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19 幻覚か現実か※
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案の定、イサーク様に横抱きで運ばれた僕を見た使用人が、すわ怪我でもしたのか、と一斉に慌てて寄って来て。無事、僕は羞恥心で爆発した。
怪我をした訳では無く、ただイサーク様の戯れだと分かった時の周りの視線の生暖かさと言ったら。思い出しただけで居た堪れない感情に襲われる。
バシャン!!
その昼の出来事を思い出し、浸かっていた湯の中に顔を沈めて胸中で暴れ回るムズムズする感情をやり過ごす。
本当に思い出しただけでも恥ずかしい。
今日一日、色々な事があり過ぎて疲れ切った体を湯船に浸けて癒そうとしているのに、これでは全然疲れが取れそうにない。
イサーク様に抱えられ屋敷に戻った後は昼食を食べ、予定通り僕とイサーク様はオレンジの幼木を庭に植える作業をした。とは言っても、僕がした事と言えば肥料と土を植えたオレンジに掛けるくらいだったけれど。
それでも、普段家の中からあまり出る事の無い生活をしていた僕からすれば、なかなかに疲れる作業だった。
そして、疲れるのは作業だけでなく、お互いの気持ちを知り、相思相愛だと分かった後のイサーク様の行動もだった。
今まででも十分僕を戸惑わせる甘さだったのが、今まで以上の甘さで僕に接して来られるものだから、僕の心臓が跳ねたり飛んだりで、もちそうにない。
イサーク様の気持ちを知る前は、勘違いしない様に、と自分を戒めていたから何とか保てていた部分も、勘違いじゃない、と分かると恥ずかしさも嬉しさも数倍に跳ね上がって大変なのだ。
ミハリス様の事があった後に、慣れない作業と慣れない感情に振り回されて、本当に僕は疲れ切って体に力が入らずフニャフニャだ。それに、日中ほとんど外にいたからか体が火照ってしょうがない。
「なんか、クラクラして来た……熱いし、出よう」
僕が素早く寝巻だけを着て出て来ると、使用人達が僕を取り囲み、テキパキと髪を乾かしたり肌にクリームを塗ったりと忙しくお世話をしてくれる。そして全て終わればサーッと波が引く様に部屋から出て行くものだから、速攻で寝室には僕一人になってしまう。
この後、いつもイサーク様が就寝前の時間を過ごしにやって来られるから気を遣っての事だとは思うけど、何もそんなにすぐに退室しなくてもいいんじゃないだろうか。
ツヤツヤサラサラの髪とすべすべで良い匂いがする肌に多少の居心地の悪さを感じながら、湯上りに冷たいレモン水を飲みつつ火照った体を冷やす。でも、今日は一向に冷えそうもない。
未だにイサーク様が僕の事を好きだとか、愛しているだとか、現実味がない夢の様な出来事に理解が追いつかなくて知恵熱でも出ているんだろうか。
レモン水を全て飲み干しても、まだ体が熱い。しかも肌が少し触れただけでもゾワゾワと粟立つ。その感覚に嫌な予感がする。
もしかして……ヒート!? ヒートなら二ヶ月前にあったのに、また?
いや、でもあれは何の間違いか前回から一ヶ月という短い間隔で来たもの。三ヶ月毎にあった従来のヒートの周期で考えたら、丁度今がヒートの時期だ。
なんて事だ。前回がイレギュラーだっただけで、従来のヒートの周期が狂った訳ではなかったんだ。
ヒートを自覚した途端、ただでさえ怠かった体から力が抜け、ベッドの上に倒れ込んでしまう。
吐く息が熱い。体が疼いて、少し身じろいただけで擦れた部分からゾクゾクと新しい疼きが生まれ身悶える。
目を閉じ、グルグルと回る意識の中ではイサーク様の事ばかりがチラ付き、その度に体の奥がキュゥ、と疼く。
「ウォレン」
イサーク様の事ばかり考えていたせいだろうか、幻聴まで聞こえて来た。
口を開き、何か声を発しようとするも、暖かくて滑る何かに口を塞がれていて、くぐもった声しか出ない。それに、凄く気持ち良い。
発情して火照る僕の体以上に熱いものに体中を弄られる。執拗に僕の舌を吸い絡めていたものが離れ、またイサーク様の声が聞こえる。
「ウォレン」
愛おしそうに呟かれる僕の名前に、ジワ……と下半身から濡れた感触がする。
「イサーク、さ…ま」
きっと、これは発情に狂った僕が作り上げた幻覚だ。恐る恐る目を開け、そんな幸せな幻覚と目が合った瞬間、僕の残りわずかだった理性は断ち切れ、世界は暗転した。
「んぁッ! あ、あ、はぁッん! んぁああッ」
バチュッ! バチュッ! と、湿った音と揺さぶられる体に合わせて上がる甲高い嬌声に意識が浮上する。
「な、に……ああぁぁ! あン!? あ! あ、んぅぅ、やぁぁん」
霧がかる意識の中、僕の体が前後に揺さぶられる度に襲い来る強烈な快感に、手元のシーツを掻き握る。
何!? 何で!? 誰かが僕の腰を高く抱え、後ろから深く熱い杭を打ち付けて来る。
頭がおかしくなりそうな快感に額をシーツに擦り付け足掻く。
「ああ、ウォレン……気が付いた?」
「イサーク様!? あうッ!」
イサーク様の掠れた声が聞こえた瞬間、ググッと僕の奥へと熱い杭が押し入り、今まで感じた事のない圧迫感に崩れ落ちていた上半身が強張る。
何でイサーク様が!? これもまだ、幻覚なのか? それとも、あれは幻覚じゃなかった?
