てて駆け寄った。ルーフの腕からはドクドクと血が流れている。
「ルーフさん、血が…。どうしよう、僕、治癒魔法使えない…。ごめん、ごめんなさいっ。僕のせいで…。」
「つ、疲れた…。」
撃たれた腕も痛むが、魔力を消費しすぎた。
正直ジンはかなり強かった。長期戦になったら勝てないと思ったルーフは、とにかく短時間で決着をつけるため、ありったけの魔力を使って応戦したのだ。
拘束魔法を放った時からルーフの体力は限界だった。ほぼ意地と強がりで立っていたようなものだ。
「俺も体力なくなったなぁ…。」
「ルーフさんっ!死なないでぇー!」
シロは大泣きしながらルーフに抱きついた。
「あほ、死なねぇよ。でもさすがに魔力残ってないから治癒魔法は使えねぇや。シロぉ、俺の腕治してくれ。」
「だから僕、治癒魔法使えないんですよぉ…。」
「使った事がない、だろ?大丈夫だ、お前なら出来る。お前に治癒魔法使ってやった事あるだろ。あれ思い出してさ、やってみろよ。」
ルーフは目を開けている事も億劫になり、目を閉じた。
シロはこのままルーフが目を開けなくなったらどうしよう、という恐怖感で覚悟を決めた。
「ううっ…、はいっ。」
涙を拭って、ルーフの肩に手をかざす。
レニーやルーフに怪我を治してもらった時、温かくて優しい魔力を感じた。あの時の事をイメージさせるんだ。
ー…『大丈夫だ、お前なら出来る。』
ルーフの言葉を反芻させて、シロは魔力を使った。
血が止まり、傷口が徐々に小さくなり、弾傷は跡形もなく消えた。
「で、出来た…。ルーフさん、治癒魔法出来ました!」
ルーフの方を向くと、すでに寝息を立てて爆睡していた。
(僕のために必死で戦ってくれたんだ。それなのに、僕はただ守られてるだけで何も出来なかった…。)
シロはルーフの胸に顔を埋めて抱きついた。
ジンの洗脳魔法を断ち切った頼もしい背中を思い出す。
ー…『こいつの名前はシロだ。クズじゃねぇ。』
唯一、僕を名前で呼んでくれる人。
ー…『俺と一緒にいたいなら、絶対離れるなよ。』
僕の肩を引き寄せ守ってくれる人。
ー…『シロ、大丈夫か?』
僕の背中を支えてくれる人。
助けてもらってばかりじゃダメだ。僕だってこの人を守りたい。心も体も強くならなくちゃ。
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