前世の悲しい記憶を思い出しましたが、今世の幸せは揺るぎません。

沙橙しお

文字の大きさ
上 下
25 / 33

25.王子様のお嫁様(ルシンダ)※微

しおりを挟む
 ルシンダの婚約者はこの国の王太子だった。ハリスン様は金色の髪に金色の瞳、そして中世的な雰囲気を持つ美しい人。公爵家の娘に生まれ両親に愛され育ち、幸せな日々にさらに恋という彩りを添えて至上のものになる。

「ハリスン様。今日はお茶をご一緒できますか」

「もちろん。ルシンダの好きなお菓子を用意して置いたよ」

「わあ! 嬉しい」

 見た目通り素敵で優しい王子様。ルシンダはハリスンが大好きだった。妃教育は大変だけど彼と過ごせると思えば頑張れる。そう思っていたが年齢が上がり教育の内容が難しくなると努力しても追いつけなくなった。

「お父様。妃教育の先生も王妃様も私のことを出来が悪いと言うの……悲しい」

 クリフトンも応援してくれるけどどうにもならない。その不満をお父様に訴えた。お父様は優しく頭を撫でてルシンダを慰めてくれた。

「ルシンダはよくやっている。何よりも可愛い。それが一番大事だ。殿下の婚約者としていつも笑顔で民を安心させるのが大切な仕事だ」

「そうなの? それなら出来るわ」

 安心すると勉強はほどほどに髪やお肌のお手入れに重点を置き、身だしなみを華やかにするためにドレスや宝石を買い集める。充実した毎日の中である夜夢を見た。

 夢の中で自分はライラという名の伯爵令嬢だった。幼馴染の王太子クリフトンが初恋でいつかお嫁さんになりたかった。『王子様のお嫁様』が夢だった。王妃様もいつも言っていた。

「ライラがクリフトンと結婚して私の娘になってくれたら嬉しいわ」

「はい。私もクリフトン様と結婚したいです」

 だけど彼にはブラックストン公爵令嬢エレンとの婚約が内定していた。身分からいえばライラには勝ち目がない。クリフトンが自分を望んでくれればどうにかなったかもしれないが、彼がライラを妹のようにしか思っていないのは分かっていた。

 ところがエレンが隣国の王太子と結婚することが決まり、ライラはチャンスだと浮かれた。それなのにクリフトンはベイトソン公爵令嬢マリオンと婚約してしまった。王妃様の話だとクリフトン自らの希望だと聞いた。ライラは納得いかなかった。

(私の方が美人だし、ずっと側にいたのに。どうして……)

 マリオンはいつも自信なさげに俯いて辛気臭い。どうして彼女を選んだのか理解に苦しむ。
 二人は順調に過ごしているように見えた。それでもライラは変わらず王妃様のところに遊びに来ていた。クリフトンは忙しそうで顔を合わせることは殆どなかったのだが、時折苦しそうな表情で彼が溜息をつくところを見かけるようになった。

「クリフトン様。どうしたのですか? マリオン様と喧嘩をしたのですか?」

 正式な婚約者がいるのだから誤解をされないよう距離を取るよう周りから注意をされていたが、どうしても気になって話しかけた。

「マリオンは私に好意を抱いていない気がする」

「そんな女性がこの国にいるはずありませんよ。きっと気後れしてるか遠慮しているのでしょう」

 いつも自信に満ち溢れているクリフトンが沈んでいると思うと可哀想で思わず励ました。

「私は……マリオンの気持ちが分からない」

「それならば試してみましょうよ!」

 ライラがクリフトンと親しく過ごして嫉妬するのか様子を見ようと提案した。怒るか悲しむのか、マリオンの性格だと泣いてしまうかもしれない。でもそうでなければクリフトンを何とも思っていないということになる。それなら婚約は破棄して今度こそライラと婚約して欲しい。そういう期待も少なからず持っていた。

 クリフトンは幼いころから女性に言い寄られてきた。それが当然でマリオンのような手応えのない反応が初めてで戸惑っていた。消極的な女性の態度ではクリフトンには物足りないのだ。彼は生粋の王子様なのだから。クリフトンはその提案に乗り夜会でライラと過ごすようになった。ライラは優越感に浸りまるで自分こそが彼の婚約者のように振る舞った。

(楽しいわ!!)