「なん、でぇ……はァッ、あ、あ、あ、あ……や、それ、だめぇぇ」
なぜ? と僕が考えるのを邪魔する様に、タン、タン、と奥を突かれ、辛うじて立てていた膝がガクガクと痙攣する。
気持ちいい、気持ちいい。
イサーク様に触れられて、される事全てが脳を溶かす程に気持ちが良くて、なぜ? どうして? と考える余裕が蹴散らされる。
「気持ちいいね、ウォレン。君は覚えていないみたいだから教えてあげる。私が部屋に行った時、既に君はヒートを起こしていたんだよ。そして、私が欲しい、と……ここをいっぱいにして欲しい、って縋り付いてきたんだ。……だから、いっぱいここに注ぎ込んであげたよ。ほら、私が動くと、いやらしい音がするだろう?」
グチュッグチュッ、と音がして、太ももに何かが垂れ、濡れた感触がする。
「あっああ! は、あぁ、んあああ!」
大きなストロークで動くイサーク様の熱い杭に浅い場所の一点を抉られ、頭の中がスパークする様な衝撃にシーツに埋めていた顔が弾かれたように上がる。
「今ので軽くイッちゃった? ふふふふ、可愛いね、ウォレン。可愛い、可愛い、私のウォレン。愛しているよ」
「はうっ、はっ、はっ……アぃッ!!! あ…あ、ぁ」
激しく酸素を求め、喘ぐ様に息をする僕の項に突然ビリビリッと痺れる様な痛みが走った。だけど、痛みの奥にはゾクゾクする快感の痺れもあり、痛みと快楽を同時に受けた体がブルリと震える。
「もしかして、痛い? 番では無いαに触られて噛み痕が反発しているのかな?」
忌々しいな、とヒヤッとする程冷たい声で呟くイサーク様の声が耳元で聞こえ、それと同時に再びさっきと同じ痛みと快楽が僕の項を襲った。
ピチャ、ジュッ、と湿った音と感触が項からする。イサーク様が執拗に僕の噛み痕を舐めているんだ。
イサーク様が一舐めする度に体が番以外のαを排除しようと痛み、拒否反応を起こす中、心は強くイサーク様を欲して快感を訴えていた。その相反する感覚に僕の体がガクガクと震える。
「あぐ、ぃッ、あ…あ、ぁ」
「ウォレン、私のものになって。身も心も、私だけのものに……私がこんな縛り引き千切ってあげるから」
息を荒げたイサーク様の歯が、軽く項に当たる。でも、当たるだけで決して皮膚を突き破って来ない。
なんで!? なんで噛んでくれないの!? お願いっ、少し力を入れるだけで良いから。肉が千切れるまで噛んで良いから!!
あと、少しなのに。それがもどかしい。もどかしくって息が出来ない。早く早くはやくはやくはやく。
その牙で、皮膚を突き破って肉まで引き裂いて!!!!
