【完結】胸に左右されるは男も女も……誰が男の胸ですって!?~この恨み晴さでおくべきか~

兎卜 羊

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胸に関しての発言は少々思う所が

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「お父様! お母様!」

「アンヌ!? こんな早朝にどうしたんだ!?」

「あなた裸足じゃない! しかも、夜着だなんて! 何があったの!? アロイス様は!?」

 私が屋敷の門を叩いた時にはすっかり朝日が昇りきっていて、すでに起きて朝のお勤めをしていた両親と使用人達は、私の惨めな姿を見て慌てふためきながらも屋敷の中へと招き入れてくれた。
 誰もが羨むような幸せな結婚式を終えた次の日に、娘がボロボロになって一人で帰ってくるなんて前代未聞な事態に屋敷の中は蜂の巣を突いたかの様な大騒ぎだった。

 私が粗末な男物のコートを着ていた事に驚き、その下が夜着一枚だった事に顔色を悪くしたメイドが柔らかい毛布を持って駆け付け、私の体を包み込んでくれた。
  その心遣いに、やっと安心出来る場所に帰って来れたのだという実感が溢れ、涙がこぼれそうになる。

「お嬢様。今お湯をご用意しておりますので、どうぞお風呂へ!」

「いいえ、今はいいわ。それよりも……お父様、お母様。お話がございます」

 バスルームへ案内しようとするメイドを制して、私はお父様とお母様に向き合った。そして、大きく息を吸い込みハッキリと言葉にした。

「私、アロイス様と離縁いたします!!」

「!!!!」

「ど、どう言う事だ!?」

 私の突然の宣言に驚き動転する両親に初夜で起こった事を包み隠さず話した。
 胸を触られた事で起こった事態を両親に伝えるというのは凄く憚られるけれど、それよりも私のプライドや尊厳をズタボロにされた事をそのままにする事の方が我慢ならない。
 怒りとプライドだけで奮い立っている私は何度も言葉を途切れさせ、上手く話せない。けれど、そんな私の話を急かす事も無く、最後まで聞いて下さったお母様は真っ青な顔に涙を溜め、私を強く抱き締めてくれた。

「何て酷い……そんな非道な仕打ちがあって良いものですか! アンヌ、貴女の胸が男性の胸な訳ないじゃない! ちゃんと女性の胸よ!! 大きいだけが胸じゃないの! 小さっ、いえ、奥ゆかしく淑やかである事の方がどれだけ品があるか……それをアロイス様は全っ然分かっていないわ!」

 お母様……。泣きながらも私を慰めて下さるのは嬉しいんですけど……けど、そんなに胸の大きさの事を力説しないで下さい……安堵以外の涙も出て来そうですわ。

「アンヌの事を幸せにすると言うから託したと言うのに、まさかそんな大馬鹿だったとは……女性を胸でしか判別出来んなど乳離れの出来ていない赤ん坊同然だ! 胸が有ろうが無かろうが、これほど完璧な女性のアンヌをどうやったら男だと思えるんだ!? 心配するなアンヌ。あの馬鹿が何を言った所で恥をかくのは向こうだ。お前は何も恥じる事無く堂々としていればいい。それに、離縁に私は賛成だ。いや、離縁は絶対にする! 勿論、あちらの有責でな!!」

 顔を真っ赤にして私の為に怒ってくださるお父様にはとても感謝しているのですが…… 今、胸が有ろうが無かろうがって言いました? 暗に無いって言ってません? 

「お父様。お母様……」

 胸に関しての発言は少々思う所がありつつも、それは一端置いておいて……

 お父様とお母様が心から私を心配して気遣って下さった事が何よりも嬉しかった。
 もし、離縁を反対されたら。もし、アロイス様に誤解させたことを謝罪しに行けと言われたら。なんて、馬鹿な心配をしていた自分が恥ずかしい。
 夫には恵まれていなかったけど、両親にはこんなにも恵まれていた事を知って、ようやく私の頬に涙が落ちた。
 
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