上 下
108 / 123
4章

108話

しおりを挟む
その後、ブラックキャット傭兵団は全員アルカディア軍の兵站部隊に入ることになった。

報酬は傭兵稼業の時よりも少ないそうだが、福利厚生がしっかりしている事から満足しているようだ。

宿舎は無料で利用可能、怪我した際の治療費も無料。

更には、引退後の就職先も功績によって斡旋してくれる。

傭兵時代では考えられない程の手当てらしい。

彼らの任務は宿場町の建設の際に使われる材料の運搬であった。

宿場町が完成した際はそこを拠点にアルカディア本国や砦に人や物資を運搬する。

一方一郎はアルカディアの大工と話合いながら、外壁を作りから始まり、上下水の基礎工事を行った。

時折、森の中からモンスターの反応があったが、一郎達のいる建設予定地 に近づかなかった。

今回の依頼はモンスターの討伐ではなく建設である。

襲って来ないのであれば、こちらからモンスターを下手に刺激することも無いだろう。

基礎工事が終わると街道と宿場町を結ぶ道を作る。

基本的には宿場町で一泊してから向かうことを想定しているが、軍を移動する際に一々宿場町を通らない場合も考え、新たに道を作り宿場町に繋げた。

門は二つ、アルカディア方向と南の砦方向の続く道である。二つの入り口から続く道は町の中でも主導線でつながっている。
そして通路の脇には馬宿や宿泊施設の区画にした。

今回の報酬である、土地はこの地区に1つ頂く。ゆくゆくはアルビーに運用してもらうことにする。

宿泊街の奥は馬具の工房や商店を集中的に集めた通りを作る。

川に一番近い所は宿場町の住民の住居である。

馬の育成施設はまだ出来ていないが宿場町の発展具合を見て決めてもらう事にした。

そんなこんなで地道な宿場町の土台を地道に作り上げわずか1ヶ月で任務内容まで終わらせた。

外壁は人が歩ける幅を作り等間隔に見張りの櫓を作った。

外敵が攻めて来てもアルカディア本国からの援軍が来るまで防衛できるだろう。

後の施設の建築はアルカディアからきた建築のプロに任せる。

次は気球船の作成である。

宿場町のこともあり、錬金ギルドからの職人達任せていた為、進捗状況を確認していなかった。

アルカディアの新居予定地の中に建てられた、錬金工房に入ってみると凄まじい光景が目の前に広がる。

鉄製のドーム型の工房の中は熱気に包まれており、鬼気迫る勢いで研究をしている職人達がいた。

「これは一体…」

一郎に気がついた職員走り駆けつける。

「所長遂に気球船に取り付けるバーナーの試作品完成しました」

はっまだ気球船の説明して1ヶ月だぞ?どうしたらそんな短時間でできるんだ?

確かに工房の中心には試作品と思われる金属製のバーナーがある。

「もう出来たんですか?」

「はい。アルビーの商会が研究に全面協力していただいたお陰で何とか作り上げることができました」

なんかすでに徹夜を数日繰り返したような顔の男が目をギラギラしながら答えた。

なにこのブラック企業、うちの工房がこんな労働環境になっているとは思わなかった…

一郎が唖然としていると、後ろからその仕掛け人がやって来た。

「あら?一郎さん宿場町の依頼は終わったのですか?」

「えぇ…久しぶりに気球船の進捗状況を見に来たのですが何ですかこの状況?」

「妾が微力ながら援助したら職員の皆さんが張り切っちゃって進みが良いようですね。
さて、それでは皆さんこれから休憩を兼ねて妾の商会の職員と合同でランチにしましょうか?」

周りから一斉に歓声が上がる。技術者達のテンションが何故か異常に高かった。

頭を傾げた一郎だったがその後答えはすぐにわかった。

移動してみると、商会の女性達と豪華な食事が待ち受けていた。

女性社員は綺麗どころを集めに集めている。

中にはリバーウッドの高級酒場で人気トップの女性も混じっていた。

服装もキャバ嬢のような際どい格好で目のやり場に困る。

鼻の下をだらしなく伸ばした職員が正に羽を伸ばしていた。

中には自分が出来る男だとアピールする様に自分達の研究成果を発表していた。

女性社員は聞き上手でもあった、

そして豪華な料理をよく見るとちょいちょい体力回復ポーション入りのドレッシングやら
酒の代わりにスタミナポーションを呑ませていた。

これなら研究時の疲労は良い意味で吹っ飛ぶだろう。

「これぞ女の力です。
彼女達も将来の優秀な錬金術さん達と、お近づきになれるのでwin=winですわ」

乾いた笑いをあげるしか出来ない一郎であった。
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

蘇生魔法を授かった僕は戦闘不能の前衛(♀)を何度も復活させる

フルーツパフェ
大衆娯楽
 転移した異世界で唯一、蘇生魔法を授かった僕。  一緒にパーティーを組めば絶対に死ぬ(死んだままになる)ことがない。  そんな口コミがいつの間にか広まって、同じく異世界転移した同業者(多くは女子)から引っ張りだこに!  寛容な僕は彼女達の申し出に快諾するが条件が一つだけ。 ――実は僕、他の戦闘スキルは皆無なんです  そういうわけでパーティーメンバーが前衛に立って死ぬ気で僕を守ることになる。  大丈夫、一度死んでも蘇生魔法で復活させてあげるから。  相互利益はあるはずなのに、どこか鬼畜な匂いがするファンタジー、ここに開幕。      