「噛んでっ!! 早く! 早く、僕をイサーク様のものにして!!」
イサーク様の唾液に濡れそぼった噛み痕は拒否反応が強く現れ、激痛に背骨がしなりそうになる。それを無理矢理耐え、イサーク様が噛みやすい様に項を晒す。
痛くても良い。本当の番になれなくても良い。イサーク様に噛まれたい。その一心で痛みに歯を食いしばりイサーク様を待つ。
背後で、イサーク様の荒い呼吸とグルルルルルと低い唸り声が聞こえる。
微かに項に当たっていた歯に力が入り、次の瞬間。ブチィッ……と肉を断たれる激しい痛みが走った。
「ぅがぁッ!! あああああーーーー!!!!!」
「フー、フー」
噛まれた場所が燃え上がる様に熱い。そして、その熱が脳に脊髄に巡り、何かが焼き切られて行く。その痛みに脂汗が滲み、息も出来ない。
痛い、熱い、痛い、熱い
あああ……痛いのに、気持ちいい。
焼かれる様な痛みが引く。拒否反応で出ていたビリビリとした痛みも無い。ただ、噛まれた物理的な痛みのみで、むしろ甘美なまでの快感が広がり気持ちいい。
ああ、噛まれた。イサーク様に僕は噛んで貰えたんだ。
その喜びに体の中から何かがブワァッと高ぶってくる。オクトーに噛まれた時にはこんな感覚は無かった。何かが溢れる……
「あ……イサーク様、の、匂い……」
今まで微かにしか感じなかったスターアニスの香りが充満している。
濃厚で甘い香り。この香りに包まれ僕の中が多幸感で満ち溢れて来る。今なら死んでも良い。そう思える程の陶酔感だった。
ドチュッ!!!!
「あグッ!」
突如、項に嚙みついたまま、イサーク様が僕の奥を突き破る勢いで腰を動かし始めた。
獣の交尾の様に僕は押さえ付けられ、最奥をイサーク様の熱い杭で犯される。
「あッ、あ、ぁグぅッ! んぁあ! あッ、おァッ!」
最奥を突かれ、抉る様に押し開かれ、また突かれる。パン! パン! と音が響くほどに激しく打ち付けられ、僕は何度も絶頂感を味わう。突かれる度に頭の中がチカチカと点滅し、過ぎる快感に体が大きく痙攣する。
「くぅ……ふッ……」
「ああッ! ンああぁぁァァァァ!!!」
イサーク様の熱い杭が僕のナカで跳ねる。グリッと押し込まれた杭が僕の最奥でビュク…ビュク…と精を吐き出している。イサーク様で満たされる胎の中が熱い。
「はー、はー、あ……、もっ、と…ほし、ぃ」
自ら腰を揺らめかせているのか、それとも、ただ痙攣しているのか、自分でも分からない。
グルンと世界が回り、また僕の意識は暗転した。
怪我をした訳では無く、ただイサーク様の戯れだと分かった時の周りの視線の生暖かさと言ったら。思い出しただけで居た堪れない感情に襲われる。
バシャン!!
その昼の出来事を思い出し、浸かっていた湯の中に顔を沈めて胸中で暴れ回るムズムズする感情をやり過ごす。
本当に思い出しただけでも恥ずかしい。
今日一日、色々な事があり過ぎて疲れ切った体を湯船に浸けて癒そうとしているのに、これでは全然疲れが取れそうにない。
イサーク様に抱えられ屋敷に戻った後は昼食を食べ、予定通り僕とイサーク様はオレンジの幼木を庭に植える作業をした。とは言っても、僕がした事と言えば肥料と土を植えたオレンジに掛けるくらいだったけれど。
それでも、普段家の中からあまり出る事の無い生活をしていた僕からすれば、なかなかに疲れる作業だった。
そして、疲れるのは作業だけでなく、お互いの気持ちを知り、相思相愛だと分かった後のイサーク様の行動もだった。
今まででも十分僕を戸惑わせる甘さだったのが、今まで以上の甘さで僕に接して来られるものだから、僕の心臓が跳ねたり飛んだりで、もちそうにない。
イサーク様の気持ちを知る前は、勘違いしない様に、と自分を戒めていたから何とか保てていた部分も、勘違いじゃない、と分かると恥ずかしさも嬉しさも数倍に跳ね上がって大変なのだ。
ミハリス様の事があった後に、慣れない作業と慣れない感情に振り回されて、本当に僕は疲れ切って体に力が入らずフニャフニャだ。それに、日中ほとんど外にいたからか体が火照ってしょうがない。
「なんか、クラクラして来た……熱いし、出よう」
僕が素早く寝巻だけを着て出て来ると、使用人達が僕を取り囲み、テキパキと髪を乾かしたり肌にクリームを塗ったりと忙しくお世話をしてくれる。そして全て終わればサーッと波が引く様に部屋から出て行くものだから、速攻で寝室には僕一人になってしまう。
この後、いつもイサーク様が就寝前の時間を過ごしにやって来られるから気を遣っての事だとは思うけど、何もそんなにすぐに退室しなくてもいいんじゃないだろうか。
ツヤツヤサラサラの髪とすべすべで良い匂いがする肌に多少の居心地の悪さを感じながら、湯上りに冷たいレモン水を飲みつつ火照った体を冷やす。でも、今日は一向に冷えそうもない。
未だにイサーク様が僕の事を好きだとか、愛しているだとか、現実味がない夢の様な出来事に理解が追いつかなくて知恵熱でも出ているんだろうか。
レモン水を全て飲み干しても、まだ体が熱い。しかも肌が少し触れただけでもゾワゾワと粟立つ。その感覚に嫌な予感がする。
もしかして……ヒート!? ヒートなら二ヶ月前にあったのに、また?
