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3章

96話

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ビアーズは二つ返事で答えた。

よっぽど今の状況が不満なのだろう。

「俺以外に妻と娘が居るんだがお前さん一人で大丈夫か?」

「私はこう見えても少し名の知れた傭兵でしてモハべ共和国では結構有名です」

一郎は銀色のタグを見せて話を進める。

「どうせここにいても絞られるだけ絞られて放り出されるのも時間の問題だ。あんたにかけてみるか」

ビアーズは店で働いていた妻と娘を呼び出し、あおぞら酒場の奥にある物置き小屋兼自宅に行動に移した。

小1時間で身支度を済ませて終わり、一郎は彼の住まいの中で一郎はブラッドスケルトンを10体ほど召喚する。

そして真っ赤なフルプレートを装備させ手にはバトルアックスとタワーシールドを装備させた。

ビアーズ一家にどこから彼らが出てきたのかと質問してきたが笑顔で「企業秘密です」と答え一同は街の出口に向かうのであった。

ワイルドランス内は騒然となっていた。

突然現れたフルプレートの兵士達は注目を集めている。

鎧の中はブラッドスケルトンなのだが一郎の幻影の杖の影響でその素顔は見ることができない。

因みに上空には鳥を飛ばし周囲警戒し万全の護衛体制である。

一郎達は堂々と大通りの道を進む。ビアーズ一家は落ち着かない様子だが離れなければ問題ないと伝えてある。

圧倒的な威圧感にちょっかいを出されず、一郎達は門の前までたどり着いた。

門番は赤い鎧の集団に驚きつつもその中にいるビアーズ一家を見て、上ずった声で叫ぶ。

「おい!ビアーズお前酒場はどうした?こんなことしてタダで済むと思うのか?」

「ウルセェこんな腐った国に1秒たりとも痛くねぇんだ。この方と一緒に出ていく」

顔を真っ赤した門番が詰め寄ってきたが近くのブラッドスケルトンが間に立ちタワーシールドで弾き飛ばす。

尻餅のついた門番の股の下にバトルアックスを落としブラッドスケルトンが門番の方を向くと、彼は股を濡らしながら後ずさりした。

その後誰も引き止めることなく門をくぐり街を離れようとしたのだが、ここで問題が起きた。

街の中で半ば軟禁状態だった人達もこれを機会についてきてしまったのだ。

その数ざっと100人。ほぼ着の身着のままでついてくる為この状態でモンスターに襲われたら甚大な被害が出る。

一郎はワイルドランスの状況が見える丘まで行くと遠隔指揮でエクストラのジョーンズに連絡を取る。

「おっ旦那どうしました?今日は盆地にいないみたいですけどなんかの用事ですかい?」

「用事というか相談ですかね……ワイルドランスの様子を見にきてたのですが、ひょんなことから100人程難民を抱えることになりました」

向こうから笑い声が聞こえている。

「旦那はやっぱり規格外ですな!ジャンヌとエレナさんに伝えておきます。結果わかり次第連絡入れさせていただきますわ」

「すいません。よろしくお願いします」

さて取り急ぎついてくる難民をなんとかしなくては・・・

ワイルドランスからは荷物を担いでやってくる難民が続々と増えてきた。その数は150人を超え始めた。

「兄ちゃんやどうする?助けてもらってる俺が言うのもなんだがなんとかならないか?」

「私一人ではどうにもなりません今移動予定の責任者に連絡しています。
どちらにしても彼らの立ち位置を明確にしておいたほうがいいですね」

一郎は避難してきた住民を集め話を始める。

大勢の前で話すのは苦手だが、このまま何も決めず移動するのはリスクが高い。

「私は傭兵の一郎と言います。私はここにいるビアーズさんの依頼で護衛をしています。とある拠点に移動する予定です。
あなた方とは契約していませんのでついてくるのは勝手ですが命の保証はしませんよ?」

難民達がざわめき始めた。

救世主でもきたと思ったのだろうか?

自分は英雄ではなくあくまで一介の傭兵である。リスクを冒してまで彼らを救う必要はない。

ここでジョーンズから連絡が入る。

「旦那!ジャンヌの嬢ちゃんができるだけ保護できる人々は盆地に連れてきてほしいとのことです。報酬は今出来てる米全てだとよ。足りなければ身体売ってでも払うってさどうするよ?」

一国の王の発言としては軽率だがその心意気は好感が持てる。

「わかりました。今受けている依頼のついでで受けましょう」

突然ブツブツと独り言をしゃべっているとしか見えない一郎を不安そうに見る人々、「えー皆さんとある国の女王が自分の身体を売ってでもあなた達を保護してくれとの依頼が出たのでなるべく保護しようと思います。
指示に従わない者は容赦無く見捨てますので従って下さいね」

一郎は初め周囲を見渡せる丘の上にみんなを移動させた。

鳥とネズミで丘の周囲を索敵したが、モンスターの反応が少なかった為、彼らの目の前で100体ほどスケルトンの兵を召喚し鉄条網で囲いを作った。

その間、ジョーンズ経由で盆地にいる傭兵の精鋭を集めて貰い待機してもらった。

その後防衛の陣地が貼り終わった後、保護対象者に排せつ場所の設営させジョーンズ一家中心でスープの炊き出しを始めた。

人数が人数なので大した者は提供できないが共同作業をしてもらった。

一つの事を行うとある種の一体感が生まれる。今後の関係も良くなるだろう。

炊き出しを渡す時、一郎は鑑定を片っぱしから行い、健康状態やスキルをチェックしていった。

疫病が流行っていたら一大事なのだが、幸い栄養失調や外傷が多かったが疫病持ちはいなかった。

続いて文字を書ける者を集めてとあるビラを作ってもらった。

最後に正念場なのだがスケルトンの兵を50体ブラッドスケルトンを5体鳥と骨のネズミを残し骨のドラゴンを召喚する。

おかげで一郎のMPギリギリであった。

時折目眩がするが、盆地の水と薬草で作ったMP自然回復ポーションを飲み更に滋養強壮を促すポーションを飲み何とか持ち直す。

そしてワイルドランスの上空を骨のドラゴンを上空で旋回させてから先ほど書いてもらったビラを撒きいた後、けが人を乗せて盆地へ飛び立つ。

「ふー後は応援が来るまでが正念場だな」望遠鏡でワイルドランスを除きながら一息つく一郎であった。
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