前世の悲しい記憶を思い出しましたが、今世の幸せは揺るぎません。

沙橙しお

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32.今夜は(ブラッド)※

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 ハリスンから無事に取り戻したシンシアは丸一日眠っていた。疲れているだけで大丈夫だと分かっているのに、彼女の瞳が開くまで落ち着かなかった。ようやく目を覚ましたシンシアはすっきりとした顔で元気がいい。ようやく心から安堵することが出来た。
 そのあと一緒に食事をし、緊急の承認を要する書類を片付けた。その後、湯浴みをし夫婦の寝室へと行く。
 部屋に入ると湯浴みを終えたシンシアが、ベッドの上で寝転んでぼんやりとしている。まだ疲れが残っているのなら、今夜はこのまま寝かせてあげた方がいいだろう。本当はシンシアを抱きたくて堪らないのだが。シンシアの顔を見ると頬の一か所だけ赤くなっている。これは虫に刺されたものではない。まるで強く擦ったかのようだ。

「赤くなっている。擦ったのか?」

「う、うん……。ちょっと……」

 シンシアの目が泳いでいる。

「何があった? あの男に何かされたのか?」

 声が鋭くなっている自覚はあるが冷静ではいられない。シンシアは眉を下げると早口でまくし立てる。

「あの、ね。あ、冷静に聞いて。ちょっとだけ舐められたの」

 あの男が触れたのかと思うと許せるはずがない。しかも舐めただと!! ブラッドは後悔した。ハリスンをもっと痛めつけてやればよかったと。
 あの男が触れた痕跡が見えるようで不愉快になる。上書きしようとシンシアの赤くなった頬に労わるように口付けを落とす。ちゅっちゅっと音を立てて繰り返すと、シンシアがくすぐったそうに肩を揺らし笑っている。ブラッドは舌で頬をペろりと舐めた。何度も舌を這わせ自分の存在を知らしめる。そのまま愛撫を続け、秘所に手を伸ばす。すると早くも秘所からとろとろと愛液が溢れていた。

(早くシンシアの中に入りたい……)

 もっと丁寧に解して高めてから繋がりたいのに、我慢できそうにない。繋がりむさぼるように揺さぶって、彼女の奥を突きたくて堪らない。

「シンシア。いい?」

「きて、ブラッド」

 はち切れそうな剛直を逸る気持ちを押さえて、慎重にシンシアの中に沈めていく。

「ああ、入ってくる……」

 シンシアのうっとりとした声が堪らない。胎内はブラッドを温かく包み込むように迎えてくれた。シンシアは少しだけ苦しそうに息を吐く。すべてを納めると胎内が激しく蠕動し剛直に絡みつく。もっていかれそうだ……。

(うっ……)

 奥歯を食いしばり何とかやり過ごす。このまま終わるとか絶対嫌だ。

「好きよ」

「ああ、私もだ」

 シンシアの幸せそうな声に同じ思いだと返す。そしてゆっくりと腰を動かした。すると彼女の豊満な胸がゆらゆらと揺れる。その卑猥な姿に目が離せない。気持ちが昂り自然と律動が早くなっていく。

「あ、あ、きもちいい……」

「最高だよ。シンシア……」

 シンシアの中は激しくうねりブラッドを高めていく。夢中で彼女の奥を突く。

「もう、む……り……」

 そう呟くとシンシアは背を弓なりに反らした。イッたのだ。

(まだだ。もっとシンシアを味わいたい!)

 絶頂に喘ぐシンシアを執拗に揺さぶり続ける。

「おりれない……あ……あああ……」

 シンシアの中が剛直をむしゃぶるように締め付けた。

「うっ……」

 その瞬間、ブラッドは欲を解放した。自分の白濁がシンシアの最奥へと注がれていく。これ以上にない幸せを感じシンシアを見れば、嬉しそうに微笑んだ。

「愛してるよ。シンシア」

「ありがとう。ブラッド」

 私もよと返されると思ったらお礼を言われた。まさか気持ち良かったからとかではないよな? もちろんそれでも嬉しいが。

「何のお礼?」

「ふふふ。いろいろよ」

 紅茶色の瞳をいたずらっ子のように三日月にして笑う。その表情も可愛いと思ったら剛直が元気を取り戻した。

「お礼にはお返しが必要だね?」

 ブラッドはシンシアの腰を掴むと再びゆるゆると腰を動かした。

「ああん……」

 シンシアの片足を肩に担ぎより深く繋がれるように向きを変えた。さっき放った白濁が律動の度に淫らな音と共にかき出され、シンシアの太腿を汚していく。もう何を見ても興奮する材料にしかならない。

 膨らんだ花芽をきゅっと摘まむと、シンシアは腰を浮かし逃げようと体を捩る。もちろん逃がすつもりはない。そのまま奥を突けば声にならない喘ぎ声を上げて背を仰け反らした。そして胎内で剛直を強く締め付ける。

「まだだ……」

 一度動きを止め歯を食いしばり耐える。シンシアの中は挑むように蠕動する。これ以上我慢できそうになく、再び腰を動かし追い込みをかける。

「ぶ、ぶらど……む……り……」

 たぶん気持ち良くて無理だから止まれということだろうが、ブラッドももう限界だ。思い切り奥を突きシンシアの体をぎゅっと抱きしめた。そして中に再び白濁を放った。シンシアも体を震わせながら両手をブラッドの背に回し、抱きしめてくれた。

「愛してる」

「愛してるわ」

 触れるだけの口付けを落とせばシンシアはふにゃりと笑い目を閉じた。満足したから「おやすみ」という顔だ。だけど……。

「シンシア。まだ眠らせないよ?」

「え……嘘でしょう?」

 シンシアは目を開いて眉を下げる。ブラッドの方は至って元気だ。まだまだ終われそうにない。今夜は満足するまで付き合ってもらう。ブラッドは飛びっきりの笑顔で頷いた。

「本当だよ」

 時間はたっぷりとある。シンシアを存分に堪能させてもらうつもりだ。






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