いや、でもあれは何の間違いか前回から一ヶ月という短い間隔で来たもの。三ヶ月毎にあった従来のヒートの周期で考えたら、丁度今がヒートの時期だ。
なんて事だ。前回がイレギュラーだっただけで、従来のヒートの周期が狂った訳ではなかったんだ。
ヒートを自覚した途端、ただでさえ怠かった体から力が抜け、ベッドの上に倒れ込んでしまう。
吐く息が熱い。体が疼いて、少し身じろいただけで擦れた部分からゾクゾクと新しい疼きが生まれ身悶える。
目を閉じ、グルグルと回る意識の中ではイサーク様の事ばかりがチラ付き、その度に体の奥がキュゥ、と疼く。
「ウォレン」
イサーク様の事ばかり考えていたせいだろうか、幻聴まで聞こえて来た。
口を開き、何か声を発しようとするも、暖かくて滑る何かに口を塞がれていて、くぐもった声しか出ない。それに、凄く気持ち良い。
発情して火照る僕の体以上に熱いものに体中を弄られる。執拗に僕の舌を吸い絡めていたものが離れ、またイサーク様の声が聞こえる。
「ウォレン」
愛おしそうに呟かれる僕の名前に、ジワ……と下半身から濡れた感触がする。
「イサーク、さ…ま」
きっと、これは発情に狂った僕が作り上げた幻覚だ。恐る恐る目を開け、そんな幸せな幻覚と目が合った瞬間、僕の残りわずかだった理性は断ち切れ、世界は暗転した。
「んぁッ! あ、あ、はぁッん! んぁああッ」
バチュッ! バチュッ! と、湿った音と揺さぶられる体に合わせて上がる甲高い嬌声に意識が浮上する。
「な、に……ああぁぁ! あン!? あ! あ、んぅぅ、やぁぁん」
霧がかる意識の中、僕の体が前後に揺さぶられる度に襲い来る強烈な快感に、手元のシーツを掻き握る。
何!? 何で!? 誰かが僕の腰を高く抱え、後ろから深く熱い杭を打ち付けて来る。
頭がおかしくなりそうな快感に額をシーツに擦り付け足掻く。
「ああ、ウォレン……気が付いた?」
「イサーク様!? あうッ!」
イサーク様の掠れた声が聞こえた瞬間、ググッと僕の奥へと熱い杭が押し入り、今まで感じた事のない圧迫感に崩れ落ちていた上半身が強張る。
何でイサーク様が!? これもまだ、幻覚なのか? それとも、あれは幻覚じゃなかった?