 このまま自分が彼の婚約者になれるような気がしていたのだが、夜会が終わると用が済んだとばかりにクリフトンは側からいなくなる。ライラには全く興味がなくマリオンのことしか頭の中にないのだ。彼が離れると冷水を浴びせられたように心が冷えた。そんなとき――。

「マリオン様は不貞を働いていますよ。夜会を抜け出して騎士と抱き合ってました。私は見たのです」

 コンロン侯爵子息が貴族子息たちや令嬢たちとボードゲームをしている時に言い出した。正直、皆話半分だった。彼は女性にだらしなく自分の保身のために簡単に嘘を吐く人間だと知っているからだ。

「証拠もないのに殿下の婚約者のことを言うのはよろしくありませんわ」

 一人の令嬢が窘めた。すると彼はポケットから手紙を取り出した。

「証拠はあります。でもこれはここにいる私たちだけの秘密ですよ」

 そういって広げた手紙の内容は男性への愛を赤裸々に綴った内容だった。

「まあ、破廉恥ですわ!!」
「これをマリオン様が書かれたの?」
「人は見かけによらないわね~」

 皆醜聞に飛びついた。真実かどうかよりも面白いかどうかが大切なのだ。
 ライラは考えた。もしこれをクリフトンが見たらどうなるだろう。きっと婚約を破棄する。今度こそ自分が婚約者になれるかもしれない。これは最後のチャンスだと思いその手紙をクリフトンに渡した。

 クリフトンはマリオンを呼び出すと手紙を突きつけた。コンロン侯爵子息が出した証拠だから本物かどうかライラには分からない。でもクリフトンが筆跡鑑定を頼んでいたらしくマリオンを責め立てている。マリオンは否定したが頭に血が上ったクリフトンは騎士に命じて牢に入れてしまった。

 でも明日には冷静になって牢から出すはずだ。ライラはクリフトンと長い付き合いだが、彼がこれほど感情を動かすところを初めて見た。必死にマリオンの注意を引こうとしている。上手くいっているようには見えないが彼は本気でマリオンが好きなのだ。

 ライラは溜息をついて、そして諦めた。初恋は叶わないのだ。仕方がないわ。どうせ伯爵令嬢が王太子妃になんかなれない。そのための勉強もしてこなかったので今更なれと言われても現実的ではない。婚約者候補だったエレンがどれだけ大変な思いをしていたのか知っていたのだが、クリフトンのお嫁さんになりたいという夢が諦められなかった。

「でも、もういいわ。私に見合った人を探そう」

 数日後にマリオンが失踪したと聞かされた。後日の調査では騎士と駆け落ちしたと判明した。
 マリオンにそんな行動力があるとは思えなかったが牢に入れられ絶望し、何もかも放り出したくなったのかもしれない。コンロン侯爵子息の騎士との恋の話は嘘だと思っていたけれど本当だったらしい。クリフトンが落ち込んでいるかもしれないと心配したが彼は変わらず冷静に見えた。しばらくすると宰相の後ろ盾を持つ令嬢と婚約して結婚した。

 これ以降、ライラは正しく臣下としての立場で接した。もう大人になったので幼馴染だからと馴れ馴れしくすることはない。王妃様のところに遊びに行くのもやめた。そしてほどなく父親の見つけて来た子爵家嫡男と結婚した。子供に恵まれほどほどに幸せな生涯を送った。



「派手なような地味な人生だったわね……。もしかして前世だったりして?」

 でも今はルシンダという公爵令嬢で王太子殿下の婚約者だ。あのときの王子様のお嫁さんになりたいという夢がもうすぐ叶う。そういえばハリスンにはクリフトンの面影がある。子孫なのだから当然だが。
 ハリスンは優しい理想の王子様だ。最近はそっけないが結婚すればまた仲良く過ごせると信じている。