スライムの恩返しで、劣等生が最強になりました

福澤賢二郎
ファンタジー
「スライムの恩返しで劣等生は最強になりました」は、劣等生の魔術師エリオットがスライムとの出会いをきっかけに最強の力を手に入れ、王女アリアを守るため数々の試練に立ち向かう壮大な冒険ファンタジー。友情や禁断の恋、そして大陸の未来を賭けた戦いが描かれ、成長と希望の物語が展開します。

45歳のおっさん、異世界召喚に巻き込まれる

よっしぃ
ファンタジー
2月26日から29日現在まで4日間、アルファポリスのファンタジー部門1位達成!感謝です! 小説家になろうでも10位獲得しました! そして、カクヨムでもランクイン中です! ●●●●●●●●●●●●●●●●●●●● スキルを強奪する為に異世界召喚を実行した欲望まみれの権力者から逃げるおっさん。 いつものように電車通勤をしていたわけだが、気が付けばまさかの異世界召喚に巻き込まれる。 欲望者から逃げ切って反撃をするか、隠れて地味に暮らすか・・・・ ●●●●●●●●●●●●●●● 小説家になろうで執筆中の作品です。 アルファポリス、、カクヨムでも公開中です。 現在見直し作業中です。 変換ミス、打ちミス等が多い作品です。申し訳ありません。

女神のお気に入り少女、異世界で奮闘する。(仮)

土岡太郎
ファンタジー
 自分の先祖の立派な生き方に憧れていた高校生の少女が、ある日子供助けて死んでしまう。 死んだ先で出会った別の世界の女神はなぜか彼女を気に入っていて、自分の世界で立派な女性として活躍ができるようにしてくれるという。ただし、女神は努力してこそ認められるという考え方なので最初から無双できるほどの能力を与えてくれなかった。少女は憧れの先祖のような立派な人になれるように異世界で愉快で頼れる仲間達と頑張る物語。 でも女神のお気に入りなので無双します。 *10/17  第一話から修正と改訂を初めています。よければ、読み直してみてください。 *R-15としていますが、読む人によってはそう感じるかもしないと思いそうしています。  あと少しパロディもあります。  小説家になろう様、カクヨム様、ノベルアップ+様でも投稿しています。 YouTubeで、ゆっくりを使った音読を始めました。 良ければ、視聴してみてください。 【ゆっくり音読自作小説】女神のお気に入り少女、異世界で奮闘する。(仮) https://youtu.be/cWCv2HSzbgU それに伴って、プロローグから修正をはじめました。 ツイッター始めました。 https://twitter.com/tero_oo

旦那様が多すぎて困っています!? 〜逆ハー異世界ラブコメ〜

ことりとりとん
恋愛
男女比8:1の逆ハーレム異世界に転移してしまった女子大生・大森泉 転移早々旦那さんが6人もできて、しかも魔力無限チートがあると教えられて!? のんびりまったり暮らしたいのにいつの間にか国を救うハメになりました…… イケメン山盛りの逆ハーです 前半はラブラブまったりの予定。後半で主人公が頑張ります 小説家になろう、カクヨムに転載しています

転生幼女の異世界冒険記〜自重?なにそれおいしいの?〜

MINAMI
ファンタジー
神の喧嘩に巻き込まれて死んでしまった お詫びということで沢山の チートをつけてもらってチートの塊になってしまう。 自重を知らない幼女は持ち前のハイスペックさで二度目の人生を謳歌する。

分析スキルで美少女たちの恥ずかしい秘密が見えちゃう異世界生活

SenY
ファンタジー
"分析"スキルを持って異世界に転生した主人公は、相手の力量を正確に見極めて勝てる相手にだけ確実に勝つスタイルで短期間に一財を為すことに成功する。 クエスト報酬で豪邸を手に入れたはいいものの一人で暮らすには広すぎると悩んでいた主人公。そんな彼が友人の勧めで奴隷市場を訪れ、記憶喪失の美少女奴隷ルナを購入したことから、物語は動き始める。 これまで危ない敵から逃げたり弱そうな敵をボコるのにばかり"分析"を活用していた主人公が、そのスキルを美少女の恥ずかしい秘密を覗くことにも使い始めるちょっとエッチなハーレム系ラブコメ。

元獣医の令嬢は婚約破棄されましたが、もふもふたちに大人気です!

園宮りおん
恋愛
ゲーム好きの獣医、綾川詩織は事故にあい異世界に転生した。彼女が転生したのは神獣に守護された王国ファリーン。公爵家の令嬢ルナとして転生した詩織は16歳の時、王太子のジェラルドに婚約破棄を言い渡される。いわれのない罪まで背負わされて国を追われるルナだったが、それを知った神獣セイランは激怒する。彼女はかつてセイランの子を治療し、命を救った恩人だったのだ。王家は騒然となり彼女を呼び戻そうと奔走するが、ルナは『獣の治癒者』の称号と前世でやり込んでいたゲームキャラのスキルの力で気ままに旅を続けていく。 ☆いつもお読み頂きましてありがとうございます。皆さんの応援のお蔭でこの作品の第二巻が発売されることになりました。発売は2月下旬になります。また、それに伴って該当部分が取り下げられています。ご容赦くださいませ。

処理中です...