「なん、でぇ……はァッ、あ、あ、あ、あ……や、それ、だめぇぇ」
なぜ? と僕が考えるのを邪魔する様に、タン、タン、と奥を突かれ、辛うじて立てていた膝がガクガクと痙攣する。
気持ちいい、気持ちいい。
イサーク様に触れられて、される事全てが脳を溶かす程に気持ちが良くて、なぜ? どうして? と考える余裕が蹴散らされる。
「気持ちいいね、ウォレン。君は覚えていないみたいだから教えてあげる。私が部屋に行った時、既に君はヒートを起こしていたんだよ。そして、私が欲しい、と……ここをいっぱいにして欲しい、って縋り付いてきたんだ。……だから、いっぱいここに注ぎ込んであげたよ。ほら、私が動くと、いやらしい音がするだろう?」
グチュッグチュッ、と音がして、太ももに何かが垂れ、濡れた感触がする。
「あっああ! は、あぁ、んあああ!」
大きなストロークで動くイサーク様の熱い杭に浅い場所の一点を抉られ、頭の中がスパークする様な衝撃にシーツに埋めていた顔が弾かれたように上がる。
「今ので軽くイッちゃった? ふふふふ、可愛いね、ウォレン。可愛い、可愛い、私のウォレン。愛しているよ」
「はうっ、はっ、はっ……アぃッ!!! あ…あ、ぁ」
激しく酸素を求め、喘ぐ様に息をする僕の項に突然ビリビリッと痺れる様な痛みが走った。だけど、痛みの奥にはゾクゾクする快感の痺れもあり、痛みと快楽を同時に受けた体がブルリと震える。
「もしかして、痛い? 番では無いαに触られて噛み痕が反発しているのかな?」
忌々しいな、とヒヤッとする程冷たい声で呟くイサーク様の声が耳元で聞こえ、それと同時に再びさっきと同じ痛みと快楽が僕の項を襲った。
ピチャ、ジュッ、と湿った音と感触が項からする。イサーク様が執拗に僕の噛み痕を舐めているんだ。
イサーク様が一舐めする度に体が番以外のαを排除しようと痛み、拒否反応を起こす中、心は強くイサーク様を欲して快感を訴えていた。その相反する感覚に僕の体がガクガクと震える。
「あぐ、ぃッ、あ…あ、ぁ」
「ウォレン、私のものになって。身も心も、私だけのものに……私がこんな縛り引き千切ってあげるから」
息を荒げたイサーク様の歯が、軽く項に当たる。でも、当たるだけで決して皮膚を突き破って来ない。
なんで!? なんで噛んでくれないの!? お願いっ、少し力を入れるだけで良いから。肉が千切れるまで噛んで良いから!!
あと、少しなのに。それがもどかしい。もどかしくって息が出来ない。早く早くはやくはやくはやく。
その牙で、皮膚を突き破って肉まで引き裂いて!!!!
「噛んでっ!! 早く! 早く、僕をイサーク様のものにして!!」
イサーク様の唾液に濡れそぼった噛み痕は拒否反応が強く現れ、激痛に背骨がしなりそうになる。それを無理矢理耐え、イサーク様が噛みやすい様に項を晒す。
痛くても良い。本当の番になれなくても良い。イサーク様に噛まれたい。その一心で痛みに歯を食いしばりイサーク様を待つ。
背後で、イサーク様の荒い呼吸とグルルルルルと低い唸り声が聞こえる。
微かに項に当たっていた歯に力が入り、次の瞬間。ブチィッ……と肉を断たれる激しい痛みが走った。
「ぅがぁッ!! あああああーーーー!!!!!」
「フー、フー」
噛まれた場所が燃え上がる様に熱い。そして、その熱が脳に脊髄に巡り、何かが焼き切られて行く。その痛みに脂汗が滲み、息も出来ない。
痛い、熱い、痛い、熱い
あああ……痛いのに、気持ちいい。
焼かれる様な痛みが引く。拒否反応で出ていたビリビリとした痛みも無い。ただ、噛まれた物理的な痛みのみで、むしろ甘美なまでの快感が広がり気持ちいい。
ああ、噛まれた。イサーク様に僕は噛んで貰えたんだ。
その喜びに体の中から何かがブワァッと高ぶってくる。オクトーに噛まれた時にはこんな感覚は無かった。何かが溢れる……
「あ……イサーク様、の、匂い……」
今まで微かにしか感じなかったスターアニスの香りが充満している。
濃厚で甘い香り。この香りに包まれ僕の中が多幸感で満ち溢れて来る。今なら死んでも良い。そう思える程の陶酔感だった。
ドチュッ!!!!
「あグッ!」
突如、項に嚙みついたまま、イサーク様が僕の奥を突き破る勢いで腰を動かし始めた。
獣の交尾の様に僕は押さえ付けられ、最奥をイサーク様の熱い杭で犯される。
「あッ、あ、ぁグぅッ! んぁあ! あッ、おァッ!」
最奥を突かれ、抉る様に押し開かれ、また突かれる。パン! パン! と音が響くほどに激しく打ち付けられ、僕は何度も絶頂感を味わう。突かれる度に頭の中がチカチカと点滅し、過ぎる快感に体が大きく痙攣する。
「くぅ……ふッ……」
「ああッ! ンああぁぁァァァァ!!!」
イサーク様の熱い杭が僕のナカで跳ねる。グリッと押し込まれた杭が僕の最奥でビュク…ビュク…と精を吐き出している。イサーク様で満たされる胎の中が熱い。
「はー、はー、あ……、もっ、と…ほし、ぃ」
自ら腰を揺らめかせているのか、それとも、ただ痙攣しているのか、自分でも分からない。
グルンと世界が回り、また僕の意識は暗転した。
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