 それよりも社交の場でルシンダを侮る令嬢がいることに苛立つようになった。妃教育が進んでいないことを王妃様が洩らしてしまい馬鹿にされた。他にも嫌なことがあった。ルシンダはピンク色が大好きでドレスもピンク色が多い。みんな知っているはずなのに同じ色のドレスを着ている子を見つけた。あれはルシンダを見下して対抗しているんだ。取り巻きの女の子が彼女を責めた。ルシンダはそれに乗じてその子のドレスにジュースをかけた。するとその子は涙を浮かべ走って逃げていった。なんとか留飲を下げることが出来たが不愉快だ。

(泣くくらいなら私に対抗しなければいいのに)

 最近は何もかも上手くいかない。妃教育では怒られ続け、ハリスンは慰めてくれない。何だか嫌な物でも見るように自分を見る。

(悲しい。どうしてこんなことになってしまったの)

 ところがある夜会でハリスンがいつもの彼に戻っていた。優しくてルシンダを大事にしてくれた頃の彼だった。元の二人の戻れると心の底から喜び浮かれた。

「ルシンダ。君はもう成人だ。これを飲んでごらん」

 彼の手から受け取ったのは琥珀色の液体が入ったグラスだった。お酒だ。ハリスンに大人として認めてもらえたということだ。嬉しくてドキドキしながらまずは一口飲んだ。

「甘くて、美味しい!」

「それはよかった」

 そのまま残りを飲み干した。しばらくすると体が火照ってきた。全身が熱い。

「ルシンダ。少し顔が赤いな。休憩室で休んできた方がいいだろう」

「はい。では少し休んできます」

 侍女の手を借りて休憩室へ向かう。部屋に着くころには息が上がって来た。目が回りベッドで横になり目を閉じると眠ってしまった。

 ――夢を見た。

 ハリスンに抱かれている。今世では清らかな乙女だが前世の記憶では結婚していたので男女の交わりがどういうものかを知っている。それがとても気持ちいいということも。お腹の奥が疼く。もっと、もっと、もっと……。

「ハリスン様~もっと奥まで突いて。気持ちいいの。あああん。あ……あ……」

 彼の手は巧みでルシンダの官能を引き出しては高みに導く。背中を弓なりに反らしては腰を震わせる。ハリスンは激しく腰を打ち付けてくる。何度も何度も。これは何度目の絶頂だろうか。するとバンッ!! と大きな音がした。

「これはどういうことだ!!」

 誰かの怒声に目を開けると目の前には騎士服を着た知らない男がルシンダの両足を抱え剛直を突き入れていた。男はハリスンじゃない。

(どうして? 私はハリスン様と抱き合っていたはずなのに)

「誰? あ……これは何がおこっているの?」 

 肘をついて自分に体を見れば裸だった。体液でべとついている。男は体を離すと慌てて部屋を出て行った。ルシンダは一人ベッドの上に取り残され呆然とした。足の間からはねっとりとした液体が溢れている。純潔を失い中に出されている……。部屋の入り口でハリスンがこちらを睨んでいる。

 ルシンダは不貞を働いたとハリスンとの婚約を破棄された。そして戒律の厳しい修道院に行くことになった。冬になると凍死者が出るほどの厳しい寒さの土地だ。何不自由なく生きて来たのにそこでの生活に耐えられるだろうか。自分を愛してくれていたはずの家族はルシンダを恥さらしだと罵倒し顔も見たくないと追い出した。助けてくれる人はいない……。

「何がどうして、こんなことに……」

 質素な馬車の乗り心地は揺れが酷く最悪だ。ドレスではなく平民の服を着て酷く惨めだった。そして昨日までの幸せを思い返す。ルシンダは何度も考えた。何を間違えたのか、どうして自分は全てを失ってしまったのか。

(分からない……)

 ひとつだけ分かったのはハリスンから受け取って飲んだお酒に何かが入っていたこと。そしてハリスンがルシンダを陥れたこと。

「私はまた、王子様のお嫁様になれなかったわ……」

 彼はいつから自分を疎んでいたのだろう。馬車の窓から見える景色は田畑が広がりのどかな景色になっていく。人よりも放牧されている家畜を多く見かけた。自分はもう王都に戻ることはないのだと思った。




しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

【掌編集】今までお世話になりました旦那様もお元気で〜妻の残していった離婚受理証明書を握りしめイケメン公爵は涙と鼻水を垂らす

まほりろ
恋愛
新婚初夜に「君を愛してないし、これからも愛するつもりはない」と言ってしまった公爵。  彼は今まで、天才、美男子、完璧な貴公子、ポーカーフェイスが似合う氷の公爵などと言われもてはやされてきた。  しかし新婚初夜に暴言を吐いた女性が、初恋の人で、命の恩人で、伝説の聖女で、妖精の愛し子であったことを知り意気消沈している。  彼の手には元妻が置いていった「離婚受理証明書」が握られていた……。  他掌編七作品収録。 ※無断転載を禁止します。 ※朗読動画の無断配信も禁止します 「Copyright(C)2023-まほりろ/若松咲良」  某小説サイトに投稿した掌編八作品をこちらに転載しました。 【収録作品】 ①「今までお世話になりました旦那様もお元気で〜ポーカーフェイスの似合う天才貴公子と称された公爵は、妻の残していった離婚受理証明書を握りしめ涙と鼻水を垂らす」 ②「何をされてもやり返せない臆病な公爵令嬢は、王太子に竜の生贄にされ壊れる。能ある鷹と天才美少女は爪を隠す」 ③「運命的な出会いからの即日プロポーズ。婚約破棄された天才錬金術師は新しい恋に生きる!」 ④「4月1日10時30分喫茶店ルナ、婚約者は遅れてやってきた〜新聞は星座占いを見る為だけにある訳ではない」 ⑤「『お姉様はズルい!』が口癖の双子の弟が現世の婚約者! 前世では弟を立てる事を親に強要され馬鹿の振りをしていましたが、現世では奴とは他人なので天才として実力を充分に発揮したいと思います!」 ⑥「婚約破棄をしたいと彼は言った。契約書とおふだにご用心」 ⑦「伯爵家に半世紀仕えた老メイドは伯爵親子の罠にハマり無一文で追放される。老メイドを助けたのはポーカーフェイスの美女でした」 ⑧「お客様の中に褒め褒めの感想を書ける方はいらっしゃいませんか? 天才美文感想書きVS普通の少女がえんぴつで書いた感想!」

断る――――前にもそう言ったはずだ

鈴宮(すずみや)
恋愛
「寝室を分けませんか?」  結婚して三年。王太子エルネストと妃モニカの間にはまだ子供が居ない。  周囲からは『そろそろ側妃を』という声が上がっているものの、彼はモニカと寝室を分けることを拒んでいる。  けれど、エルネストはいつだって、モニカにだけ冷たかった。  他の人々に向けられる優しい言葉、笑顔が彼女に向けられることない。 (わたくし以外の女性が妃ならば、エルネスト様はもっと幸せだろうに……)  そんな時、侍女のコゼットが『エルネストから想いを寄せられている』ことをモニカに打ち明ける。  ようやく側妃を娶る気になったのか――――エルネストがコゼットと過ごせるよう、私室で休むことにしたモニカ。  そんな彼女の元に、護衛騎士であるヴィクトルがやってきて――――?

真実の愛は、誰のもの?

ふまさ
恋愛
「……悪いと思っているのなら、く、口付け、してください」  妹のコーリーばかり優先する婚約者のエディに、ミアは震える声で、思い切って願いを口に出してみた。顔を赤くし、目をぎゅっと閉じる。  だが、温かいそれがそっと触れたのは、ミアの額だった。  ミアがまぶたを開け、自分の額に触れた。しゅんと肩を落とし「……また、額」と、ぼやいた。エディはそんなミアの頭を撫でながら、柔やかに笑った。 「はじめての口付けは、もっと、ロマンチックなところでしたいんだ」 「……ロマンチック、ですか……?」 「そう。二人ともに、想い出に残るような」  それは、二人が婚約してから、六年が経とうとしていたときのことだった。

