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胸の有無で掻き回された私の人生は
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王女殿下のお好みのお茶やお菓子、お持ちのドレスや装飾品の種類、仕える者としての立ち振る舞いを覚え、お仕着せの侍女服にも慣れた頃。私は王女殿下と共に隣国へと渡った。
お父様とお母様は私同様、突然の降って湧いた話にひっくり返る勢いで驚かれていたけれど、アロイス様との事があった私が本国にいて、下世話な噂と偏見の目に晒されて生きて行くよりは……と、快く送り出してくれた。
何より、王女殿下の侍女だなんて名誉、諸手を上げて喜びはすれど反対する道理が無いわ。
それにあの夜会の後、アロイス様は、私への理不尽な仕打ちの数々がたちまち貴族社会に広まったらしく、それはもう針の筵状態なんだそうで。『男と女の違いも分からない』『女だと分かる基準はママのおっぱい』『妄想と現実の区別が付かない』『そもそも胸の位置を知らない』などと言われ、大層な笑い物になっていらっしゃる様子。
しかも、自分の過ちを認める事も出来ず、公衆の面前であろうとも婦女子に暴力を振るおうとする男性だと知れ渡ってしまってからは潮が引く様にアロイス様の周りから男性も女性も離れていき、今では新たに妻となる人も貴族としての付き合いも絶望的だなのだとか。
正直、自業自得ですわ、ざまあみろ、と思わないでも無いけれど、当初はここまで大事にするつもりは無かっただけに、アングラード侯爵様には悪い事をしてしまったわ。
そう思い、謝罪した私に「ああいう性格では遅かれ早かれ問題を起こしていた。今ここで思い切り叩かれた方が奴の為だ」とのお言葉を頂き、反対に謝罪までされてしまってアングラード侯爵様の広い御心には本当に痛み入りますわ。
そういう訳で、私はもう何も思い残す事も無く、清々しい気持ちで隣国という新天地へ旅立ち、誰に後ろ指を指される事も、心無い噂の的にされる事も無い新しい毎日を楽しく送っていた。
そう、毎日楽しく、ですわ。
隣国では王女殿下が心配されていた様な冷遇や理不尽な扱いなんてものは無く、それはそれは国を挙げての大歓迎で、新たな住まいである王城では下にも置かない優遇ぶり。当初私が必要とされていたお役目なんて全く必要のない日々。いえ、必要ない事はとても良い事なんだけど、少し肩透かしというか……
王女殿下とご結婚相手の隣国の王子殿下も、政略結婚とは思えない程仲睦まじくあらせられるので、余計にそう感じるのかも。
そうして、私にも……
色々な覚悟を決めて隣国へ来た私の予想を裏切って、本国での私の離婚理由と夜会での騒動を知った王城勤めの騎士団長が「私の妻にはそれ位鼻っ柱が強い女性が好ましい」と熱烈に望まれ二度目の結婚をした。
プロポーズの言葉が「例え、君が男でもゴブリンでも愛し続けると誓う」だったのが何とも言えない感じでしたけれど。
あの夜会の時の様な全身の肉を寄せ集めた盛った胸で無くとも、子供を三人産み母となった後も、旦那様は誓いを守り、私を女性として扱い愛して下さった。
胸の有無で掻き回された私の人生は、胸の有無関係無しに、私は今、とても幸せだわ。
お父様とお母様は私同様、突然の降って湧いた話にひっくり返る勢いで驚かれていたけれど、アロイス様との事があった私が本国にいて、下世話な噂と偏見の目に晒されて生きて行くよりは……と、快く送り出してくれた。
何より、王女殿下の侍女だなんて名誉、諸手を上げて喜びはすれど反対する道理が無いわ。
それにあの夜会の後、アロイス様は、私への理不尽な仕打ちの数々がたちまち貴族社会に広まったらしく、それはもう針の筵状態なんだそうで。『男と女の違いも分からない』『女だと分かる基準はママのおっぱい』『妄想と現実の区別が付かない』『そもそも胸の位置を知らない』などと言われ、大層な笑い物になっていらっしゃる様子。
しかも、自分の過ちを認める事も出来ず、公衆の面前であろうとも婦女子に暴力を振るおうとする男性だと知れ渡ってしまってからは潮が引く様にアロイス様の周りから男性も女性も離れていき、今では新たに妻となる人も貴族としての付き合いも絶望的だなのだとか。
正直、自業自得ですわ、ざまあみろ、と思わないでも無いけれど、当初はここまで大事にするつもりは無かっただけに、アングラード侯爵様には悪い事をしてしまったわ。
そう思い、謝罪した私に「ああいう性格では遅かれ早かれ問題を起こしていた。今ここで思い切り叩かれた方が奴の為だ」とのお言葉を頂き、反対に謝罪までされてしまってアングラード侯爵様の広い御心には本当に痛み入りますわ。
そういう訳で、私はもう何も思い残す事も無く、清々しい気持ちで隣国という新天地へ旅立ち、誰に後ろ指を指される事も、心無い噂の的にされる事も無い新しい毎日を楽しく送っていた。
そう、毎日楽しく、ですわ。
隣国では王女殿下が心配されていた様な冷遇や理不尽な扱いなんてものは無く、それはそれは国を挙げての大歓迎で、新たな住まいである王城では下にも置かない優遇ぶり。当初私が必要とされていたお役目なんて全く必要のない日々。いえ、必要ない事はとても良い事なんだけど、少し肩透かしというか……
王女殿下とご結婚相手の隣国の王子殿下も、政略結婚とは思えない程仲睦まじくあらせられるので、余計にそう感じるのかも。
そうして、私にも……
色々な覚悟を決めて隣国へ来た私の予想を裏切って、本国での私の離婚理由と夜会での騒動を知った王城勤めの騎士団長が「私の妻にはそれ位鼻っ柱が強い女性が好ましい」と熱烈に望まれ二度目の結婚をした。
プロポーズの言葉が「例え、君が男でもゴブリンでも愛し続けると誓う」だったのが何とも言えない感じでしたけれど。
あの夜会の時の様な全身の肉を寄せ集めた盛った胸で無くとも、子供を三人産み母となった後も、旦那様は誓いを守り、私を女性として扱い愛して下さった。
胸の有無で掻き回された私の人生は、胸の有無関係無しに、私は今、とても幸せだわ。
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