愛すべきマリア

志波 連
恋愛
幼い頃に婚約し、定期的な交流は続けていたものの、互いにこの結婚の意味をよく理解していたため、つかず離れずの穏やかな関係を築いていた。 学園を卒業し、第一王子妃教育も終えたマリアが留学から戻った兄と一緒に参加した夜会で、令嬢たちに囲まれた。 家柄も美貌も優秀さも全て揃っているマリアに嫉妬したレイラに指示された女たちは、彼女に嫌味の礫を投げつける。 早めに帰ろうという兄が呼んでいると知らせを受けたマリアが発見されたのは、王族の居住区に近い階段の下だった。 頭から血を流し、意識を失っている状態のマリアはすぐさま医務室に運ばれるが、意識が戻ることは無かった。 その日から十日、やっと目を覚ましたマリアは精神年齢が大幅に退行し、言葉遣いも仕草も全て三歳児と同レベルになっていたのだ。 体は16歳で心は3歳となってしまったマリアのためにと、兄が婚約の辞退を申し出た。 しかし、初めから結婚に重きを置いていなかった皇太子が「面倒だからこのまま結婚する」と言いだし、予定通りマリアは婚姻式に臨むことになった。 他サイトでも掲載しています。 表紙は写真ACより転載しました。

どうやら夫に疎まれているようなので、私はいなくなることにします

文野多咲
恋愛
秘めやかな空気が、寝台を囲う帳の内側に立ち込めていた。 夫であるゲルハルトがエレーヌを見下ろしている。 エレーヌの髪は乱れ、目はうるみ、体の奥は甘い熱で満ちている。エレーヌもまた、想いを込めて夫を見つめた。 「ゲルハルトさま、愛しています」 ゲルハルトはエレーヌをさも大切そうに撫でる。その手つきとは裏腹に、ぞっとするようなことを囁いてきた。 「エレーヌ、俺はあなたが憎い」 エレーヌは凍り付いた。

5年も苦しんだのだから、もうスッキリ幸せになってもいいですよね?

gacchi
恋愛
13歳の学園入学時から5年、第一王子と婚約しているミレーヌは王子妃教育に疲れていた。好きでもない王子のために苦労する意味ってあるんでしょうか。 そんなミレーヌに王子は新しい恋人を連れて 「婚約解消してくれる?優しいミレーヌなら許してくれるよね?」 もう私、こんな婚約者忘れてスッキリ幸せになってもいいですよね? 3/5 1章完結しました。おまけの後、2章になります。 4/4 完結しました。奨励賞受賞ありがとうございました。 1章が書籍になりました。

【完結】もう…我慢しなくても良いですよね?

アノマロカリス
ファンタジー
マーテルリア・フローレンス公爵令嬢は、幼い頃から自国の第一王子との婚約が決まっていて幼少の頃から厳しい教育を施されていた。 泣き言は許されず、笑みを浮かべる事も許されず、お茶会にすら参加させて貰えずに常に完璧な淑女を求められて教育をされて来た。 16歳の成人の義を過ぎてから王子との婚約発表の場で、事あろうことか王子は聖女に選ばれたという男爵令嬢を連れて来て私との婚約を破棄して、男爵令嬢と婚約する事を選んだ。 マーテルリアの幼少からの血の滲むような努力は、一瞬で崩壊してしまった。 あぁ、今迄の苦労は一体なんの為に… もう…我慢しなくても良いですよね? この物語は、「虐げられる生活を曽祖母の秘術でざまぁして差し上げますわ!」の続編です。 前作の登場人物達も多数登場する予定です。 マーテルリアのイラストを変更致しました。

【完結】ずっと、ずっとあなたを愛していました 〜後悔も、懺悔も今更いりません〜

高瀬船
恋愛
リスティアナ・メイブルムには二歳年上の婚約者が居る。 婚約者は、国の王太子で穏やかで優しく、婚約は王命ではあったが仲睦まじく関係を築けていた。 それなのに、突然ある日婚約者である王太子からは土下座をされ、婚約を解消して欲しいと願われる。 何故、そんな事に。 優しく微笑むその笑顔を向ける先は確かに自分に向けられていたのに。 婚約者として確かに大切にされていたのに何故こうなってしまったのか。 リスティアナの思いとは裏腹に、ある時期からリスティアナに悪い噂が立ち始める。 悪い噂が立つ事など何もしていないのにも関わらず、リスティアナは次第に学園で、夜会で、孤立していく。

処理中です...